リボツナ2 | ナノ



3.




部活の勧誘からどうにか逃れた翌日。
リボーンと兄弟だということが、すでに色々な人に伝わってしまったらしい。
勧誘はおろか、話し掛けてきてくれる人も少なくなってしまった。
昨日までは普通に話していたクラスメイトが、今日は視線すら合わさない。
よほど怖いのか、係わり合いになりたくないのだろう。
変わらずにいてくれるのは山本と獄寺くんだけだ。

居心地の悪い教室から学食へと逃げれば、今朝もさんざんからかってくれたリボーンが幾人かの友人だろか?そんな感じの人たちと一緒に座っていた。
男だらけのこの学校で、何故かそこだけ清々しい。

「弁当忘れたのか?そんなとこ突っ立ってないで、こっちに来い。」

「…嫌だ。」

清々しいのも道理で、よく見れば、リボーンたちの両隣のテーブルだけ空いているのだ。
よほど怖がられているらしい。
そんなところに行けばオレまで注目さてしまう。…もう話しかけられた時点で遅いかもしれないけど。

リボーンとオレが睨み合っていると、リボーンの前の席にいた金髪の男が振り返った。
てっきり金髪に染めている不良かと思っていたのに、こちらを見る目が青かった。外人さんか。リボーンも美形だけど、この人もかっこいい。その青い目が驚きに見開くと、誰に言うでもなくぽろりと呟いた。

「…女?」

「誰がだよ!」

即座に突っ込みを入れる。すると見開いていた目を瞬かせてプクク…と笑い出した。

「悪かったぜ!てめーがリボーンの弟の綱吉か…プクク…噂通りだな、コラ。」

失礼なヤツだ。どんな噂だか知らないけど、きっと碌な噂じゃない。
ムカムカして金髪の男を睨んでいると、リボーンがそいつの足を蹴り上げた。

「っ、なにしやがる!」

憤る金髪にリボーンが一言。

「そいつはオレの弟だからな。弄っていいのはオレだけだ。」

言った途端、辺りがざわめく。その意味は分からないが、リボーンの言った言葉には即座に反応した。

「戸籍上は兄だけど、オレはお前のこと兄さんだなんて思ってないんだからな!」

すると我が意を得たりとニヤリと笑うリボーンは、平然と言い放った。

「オレも弟とは思ってねぇぞ。」

「なっ!?」

自分で言っといて何だが、そこまでどうでもいいと思われていたことにショックを受けた。
弟と思われていないと言われたことがこんなにきついとは思わなくて、しょんぼりと肩を落としていると、金髪男がオレの腕を引いて横に座らせてくれた。

「あんな底意地の悪いヤツ放っておいて、先にメシにしろ。時間があんまりねぇぞ。」

とポンポンと頭を手荒く叩かれて、目の前にはリボーンがいて、何だか全然昼飯を食べたいという気が削がれてしまったのだけれど、オレの横と目の前に獄寺くんと山本が座ってくれて、少し落ち着いてきた。
金髪男にありがと…と小さく呟いてモソモソと食べ始める。
すると金髪男が横から声をかけてきた。

「コロネロだ。綱吉…は言い難いからツナでいいか?」

「うん、じゃなかった…はい。」

よく見ればコロネロなる人はリボーンと同じ2年生の学年章をつけていた。先輩にはそれなりに敬語は使わねばならないだろう。

「オレはスカル。こっちはマーモンだ。」

「…よろしくお願いシマス。」

スカルなる人物がコロネロのオレと反対に座っていた人の紹介もしてくれた。でも、ぶっちゃけオレにはどうでもいい。リボーンの知り合いというだけで、無条件で係わり合いになりたくないのだから。
それでも頭だけは下げる。

「…義理の弟なら納得だね。いいよ、何かあったら僕に相談しても。タダで聞いてあげる。」

「はぁ…ありがとうございマス。」

何を納得されたんだか知らないが、相談する気なんか更々ない。でもマーモンさんの言葉を聞いた他の3人が一斉にマーモンさんの顔を凝視していたのは気になったけど。







そんなことがあった昼休みを終え、午後の授業も居眠り半分で消化した帰り道。獄寺くんと少し寄り道をして帰ってくれば、5時近くになってしまっていた。

何となく、ここが自分の家となった自覚に乏しい。母と自分だけが住んでいたアパートから、父も兄もいるこの一軒家へと越してきてそろそろ一ヶ月近くになったというのに。
家族が増えたことを素直に喜べないのは兄が兄だからか。昼の一件を思い出してまたもムカムカしていると、家の前に2人の女の人が佇んでいるのが見えた。

一人は目の覚めるような美人で、ボン・キュ・ボンと擬音が漏れてしまう程の素晴らしいプロポーションの持ち主。もう一人はお人形然とした可愛らしいタイプ。

2人ともオレやリボーンの通う高校の至近距離にある女子高の制服に身を包んでいた。
リボーンの取り巻きなのかとは思うんだけど、さて家に上げてしまってもいいのだろうか?
どうしようかと迷っていると、その美少女2人がこちらに気が付いた。

キリッとした美人さんがこちらを振り返り、ふんわりした可愛い子が小首を傾げて見詰めてくる。言葉も出ずに困っていると、美人さんが尋ねてきた。

「おい、お前この家に越して来たとかいうヤツか…?」

「う、はい。」

ひぃぃ!こんな美人に話し掛けられたの初めてだ。どう答えていいのか分からなくなってきた。早くリボーンが帰ってくればいいのに!
視線を合わせられずに下を向くと、美人さんの横の可愛い子が「ラルそんなに威嚇しちゃダメよ。」と諌めていた。

「はじめまして、リボーン君の…何て言えばいいかしら?友達、とは違うわね…『大事な人』のユニです。こっちはラル・ミルチ。お邪魔させて貰ってもいいかしら?」

「は、はい!どうぞ!」

ひえぇぇ!リボーンの大事な人だって!本人が言ってるだけだから確証はないけど、それもありかもと思わせるような美少女だ。顔も雰囲気も。
慌てて2人を家へ上げると、勝手知ったるなんとやらでお構いなくといってリボーンの部屋へと入っていってしまった。
オレはといえば、今の一件で魂が抜けたように居間の床に座り込んでいた。

ユニさんとか言ったっけ?あれっていわゆる将来を誓い合った仲なのだろうか。だって普通、自分から大事な人なんて言わないよな。ユニさんの可愛らしい顔を思い出すにつけ、リボーンとの出会いが浮かんできた。
何だよ、大事な人がいるのに女の子侍らせて…サイテーだ。

タラシで口が悪くて意地悪で…なのに本当に困っている時には助けてくれた。弟とは思って貰えなくても、兄だと思えなくても嫌いじゃない。
これがどんな気持ちなのかよく分からないことが嫌だ。。

モヤモヤした気分で頭をソファに凭れ掛けていると、玄関から数人の声が聞こえてきた。リボーンだろう。

仕方なく起き上がると、玄関で騒がしくしているリボーンたちに一言ユニさんたちが来ているよと声を掛けた。
するとそんなことは分かっていることなのか、リボーンが声を掛けることなく、昼間一緒にいた面々が勝手に上がっていった。

残ったのはリボーンとオレだけで、そのリボーンはといえばオレの顔を覗き込むと難しい顔をしている。

「…おい、顔色が悪いぞ?」

リボーンの手がそっとオレの額に触れる。白くて大きい手は思いの外暖かくて、身体が冷えていたことを教えてくれた。
優しいその手に大人しくしていると、上からリボーン?とユニさんの声が聞こえてきた。
ハッとしてその手をおもいきり叩き落としてしまう。
ヤバいとは思ってももう後の祭だ。心配してくれていただろうに、それでも今は触れて欲しくないと思った。

「オレは平気だから、上行けば?」

視線を合わせずに言うと、大きくため息を吐いてオレの額をデコピンすると上へと行ってしまった。


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