リボツナ2 | ナノ



2.




最低な再会から2週間が経った、入学式を控えた日曜日。
あれからあれよあれよという間に、母さんと家光さんの再婚話は進んでいき、今日、入籍と共に沢田家へ越してきた。
おめでたい話だ。そう、おめでたい筈なんだけど…。





き、気まずい!!
死ぬほど気まずいんですけど?!

足払いして転がしてやったリボーンとは、あれ以来口を利いていなかった。そんな暇もなく越してきちゃったんだけど、オレのことどう思っているんだろう。
何度か謝ろうと思って足を運んでいたのに、その度に肝心のリボーンが居なかったり、居ても友達が居たりで会うことができなかった。

それなのに、母さんと義父さんは浮かれて2人で役場に婚姻届を出しにいっちゃうし、ついでに何故か2人が居なくなった途端、こいつがオレの部屋に現れるしで、どうしていいんだかさっぱり分かんない。

新しい制服をハンガーに掛けているところを入ってきた義理の兄は、ちょっといいかの一言もなくベッドの上に腰掛けて居座っている。

オレといえば、蛇に睨まれた蛙よろしく、身動きが取れずにその足元に座る羽目になった。

長い足をこれ見よがしに組むと、その膝に肘を付いて顔をそこに乗せた。
モデルのように決まっているが、目が何だか怖い。
やっぱりあの足払いを謝らなきゃダメか…と口を開きかけたその時、リボーンが細ぇと呟いた。

「は?」

「身長、165もねぇだろ?体重はあって49kgくらいか?」

「ふぇ?」

「加えてその面…オレが悪いんじゃねぇ、紛らわしいてめぇが悪ぃ。」

「なっ…!?何が悪いって?!!」

謝ろうと思っていたことなどすっかり忘れていきり立つと、それを見てリボーンが愉快そうに笑い出した。バカにされたのだと益々憤ると、悪ぃ!とちっとも悪いと思っていない声で笑いながら謝ってきた。

「くくくっ…見た目に騙されるとおっかねぇんだったな。あの足払い、結構キたぞ?」

「う、あ…ごめん、なさい…」

「しかも、その制服…うちの高校だろ。なんでまた、そんな面で男子校なんざ来るんだか。」

どんな面なんだと言い返そうとして、ハタとある単語に気が付いた。

「へ?……ぇええ?!学校一緒!?」

あれだけ女の子を侍らせていたから、共学だとばかり思っていた。それが今度通うことになっている男子校?!それじゃ、あれだけの女の子って…

「そうだぞ。ここから一番近いとこを選んだだけだ。どこ行っても変わりねぇからな。」

「……」

羨ましい。オレは精一杯頑張ってそこだったのに。って、いうか普通それなら共学行くだろ。
顔に出てしまっていたのか、リボーンはオレの視線の先で肩を竦めると女は面倒だからな。なんて言っていた。男なら一度は言ってみたい台詞だ。二重に羨ましい。

「面倒掛けんなよ、弟さん。」

「分かってるよ!」

どうやら釘を刺しにきたらしかった。








入学式の翌日は何故か競うように山本と獄寺くんがうちまで迎えにきてくれた。
いつもは商店街で落ち合うのに…と考えて、そういえば今日から高校生なんだよ!と気が付いた。前の待ち合わせ場所じゃ方向が逆で、落ち合うにはうちの方向の方が便利だ。

まさか家まで迎えに来てくれるとは思ってなかったオレは、支度に大わらわだ。掛けてもあんまり意味のないドライヤーだとは分かっているけど、それでもやらないよりはマシだと寝癖を直していると、リボーンが洗面所に現れた。
うっ…と詰まって、すごすごと身体を横に避けてスペースを明け渡す。するとこちらも見ずに歯磨きを始めるので慌ててドライヤーをしまうと逃げ出そうと足を踏み出した。見ていないと思ったのは間違いだったのか、丁度扉に手を掛けた瞬間に声を掛けられる。

「…彼氏が2人も待ってんぞ?」

「んなもん、いねぇよ!」

鏡越しにニヤリと笑いながらからかわれ、つい過剰に反応してしまう。だってこいつ失礼だろ?オレにもだけど、山本や獄寺くんにも。とに、ゲイだの面が悪いだの彼氏だのと言いがかりばかりつけてくるのは、オレがそんなに気に喰わないんだろうか?
母さんや義父さんの前では普通にしているのはポーズなのか?

オレは精一杯睨んでいるのに、そんなことお構いなしに身支度を整えるとオレの横を通ってさっさと登校していったようだ。
玄関先から山本と獄寺くんの驚いた声が聞こえて、オレも慌てて出て行く。

「ツナ、今のが義理の兄ちゃんか?」

「そうなんですか?!」

玄関先で左右に離れて待っていてくれた山本と獄寺くんが、オレが出てきた途端我先にと詰め寄ってきた。その言葉にムッとしていたオレは益々ムカムカしてくる。
兄さんだなんて思ってない!

「戸籍上だとそうなるね。」

それでも違うとは言えないので、そんな風にはぐらかすと2人は眉を顰めて言い難そうに話を聞かせてくれた。

「あの人、リボーンさんだよな?…部活の先輩の話だと、すっげぇタラシらしいんだ。しかも綺麗系から可愛い子まで誰でもオッケーだって…」

「ふうん?」

「オレも、リボーンさんなら武勇伝を聞いたことがあります。とにかくここいらの不良の元締めとツーカーだとかで、裏じゃかなりの悪だとか…黒い噂が絶えなっス。」

「へー…」

遅刻しないように歩きながらステレオで聞かされる話は、どれも現実味に乏しいのに何故か納得できるような…そんな話だった。
あいつならありかな、と思わせる雰囲気がある。
ひとつ分かったのは、そんな義理の兄を望むと望まざると持つ羽目になったオレってかなり運が悪いってことだ。




初日は学校の説明やら1年間の行事予定をさらったりした後、部活動の勧誘がとにかくすごかった。山本はもう野球部に決まっていたからいいものの、獄寺くんもオレもあっという間に取り囲まれて息ができないくらいだ。
しかも運動部の部長や副部長自らマネージャーになってくれ!って、そんなマネージャー業って成り手がないのか、はたまたオレの隠されたマネージャーとしての手腕を買ってか…ってそんなもんあるか!

「君みたいな子がマネージャーをしてくれれば、士気が上がる!頼む!」

「いや、うちこそ欲しい。全国大会も狙っているんだ、マネージャーになってくれ!」

「って、なんで!?」

うちだ、いやうちだ。と手がわらわらとオレの制服やら手やら足やらに伸びてきた。
怖い。数の恐怖だ。
オレより体格のいい先輩たちばかりに取り囲まれて身動きが取れなくなっていると、後ろから声が掛かった。

「おい、うちの弟に下手な真似しやがったら…分かってんだろうな?」

リボーンの声だと思った途端にあちこち触っていた手がパッと離れる。
やっと息ができるスペースが空いて、恐怖から解き放たれた安心感から床にしゃがみこんだ。
すると、リボーンが先輩方の合間をすり抜けてオレの前までくると、ひょいっとオレを抱え上げて人ごみを掻き分けてその場から連れ出してくれた。

オレはと言えば、どうすればいいのかさえ分からない。
助けてくれたお礼か?それとも俵を担ぐように抱きかかえられているこのポーズに憤るべきか。
言葉もなくうううっ…と唸っていると、ぽいっと廊下の端に投げ捨てられた。
受身も取れずに腰を打って呻いていると、上からリボーンが呆れ半分、怒り半分で怒鳴られた。

「てめぇは…ここは男子校だっつっただろうが!ただでさえかわい…いや、軟弱な面してるんだからちったー気を付けろ!」

「…何を?」

さっぱり意味が分からない。
心配してくれているらしいリボーンには悪いんだけど、何を言いたいのか分からなかったのでそう呟く。
すると、チッと舌打ちして出来の悪い弟に見切りを付けたのか、オレの方を見ることなく立ち去っていった。


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