リボツナ2 | ナノ



28.




日もとっぷり暮れた年末の夜空は、ネオンと排気ガスのせいで星の光は届かない。
聞きたいことも聞き出せて、だいぶ満足したオレはあんないかがわしい場所から一刻も早く立ち去りたくてリボーンの背中を押すと辺りを気にしながら恐る恐る外へと足を踏み出した。

誰に見付かるのも嫌だけど、知り合いにだけは見られたくない。
そう思っている時に限って見られたくない人に見付かるものだ。
間が悪い。
そんな言葉では言い表せない巡り合わせもある。

………って、逃避している場合じゃない。

オレの目の前にはリボーンの背中。
その前には雲雀さん。

どうしてこんなところを歩いているんですか、雲雀さん!いつもは群れるのが嫌いだから車かタクシーなのに、今日に限って歩きだなんて!
しかも何もこんなところから出てきたところでばったりなんて、どんなシチュエーションだ。
泣きたい。つーかちょっと思考が逃避しかけている。

「今日は金髪ドジ男が君と話し合いだから、移動を歩きにしていたんだけど…ついでに不純異性交遊している子供がいたら噛み殺してやろうと思ってここに来たんだ……そうしたら、何で君と綱吉がここから出て来るの?」

「見て分からねぇのか?」

余裕の表情で雲雀さんをいなすリボーン。雲雀さんはと言えばうっすらと笑っているように見えるが、かなり機嫌が急降下しているのが分かる。

「…ボンゴレだか何だか知らないけど、綱吉に手を出したら噛み殺すよ。」

「てめぇに言われる筋合いじゃねぇな。」

「って、えええぇっ?!雲雀さんなんでリボーンがボンゴレだって知っているんですか??」

リボーンの機嫌も急降下して、2人の間には冷凍庫より冷たい空気が流れている。が、そんなこと知ったことじゃない。オレだってさっき知ったばかりだというのに、何で雲雀さんが?
その問いにふんと鼻を慣らして答えてくれる。

「ここの支配者は誰?」

「雲雀さんです!」

ええ、勿論!!

「そうだよ。この僕に知りたくても分からないことなんかない。綱吉をマネージャーにするなんてどんなコネだと思って調べたらすぐにボンゴレが出てきてね…あのボス猿の事務所じゃないか。あっちの方が大きいんだから君もあっちに行けばいい。」

「大きな世話だな。オレはツナと一緒にいるのが役目だ。」

「…気に喰わないとは思っていたけど、益々ムカついたよ。噛み殺す…!」

「うわわわっ!ストップ!ストップです、雲雀さん!」

ここで暴れられたら逆に目立って仕方がない。
ジャケットから取り出したトンファーを握る手に慌てて手を添えてぎゅうっと握る。すると今度は後ろから殺気が漏れて背中を突き刺す。

「ホント、お願いだからココで騒ぐのは止めてって!」

雲雀さんの手を離し、後ろのリボーンへと振り向くと顔を突き合わせて目を覗き込む。
近い距離でのお願いは高確率で聞き入れて貰えることを学習した。ザンザスさんにも有効なこれはリボーンにも有効だったようだ。
必死でお願いしていると後ろから殺気が3つと泣き声が…って3つ?

「うちの大事なツッ君がぁ〜!」

醒め醒め泣いているのは父さんで、射殺さんばかりの殺気は雲雀さんと。

「カスが。カッ消す!」

「てめー、手が早いとは聞いてたがどんだけ早いんだぁ!」

「うわぁ……」

もう騒ぐとか騒がないどころの問題じゃない。
送り出してくれたザンザスさんと、送ってきてくれたスクアーロさんまでいる。
誤解ですって言って信じて貰えるのかな。もうどうでもよくなってきた。

「とりあえず、事務所帰ろうか…」

それがきっと一番いい筈だ。







余裕綽々のリボーンがオレの肩を抱いたまま歩いて、その手を恨みがましく眺めながら泣いて付いてくる父さんと、サングラスだけではとても隠せそうにない人相に成り果てているザンザスさんに、元々目つきが悪いのに余計に悪くなってしまったスクアーロさんとを背中に貼り付けたまま父さんの事務所へと辿り着いた。
雲雀さんはと言えば、群れるのは嫌いなので早々に帰っていった。どうなったのか電話しろって言われたけど。

「…ツナ、父さんの目を見なさい。」

座った先のソファの上で、びくりと身体を震わせた。あんなところから出てきた場面を見られたバツの悪さにチラリと父さんの方を見るも、すぐに視線をテーブルへと戻す。
3人掛けのソファにはオレとリボーンが、向かいの1人掛けには父さんが座っている。
ザンザスさんは社長机からふんぞり返ってこちらを見ていて、スクアーロさんは机に腰掛けて腕を組んでいた。
何もしてないけど、気持ち的には以前と180度変わってしまったので一概に違うとも言い切れない。どうしようかと視線を彷徨わせていれば、父さんがテーブルから乗り出してオレの手を取ると泣き出した。

「ツナ!お前本当にリボーンなんかでいいのか?!脅されてるんじゃないのか?父さんに言ってご覧!」

「ちょ…脅すって何!?そんなことされてないよ!」

「……てめぇ…黙って聞いてりゃ、オレが脅してツナをどうこうするようなヤツに見えるってのか?あぁ?」

「見える!!」

喧々囂々、父さんとリボーンが言い合い始めた。
するとずっと黙っていたザンザスさんが重い口を開く。

「…色々聞いたか。そいつはジジイの手先だ、そいつを選ぶってことはウチを継ぐってこった。……いいのか?」

ザンザスさんの燃えるような赤い瞳がジッとこちらを見詰めている。
怒りや苛立ちもない静かなルビーのような目に捕らわれるが、負けずに見詰め返して言った。

「…うん。オレに務まるか分からないけど、もう少し父さんのところで勉強してからそっちに行くね。」

「そうか…」

視線を緩めてこちらを見るザンザスさんに、オレもほっとして息を吐いた。
言いたいことは言えた。誤解もされていないみたいだ…と、思っていたのに。

「安心しろ、てめぇが傷物になってもオレは構わない。」

「傷物って何?!!」

「…オレも気にしねぇ…そいつをオロしてやるぜぇ!」

「オロす?ちょっ…何か誤解してない?!」

その瞳に力を入れたザンザスさんと、組んでいた腕を解いたスクアーロさんにぎょっとする。
すると、横で父さんと険悪な雰囲気のままで睨み合っていたリボーンがフンと鼻を鳴らす。

「男の嫉妬はみっともねぇぞ。」

って、お前何でそう人の神経逆撫でするようなこと言うの!
しかもその自信満々の態度は頂けない。

「こら!目上の人にはきちんとしなさい。それが守れなきゃマネージャーには戻らないからな!」

「……ライバル相手に目上もクソもあるか。」

「ライバル…?」

コテンと小首を傾げて考えた。
ああ、ライバル!

「でも、お前らの方が後輩になるんだからやっぱりザンザスさんたちの方が目上だよ。」

「…違うぞ。」

何が?
キョロリとザンザスさんとスクアーロさんに視線をやると、首を横に振っていた。
全然分かってねぇ…って何のこと?



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