リボツナ2 | ナノ



9.




今日は珍しくリボーンの休みと休日が重なっていた。
日曜でオレも大学はなく、2週間ぶりくらいにゆっくりできる一日だ。


だからといって朝から過激な目覚ましがなかった訳ではない。
本人は起こす気はなかったとか言っているが、とてもそうは思えない。
なにせ目覚めたらスウェットは捲くられていて、手が脇腹を撫でていたのだから。
しかも撫でられていることに気付いたのではなく、肌寒さに目が覚めた始末。
…何でそんな目に合うまで目が覚めないのオレ!


慌ててリボーンの腕から抜けると、着替えを持って居間へと逃げ出した。
いくら寂しいからって男の身体を撫で回すアイツも、それに何とも思わず寝こけていたオレもどうかと思う。
とにかく手早く着替えると、朝というより昼に近くなっていたのでブランチにしようとマカロニを取り出す。

セロリににんじん、玉ねぎになす、ピーマン、じゃが芋、ベーコンと次々と細かく刻んでいく。
オリーブ油に叩いたにんにくを入れると香りを移し、刻んだそれらを炒めているとリボーンも身支度を終えてやってきた。


「何を作るんだ?」

「ミネストローネだけど…これ、何?」

「これって?」

「人の腰に巻き付いている腕のことだ!」


ジュージューと野菜を炒めているせいで、纏わりついた腕を外すこともできない。
トマト缶を取ろうと後ろを振り返ると、腰に巻きついた腕が背中に周り正面から抱き締められた。


「あのな、今は料理中なの。火を使ってるから危ないんだよ、離れろ!」

「気にするな。」

「気にするっつーの!」


言っても聞かないリボーンにぎゅうと抱かれて息が苦しくなってきた。


「ぐぇ…!」

「色気ねぇ声出すな。」


ちょっと緩めた腕から逃れ、コンロの傍でやっとおもいきり吸えた空気を吸い込むと荒い息を吐く。
この野郎、ちょっと気を許すとコレか。親愛の情っつーより危うく絞め殺されるところだった。
肩で息をつくオレに、またも近寄るリボーン。
じりじりと近寄り、じりじりと逃げることを繰り返していると。


ピンポン、ピンポン。


壁に追い込まれたオレが冷や汗を掻いているところで玄関からチャイムと声が聞こえた。
よくは聞こえないが、この独特の語尾は…。


「コロネロ?」

「チッ、邪魔しにきやがって。」


心底嫌そうに呟く。すると、無視するんだろうと思っていたのに玄関まで迎えに行った。
賑やかな声が聞こえてきたが、リボーンへの客だからと無視して料理を進めていると後ろから声が掛かる。


「沢田綱吉だな!」

「はっ…?」


女の子の声にも、フルネーム呼びにもびっくりして、慌てて振り返る。
すると、そこにはきりっとしたかっこいい女の子が。


「あ…ラル・ミルチ。」


オレの名前をフルネームで呼び捨ててくれたのはリボーンのバンドのメンバーの紅一点、ラル・ミルチ。唯一の女の子なのに、何故かメンバーとの浮いた噂がない…というより、メンバー中で一番男前だという噂だ。


オレをジロリと眺める顔はちょっと怖い。理由はコロネロとマーモンから聞いたのだが、肝心な部分を教えてくれなかったのでいま一つ分からないんだけど、バンドが休止しているのはオレのせいだとか言っていた。
それでオレを見にきたのかな。
多分中学生であろう彼女の鋭い視線に晒されてビクビクしていると、ラルの後ろからコロネロが顔を出した。


「ラル、ツナを威嚇するな。」

「フン、軟弱だな。」


くるりと踵を返して居間へと向かったようだ。
代わりにコロネロがキッチンに入ってきて、鍋を見つけて覗き込んできた。


「ミネストローネだけど、コロネロも食べる?」

「おお。」


返事をするが鍋の大きさにびっくりしているようだ。
オレ大食漢だからこれくらい作らないと食べた気がしないんだよね。
もう少しで出来上がるからと、欲しい人を呼んでくるように頼むと素直に頷く。
コロネロはリボーンより扱いやすい。見た目は大人といっても差し支えないくらい育っているけど、中身はまだまだ可愛いもんだ。
さて、見た目は美青年で中身はオヤジの同居人の分もよそっておこう。




結局、アルコバレーノ全員が欲しいとのことでキッチンでは椅子が足りないからと居間で思い思いの場所で食べることになった。
先ほど見たラル・ミルチの他に同じくバンド仲間のスカルも居て黙って食べている。マーモンはラグの上で食べているオレの背中に凭れ掛かって、コロネロは鍋を抱えていた。
…欠食児童?
リボーンはといえば、オレの前に椅子を持ってきてマーモンを睨めながら食べている。
その食べ方は頂けない。


「こら、リボーンもマーモンも食べるときくらい喧嘩しないの。」

「だったらマーモンを背中から剥がせ。」

「お前に言われる筋合いはないね、僕はツナヨシが気に入ったからここにいるんだ。ツナヨシいいでしょ?」

「や…うーん。いいけど。」


正直、いいのか悪いのか判断に迷うところだ。
なにせ昨日はちゅうされかけた。コロネロが止めてくれなかったらされちゃってた可能性が高い。
しかし、オレみたいなのを構って楽しいのかね?


「あ…そっか。マーモンはリボーンが好きなの?」

「「止めてくれ!」」


リボーンとマーモンから揃って抗議の声があがる。
心底嫌そうな顔の2人に、それじゃあなんでだろうと不思議に思っていれば今まで黙っていたスカルが口を出した。


「あんたが好きだからだろう。何で気付かない。」

「ふ〜ん?そうなの?」


マーモンに訊ねるとちょっと赤くなりながら首を縦に下ろし、リボーンを見るとニヤリと笑い掛けられた。
リボーンの笑顔がなんだか薄ら寒さに満ちていたが、好かれるのは嬉しいもんだ。
にへっと笑う。


「お兄ちゃんって呼んでもいいよ?」

「「誰が呼ぶか!!」」


2人に言えば即行で否定された。悲しい。
見れば、ミネストローネを抱えたコロネロがまたもプクク笑いでのた打ち回っていて、スカルは呆れ顔、ラルは処置なしとこめかみを揉んでいる。


「分かっただろうが、コラ。」


笑いながらもラルに話し掛けるコロネロの言葉の意味が分からない。何が分かったって?
コロネロとラルを見ていれば、ラルは小さくため息を吐くと豪快に食べ切ってお皿をオレに差し出した。


「おいしかった。もう一杯くれ。」

「あ、うん。」


思わず受け取ってよそうが、話が噛み合わない。いや、オレには休止の理由を教える気はないようだ。
ラルに渡すと、今まで厳しかった視線が何故か優しくなっていた。
本当に何で?


「よく見れば可愛いな。嫁に貰ってやるぜ。」

「いやいやいや!オレ男!ロリコンでもないから!」


何だこれ。どんな状況なの。
ラルが言えば、リボーンとマーモンから殺気が漏れてきた。
肩を掴まれて後ろに引かれると、体勢が不安定だったせいでラグに後頭部を打ち付ける…寸前で脇に手を差し入れられた。そのままひょいと椅子に座るリボーンの足の間に座らされる。


「ツナ。」

「ん?」


呼ばれたので何気なく上を向く。それを狙っていたのだろうリボーンがひょいっと顔を落として、気が付けば唇には柔らかい感触が…。

…………。

見せ付けるようにゆっくり離れていく唇に、フリーズした意識は戻らない。


えーと。
今、何された?ああ、いつものちゅうね。こいつ寝起きだけじゃ飽き足らず、とうとうみんなの前でもしやがった。
みんなの前で?

やっと異常事態に気付いた意識が、周囲のことを思いださせてくれた。いっそ忘れたままブラックアウトしたかったけど。


恐る恐る辺りを見回すと、オレとリボーン以外は等しく凍り付いていた。
ああ、見ちゃったか。
オレも変態の仲間入りかぁ…。


ちょっと黄昏ていると、一番最初にラルが起動した。


「なぜ無理矢理されたのに嫌がらないんだ!」

「え…あれ?そうだね、何でだろう?」


もう慣れたとかは言えない。爛れ過ぎている。コイツの存在自体が爛れていると言えなくもないけど。
するとマーモンもフリーズから解かれて言い募る。


「僕のときはしっかり嫌がったじゃない。」

「えーと、ごめん?」


おざなりに謝るとマーモンは余計にヘソを曲げてしまった。それを見てリボーンは嬉しそうに笑っている。
おいこら、お前のせいなんだからどうにかしやがれ。
上を向いて目で語ると、ニンマリとイイ笑顔になった。
あ、この笑顔やべぇ。
直感で危険を察知したが、遅かったようだ。


「このくらい毎朝してんだろ。」

「わー!わー!」


慌てて口を塞いだけど、ばっちり聞こえてしまったようだ。
ラルもマーモンもコロネロもスカルもなんとも言えない顔になっている。


「これのどこが初恋に逆上せている純情男だ?」


ラルの心底嫌そうな一言も不思議だったけど、それを返したマーモンも辟易している顔で言った。


「僕たちじゃ、アイツは計れないってことでしょ。」


オレもそう思うよ。
いや、本当に。


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