リボツナ2 | ナノ



2.




だまし討ちのようにマネージャーになることを承諾させられた翌日。
父さんが嬉々として契約書を片手に玄関で待ち構えていた。

「オレ、今から講義。」

「ちょっとだけだから、なっ?」

どこのキャッチセールスだ。
うちのか。
いやだ、いやだ。

本当に嫌で涙が出そうだ。
あれからリボーンの噂を、同じ事務所で雲雀さんのマネージャーをしているディーノさんに電話して聞いたのだ。
聞いてびっくり、なんとあんなでかい身体と何様な態度の癖に中学生だったのだ!

極秘中の極秘で、知っているのは父さんやディーノさんなどのほんの一握りのみだと言う。
年齢不詳で売り出しているんだとか言っていたが、不詳にしなければならない理由があった訳だ。

「父さん…。」

「どうした、ツナ。」

「オレがマネージャーになるのは、リボーンが中坊でそれを知られたくないから?」

「おっ!ディーノに聞いたのか…。まぁそれもあるが、本当にリボーンがお前じゃなきゃマネはいらないとか言い出してなぁ。どこから聞いたんだか、雲雀の付き人してる噂を聞いたらしくて、それなら自分のマネをさせろって煩くて煩くて…。」

頭痛がした。
それじゃ理由が分からないままだ。
オレとリボーンはどこかで会っているのか?

「でな、バンドの方はしばらく休んでその間は俳優をやらせてみようと思ってるんだ。」

「…受験じゃないの?」

「お前の通ってる大学の付属中学だから、受験はないんだろう?」

幼小中高大まで一環した教育方針の学校だから、受験はなかったけど。っていうか、アイツ同じ学校だったのかよ。
知らなかった。
大体、あんな有名なヤツが中等部にいるなら噂になっている筈だ。だけどそんな噂は聞いたことがない。

「聞いたことないけど…。」

「何でも変装してるとか言ってたな。」

ちゃちな変装でバレないもんなのか?
そういえば、昨日もあんな眼鏡と帽子だけでバレなかった。
見ればバレバレだと思って焦っていたのがバカみたいに。

「…まぁいいや。で、何時からマネージャーすればいいの?」

「さっそく明日からだ。」

「さっそく過ぎだろ!!?」

「期待してるからな、ツナ!」

「勝手に期待すんな!!」

使えるものは親でも使え、子供だったらなおさらか。











改めて紹介すると言われ、事務所で待っていた。
何でも雑誌のインタビューが終わったら、事務所に顔を出すことになっているらしい。

最近はバンド活動は休止していて、俳優業へ本腰を入れさせたいらしい事務所の意向とあまりやる気のない本人との間でちょっといざこざがあったとか。

雲雀さんのマネージャーであるディーノさんがリボーンのマネージャーも掛持ちさせられていたようで、オレがマネになると言うと気の毒そうではあるものの、ほっとした様子だった。

それはそうだろう。雲雀さん一人でも充分過酷なマネージメントだというのに、噂に名高いリボーンのマネまで…よくやっていたと思う。

社長室で父さんの秘書だというオレガノさんが煎れてくれた緑茶とみたらし団子を手に、待つこと1時間。
外が少し賑やかになって、何事かと思っていれば派手な音をさせてリボーンが入ってきた。
いかにも芸能人!というオーラを纏って、今日は黒のシャツに黒の革パンといういでたちが派手に映る。
きらきらしい。

「てめぇ、あんなくだらねぇインタビュー取ってくんなよ。…っと、何だツナか。」

さっそく呼び捨てかい。
クソガキが。

父さんに文句を言いにきたのかと思ったのに、オレに気付くと父さんを無視してこちらへやってきた。
これ見よがしに長い足がどかりとテーブルに乗った。

「まだ喰ってるんだから、足乗せんな!行儀悪いぞ!」

頭にきて、乗っていた足を落としてやった。
それに目を見張り、それからくつくつと笑い出す。

「何だよ?」

「いや…ツナぐらいだ、オレがリボーンだと分かっても態度を変えないヤツは。」

「はぁ?いちいちへいこらできるかよ。中坊は中坊らしくしてろ。」

ふん、と顔を横に向ける。

「……どっちがガキだって?」

向かいに座るリボーンの手がにゅっと顔に近付いてきた。
何をするのかと行方を見ていれば、その手は顎に触れ、親指がオレの唇をなぞった。
ずささー…と仰け反る。

「ななな何?!」

「みたらしのたれが付いてんぞ。」

親指に付いたたれをぺろりと舐め取る。なんだか卑猥だ。
ガキのくせに!

見てはいけないものを見てしまったような気分で視線を彷徨わせていると、父さんがこちらに近付いてきた。
そのままオレの隣に座る。

「似てねぇな…本当に親子かよ?」

「オレは母さん似なの!」

「そりゃ何よりだったな。」

「嫌味か!?」

どうせオレは身長が低いですよ。父さんは結構あるのにさ。
ぶつぶつ文句を言っているオレと、楽しげにニヤつくリボーンを交互に見詰める父さんの顔は複雑そうだ。

「リボーン、お前ツナと知り合いか?」

「…知り合いじゃねぇ。」

「昨日が初対面だよな。こんな嫌味なガキ、一度見たら覚えてるって。」

オレがそう言うと、リボーンは眉間に皺を寄せた。何か気に障ったらしい。
何にだ。

「で、何時からツナがマネージャーになるんだ?」

「明日からだ。さっそくだが、明日は新しく始まるドラマの顔合わせがある。…ツナ、これがリボーンの予定だ。これに従ってマネージメントをしてやってくれ。分からないことはオレかディーノ、他のマネージャーでもいいから聞いてくれ。」

「分かったよ。」

手渡された数枚の紙には、びっしりと予定が詰まっていた。
…想像以上に売れっ子だな。こりゃあ大変なヤツのマネージャーになっちゃったんじゃ…と思っても後の祭りだった。

「ツナ、明日からよろしくだぞ。」

ウインクされても、オレも男だから嬉しくなんかないんだけど。
これから上手くやっていけるのかな…オレ。


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