リボツナ2 | ナノ



26.




いい年をした男2人が手を繋いで歩いていく。
傍目にはどんな風に映るのだろうか。

兄弟…には見えないだろう。大体どっちが兄でどっちが弟に見えるのか、考えたくはないが何となく分かる。断じてオレが童顔だからじゃない。こいつが老け顔なだけだ。そうに決まってる。…じゃなくて、似てないからそれもないと信じたい。
それなら学校の先輩後輩?それもちょっとムリがあるか…。
だって握っている手の繋ぎ方が、あれだ。指と指を絡ませて握り合っているから。
恥ずかしいけど離したくなくてぎゅうっと強く握ると、握り合った手ごとリボーンの身体に引き寄せられた。

「うわっ…っとあぶね。何するんだよっ!」

いきなり引っ張られたせいでぐらついた身体を難なく受け止めると、引き寄せたオレの指の先にキスを落とした。
赤くなるオレの顔を見てしてやったりとニヤつくな!

「どうする…どこに行くんだ?」

耳元に寄せられた唇からは、腰に響くような低さとねっとり絡みつくような甘さを含んだ声が耳朶を打つ。
その声にぞくぞくして、慌てて耳を手で隠すと顔を押し退ける。

「止めろって!ったく、お前んちだと父さんが来そうだし…ザンザスさんちは…うん、ムリ。そうなると…ウチ来る?」

まだ話したいことがあるのだ。聞きたいことも。それには父さんもザンザスさんも居ない方がいい。
だけどホテルとか、そういう明らかに2人きりになるところは避けたい。
だというのに。

「何でだ?そこに丁度よくあるじゃねぇか。」

そこ、と視線で差した先にはやっぱり。
呆れながらも握られていない方の手をグーにして叩いてやった。

「バカ言ってんじゃないの!お前にはまだ早い。」

「いてーぞ、ツナ。照れ隠しにしても力が入り過ぎだ。それにオレにはまだ早いって何のことだ?」

「なっ!?何でもないよ!」

ここは天下の公道だ。エロい顔でニヤついてんじゃないっつーの!
叩かれても懲りないリボーンが、顔を寄せてくるので手で押しやる。

「ナニ想像してんだ…なぁ、ツナ?」

「うっさい!!」

そうやってまんまと言葉尻に乗せられて、近くのホテルへと連れて行かれた。







「ここって何か普通のとこと違わない?」

ホテルなんてあんまり泊まったことはないのだが、修学旅行とか家族旅行とかで使ったようなところとどことなく違う気がする。
入り口からしてかなり異様だった。分かりにくいところから入って空いている部屋番号を確認してからキーを受け取る。その際にお互いの顔が見えないようになっていたとか、妙な雰囲気があったところとか。

渡された部屋番号まで歩くとキーで開けて中を覗く。
………。

「やっぱりおかしいよ!2人で入ったのにベッドがひとつしかないなんて!」

後ろに居たリボーンに異常を訴えると、顔を後ろに向けてオレに見えないようにしていたが、肩が小刻みに震えているので笑っているのが丸分かりだった。

「ちょっ…何で笑うの?!」

「おま……マジか?」

「何が!」

クックッと押さえ切れない笑いを顔に乗せてこちらを振り向くリボーンを睨んだ。なのにちっとも気にした様子もないリボーンが、オレの肩を抱き寄せると肩に顎を乗っけて首裏からぼそりと呟いた。

「ラブホだぞ、知らなくて付いてきたのか?」

「は……?ラブ、ホ??」

言葉がぐるりと頭の中を一周して、そうしてやっと意味を理解した。
理解した途端に肩の上に乗っていた顔を引き剥がし、慌てて距離を置いた。

「オオオオオレは話に来ただけだからな?!中学生に手ぇ出すなんて…犯罪者にだけはなりたくないっ!」

「…そこまで嫌がられると逆に燃えるぞ。」

反対側の壁にべたりと張り付いていたのに、リボーンが手をワキワキしながら近付いてきて、近付いた分だけ横にずれて…を繰り返していたら、背中に硬い感触が。
ちらりと横を向くと壁で、その横にはでっかいベッドが鎮座していた。
……どうしてここに。

意識が一瞬そちらに向かったところを、腕を引き寄せられてベッドへ転がされた。

「ぎゃーーっ!!犯罪、嫌だぁ!」

「つべこべ言わずに大人しくしてろ…」

言った途端に口を塞がれた。
手は両手ともがっちりと上から押えられていて、逃げようとする身体も体重を掛けられているために身動ぎできない体勢だった。

キスで気持ちいいと思ったのは、こいつとして初めて知った。
硬くつぐむ唇に何度も何度も軽く口を寄せ、啄ばんで重ねてを繰り返してに強張りを解いていく。
少し緩みだした口許に少しづつ舌を差し込まれてざらりと前歯を舐め取られた。

うっすらと開けた視界の先はぼやけているけれど、重なり合う息が互いに荒くなっていくことだけは感じ取れる。前歯からもっと奥へと差し入れられた舌は縮こまったオレの舌を掬い取って絡まりあう。
強い力でベッドの上にはりつけにされていた筈の腕はいつの間にか解け、力なくシーツの上に投げ出されていた。
追い立てることなく絡め取られて、ドロドロに解けそうなほどの気持ちよさに逃げ出すことも忘れていると、口端から溢れた唾液を追って頬を舐め取られた。
ついでとばかりに首筋から耳裏まで辿る唇と吐息にみっともない声が漏れる。

「…ここには話しに来ただけで何にもしねぇつもりだったんだが……」

「っ…!だったらここからどけって…!!」

耳裏で囁く低い声にゾクゾクさせられながらも悪態を吐いていると、うなじと耳裏の間のあたりを吸い付かれた。ちくりとした痛みを伴ったそれは、けれども痛みとともに身の内に巣食う暗い焔を簡単に煽る。
このままどうにかされたくなった身体に力を込めると、しつこく何度も吸い付いている頭の髪を引っ張った。

「…痛ぇぞ、ツナ。」

「痛くしてんだよ…!」

裏返りそうな声を押し込めて、リボーンの頭を引き剥がすとしぶしぶといった様子で上から退いた。

気が付いたらシャツん中にまで手を突っ込まれていたなんて、手が早過ぎるだろ。
慌ててシャツを下げて、リボーンの身体の下から這い出ると少し距離を置いた。

「とりあえず、中学生の間はこういうことは禁止!」

「却下。」

「却下じゃない!オレは犯罪者になりたくないのっ!!」

「押し倒されるのはお前だから関係ねぇだろ。」

「なっ?!バッ…大ありだ!…とにかくダメって言ったらダメ!」

妙にでっかい枕を盾に及び腰での交渉だったけど、しぶしぶ頷かせることに成功した。
よし、ひとつクリア。

その時は話の流れとして喋っていただけだったのだが、知らず言質を取られていたことに気付いたのは翌年の4月に入ってからすぐのこと。



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