12.やっと番組も終盤に差し掛かって、そろそろザンザスさんたちの出番が見えてきた。 さすがと言うべきか、あんな強面でもザンザスさんは色々なアーティストに声を掛けられるも、うざったそうに頷くか視線をチラとくれるだけだ。代わりにスクアーロさんが間に入るのかと思っていたのに、スクアーロさんもそういった類は苦手なのか、ルッスーリアさんが取り成していた。 ベルさんは大人しく待つことができないのか寝てしまっていて、あれで大丈夫なのかと思わず心配になる。レヴィさんは相変わらずザンザスさんの傍から離れない。…あそこだけ異空間だ、なんて言っては悪いかな。だって、ザンザスさんといい、レヴィさんといい、強面過ぎる。職業間違えてないのかと訊ねたくなる雰囲気があるのだ。 退屈な歌が幾つか終わると、いよいよザンザスさんたちの出番となった。 彼らが立ち上がるだけで、低い雄叫びや甲高い悲鳴があちらこちらから聞こえた。 「すげー人気…」 リボーンたちは女の子が多かったが、ザンザスさんたちは男女半々だろうか。 そういうファン層もいいよな、ヤツらもそういうバンドに成長して欲しい…なんてすごいマネージャーらしいことを考えて、はっとした。 オレはあくまでアルバイト。継ぐにしても、あんな目立つヤツらの専属なんてもっての外だ。 ぶんぶん頭を振って視線を前に向ける。 ヴォーカルだというのに、しゃべりは得意でないザンザスさんの代わりにスクアーロさんが喋っていた。 意識をそちらに向けようとして、失敗する。 オレはあくまでアルバイトのマネージャーもどきだ。 今はリボーンに近いけど、その内別の人について貰って…と考えるとぎゅうっと胸が苦しくなった。 耳をつんざく歓声も遠くて、視線はステージへと吸い寄せられているのに意識はどこかにいったままだった。 少しざわついていた会場が、たった一音のピアノの音が零れた途端に静寂を取り戻す。 いつの間にか始まっていたザンザスさんたちの歌はバラードというのだろうか。 引き込まれていたという自覚もないまま静まりかえった会場を呑み込む音と声に気が付けば涙が流れていた。 乱暴なほどの歌い方なのに、何故か歌詞が胸に迫る。 あの見た目荒くれな人たちが、とびっくりするような繊細な曲とすべてを呑み込み攫っていく歌にただ圧倒された。 聴いていた間、色々と考えた気がした。 けれども曲が終わると同時に会場の端から端まで覆い尽くす悲鳴とも歓声ともなんとも形容しがたい声と熱気にあてられて、それに後頭部を強打されて忘れてしまった。 気付きたくなくて、胸の奥へとしまい込んだ。 . |