8.最近の撮影でよく使うスタジオだったので、ここの部屋が普段は使っていないことを知っていた。 使うのは大御所と言われる俳優や歌手のみで、それ以外のタレントは使わない。 2人を連れてその部屋に入ると、部屋に誰も居ないことを確認して椅子に座らせる。 こちらを見る4つの目は何を思っているのだろう? 「えーと…。」 聞きたいと思ったのに、どんな風に切り出せばいいのか分からなかった。 だってオレのせいでバンドが休止なんて言われて、迂闊にそんなことを聞いていいのかと躊躇したのだ。 けれどマーモンもコロネロもそんなことは気にしていないようで、ズバッと聞きにくいことを聞いてくる。 「リボーンのマネージャーを引き受けたんだよね?しかも同居してるって、君たち出来てるの?」 「ババババカ言うなぁ!」 「本当か?あの手の早い男が何もしないなんてありえねぇぞ、コラ。」 コロネロの言葉に思わず声が詰まる。 確かに手は早い。それを仲間に知られてるってどんだけ。 過剰なスキンシップなのか、悪戯されているのか判断に迷うところだったけど、やっぱりアレやソレは手を出されていたんだろうか。 タラリと冷や汗をかいて苦い顔をしていると、それを見て察したらしいマーモンが慰めてくれた。 「まぁいいんじゃない?あの馬鹿にしては珍しく本気みたいだし。遊びじゃないでしょ。」 「本気?遊び?」 何のこっちゃ。 ハテナを飛ばしていると、今度はコロネロが顔を赤くして慰めてくれる。 「男同士だが、お前なら違和感がないから…よかったな。」 「違和感がない?」 益々分からない。 困惑しきりで2人を眺めると、やっと気付いたらしいマーモンがフードの下から目を見開いてこちらを凝視しているのが分かった。 「まさか…。」 「マジかコラ…。」 「だから何が?」 憮然としていれば、マーモンは呆れてコロネロは笑い出した。 いきなり何なんだ。失礼な。 「悪ぃな、コラ……プクク。」 「あいつでも純情って言葉を知ってたんだね。びっくりだよ。」 「はぁ?ありえないだろ、その単語。」 「だって最後まではしてないんでしょ?」 「………最後?どの最後?」 オレがマーモンに聞けば、益々笑いの渦に巻き込まれたコロネロが腹を抱えて笑い出した。 この笑い袋みたいになっているヤツが、あのアルコバレーノのギターだと誰が分かるだろうか。つーか、いい加減にそのムカつく笑いを止めろ。 謎の単語とオレとの関係が分からないながらも、オレのことで笑われているのは分かるので、コロネロを睨んでいるとマーモンが椅子から立ち上がってオレの頭を撫で撫でしはじめた。 「うん、君悪くないね。ツナヨシって呼んでいい?」 「いいけど、オレの方が年上なんだからな。」 「オレも気に入ったぜ、コラ!」 「…もういいや。で、何でオレのせいでバンドが休止なの?」 笑いを止めないコロネロと、撫でるのをやめないマーモンに、何を言っても聞かないということが分かった。諦めるのは早い方だ。 それでも休止の理由くらいは教えて欲しかった。 「だから言ったでしょ。ツナヨシのせいだって。」 「何でオレのせいなんだよ!」 「その鈍さのせいじゃねーのか?」 「ああ、そうかもね。」 「って、意味分かんねー!」 「「オレ(僕)は分かったからいい。」」 「お前らだけで納得すんな!」 くそ、やっぱりこいつらリボーンの仲間なだけある。自己中で意味不明なところがそっくりだ。 ぷうと頬を膨らませていれば、頭を撫でていたマーモンの手が頬へと滑ってくる。 何をする気なんだろうとぼんやりしていると、フードを後ろにしたマーモンの顔が迫ってきた。 想像通りの繊細な美貌が近寄ってくる。 「ちょっ!何すんだ!」 慌てて手でマーモンの顔を押える。ギリギリで阻止したが、危うく口がくっ付くところだった。 いくら綺麗でも男とのちゅうは遠慮したい。 「何、僕じゃ不満なの?」 「男だからな。」 力いっぱい抵抗してるのに、顔が遠ざからない。力負けしそうだと思っていると、コロネロがマーモンを後ろから羽交い絞めにして引き剥がしてくれた。 さっきのプクク笑いは勘弁してやろう。 「したくなる気持ちも分かるが、嫌がるのを無理矢理は止めておけよコラ。」 「分かるな!」 リボーンといいマーモンといい、コロネロまでも。 もうヤだ。 . |