リボツナ2 | ナノ



8.




あれからずっと考えて色々な事柄と示し合わせてみたけれど、それでもやっぱり意味は分からなかった。
ビアンキからの電話もあの一度きりで、それ以降はなんの連絡も寄越さない。

リボーンがどうかしているんじゃないのかと一度だけリボーンに繋がるラインに電話を掛けてみたが、やはり毎回ラインを変えているという話は本当で繋がることはなかった。

困っていたり、仕事を頼みたいと思っているとフラリとどこからともなく現れて、そして仕事が終わればまた同じくふらっと消えてしまう。
どこにいるのかさえ掴めないリボーンのためにいつでも自室に通る権限を与えているのは、ほんのわずかでも繋がりを持ちたい気持ちが働いているせいだろう。

隼人などはいくら家庭教師だからとてもうそろそろケジメをつけられては…と事ある毎に注進してくるのだが、それでもオレは首を縦には振れなかった。
リボーンに変装して誰かが侵入したとしてもオレには違いが分かる。そしてリボーンではない誰かにオメオメと負けるような鍛えられ方はしていない。
絶対はないのだと訴えられても、オレには絶対の自信があった。

ぜったいにリボーンと他の誰かを間違えることだけはない。
それは代わりがいないということの裏返しでもあり、我ながら危ういと言わざるを得ないがそれでもそこだけは誰にも譲ることが出来なかった。







1ヵ月という日々は往々にして長いものだ。
2月は28日までしかなかったとはいえ4週間も過ぎればその分日々の時間は流れていき、仕事や仕事や仕事に忙殺されて気が付けば3月14日はもう今日となっていた。

いつどこに行くのかとも教えられてはいないというのに、リボーンと2人きりで居られる時間が持てるのかもしれないと思うと心臓は煩いくらい音を立てては治まらない。
いつもの気まぐれで身体が鈍っていないかと修業をさせられるだけかもしれない。または誰かに引き合わされるのかも。
それでもそれはオレのことを気に掛けてくれているという証でもある。

告げることのできなかった想いでも、消すことができないのならばしばらくは抱えていてもいいだろう。
今はそんな小さな喜びを胸にしまって少しずつ前へ進んでいこうと思っていた。

夜明け前の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで開き直りにも似た諦めを唱えながら、久しぶりの休日をリボーンと共に過ごせることに思いを馳せて束の間の眠りについた…












瞼を照らす日の光の眩しさに閉じていることが出来なくなって、けれど普段の寝不足のせいですぐには開けることも出来ずに少しずつ視界を広げていった。
何時だろうと首を巡らせようとして間近に迫った顔があることに気が付いてギクリと身体が強張った。

「なっ?!どうしてリボーンが…」

パジャマの襟を開いた状態でオレを見下ろすリボーンは酷く蠱惑的な微笑を浮かべていた。
また夢なのかともう一度瞼を閉じかけて、妙に寒いと上掛けを探して手を彷徨わせてみればやはりどうあっても何かが自分の上に乗っていることだけは確かなのだと理解できた。

今日はどんな趣向で何をするつもりなのかと、しぶしぶ瞼を開けて見上げれば顔が見えない。代わりに視界の端が黒く覆われて喉元から鎖骨にかけてチリっとした焼けるような痛みを覚えた。

「いっ!」

刺されているというような感触と違い、なにか暖かいものが首の皮膚の上を滑っていっては気まぐれに止まると痛みを押し付けられる。
ちゅっ…という小さい音と生暖かいそれには覚えがあって、けれどそんなことをリボーンがオレにする筈もないことは分かっているので混乱した。

寝ている間にパジャマのボタンは外されていたらしく大きな手が腹から胸の肌を確かめるようにゆっくりと動いていく。
筋肉の増減を確かめるにしてはいらぬ場所まで撫で上げていく手に息が上がりそうになって手で口を押さえると、胸の先を指でつままれて喉の奥から声が漏れた。

「っ…!」

とうとうこんなリアルな夢までみるほどになってしまったのかと瞼をぎゅっと瞑って堪えていると、首筋から顔を上げたリボーンが大きなため息を鼻の頭に吹きかけた。

「…いくらオレでもここまでされりゃあ抵抗ぐらいするかと思えば……どこまで人を信頼してやがるんだ、ダメツナが。」

「あ、れ?」

夢でもなければ幻術でもないらしい。
押さえつけられていた身体の自由が解けてやっと起き上がることができた。
辺りを見回せばすでに朝という時間ではないらしいことが分かる。

リボーンの手に弄られた先は赤く擦れてしこっていて、下肢には熱が溜ってしっかり反応していたことを示している。
慌てて前を掻き合せてベッドの上から抜け出そうと足を床につくところで、突然腕を後ろに引かれて体勢を崩したところを上から口を塞がれた。

夢だと思っていたら現実で、だけどこれも現実だとは到底思えなかった。
下唇を舐め上げられてビクっと揺れた身体の動きでやっとこれが本当のことだと分かった。分かったがどうしてこんなことをされているのかは分からない。
逃げ出すことが正解なのか、このまま委ねてしまっても許されるのかさえ判断がつかない。

見開いたままの視界の先で見覚えのある黒い瞳がギラリと光る。
ひょっとするとこれはいつもの悪ふざけで、拒絶したらいつものリボーンに戻るのかもしれない。
もしくは守護者たちどころか情けないことに様々の男から言い寄られているオレへの逃げ出し方の修業のつもりなのだろうか。

だとしたら逃げるフリだけでもしなければと思うのに歯列を割って進入を果たした舌の動きに腕を動かすことも放棄したくなった。
目を瞑ることさえ勿体無くて、なのに舌と舌とを擦り合わせるだけで視界が霞んでくる。

リボーンのジャケットに手を伸ばししがみついて唇を押し付けると、ぴったりと隙間なく重なる。息継ぎさえ忘れたままリボーンを堪能していると片肘をベッドについたままだったせいではだけていたパジャマの上着がするりと肩から落ちた。

唇を離すと息継ぎを忘れたせいで溺れた直後のように荒い息を繰り返す。その隙に腰を引き寄せていた手がパジャマのズボンの脇から下へと滑り落ちてきた。

「リボー…ン?」

ぼんやりとしながらも動きを止めない手にどうすればいいのかと声を掛ける。だがそれも形だけの話だ。
だから小さな声での疑問系を乗せただけで止めて欲しい訳ではない。
ジャケットを掴んだままの手は正直な気持ちを表していた。

逃げられないようにと体重をかけられ、背中をベッドに押し付けられる。唇から耳朶へと移った息遣いに身体中の血液がそこに集まってしまったようにドクドクと脈を打っている。
オレと同じ髪と瞳の色の愛人とはどうなったのかなんて問わない。うまくいったにしろ、うまくいかなかったにしろオレがそれを知っていることをリボーンは知らないのだから。

あの時出会った女がオレだったなんて知れたら2度と元には戻れなくなる。
ただの師弟であればまだ繋がりを保っていられる。耳朶を弄る舌と下着の上から腰骨をなぞる手に声を上げそうになって慌てて唇を噛み締めた。

「声はあげねぇって訳か…?」

面白くないとでも言いたげな声音で囁かれ、吹きかけられた息のせいでジンジンと腰に覚えのある疼きが湧き上がる。
腰から前へと滑る手に身体をずらすことで逃げを打とうとしたが、強引に割り込まれて中心を掴まれた。

「ひ…っ、うんン!」

寝起きだからというにははっきりと形を変えているそれを握られて思わず声が零れた。それに気をよくしたのか掴み上げたそれを緩く扱きあげられる。耳朶から耳裏へと辿る唇が手の動きに合わせて首筋を辿って胸へと落ちていくと、先ほど指で弄られた胸の先を咥えられて吸い付かれた。

ちゅっぱちゅっぱとわざと音を立てて胸を弄られたせいで我慢しきれず中心から先走りが溢れ出していく。
羞恥に苛まれ逃げを打つ腰を引き寄せられるとぬめった先から卑猥な水音が響いてきた。

「やっ…!」

どうして突然こんなことをするのかとか、オレの痴態をリボーンに見られていることだとかが胸の中で渦巻いて怖くなって逃げ出したくなってきた。
最後までしたらきっと元には戻れなくなるのはあの女がオレだとバレた時と同じだ。
必死に手で頭を押し返そうともがくと起立の先をぎゅっと強く握られた。

「今さら逃げようったって遅ぇぞ、ツナ。」

「いっ!」

ヘナヘナと力が抜けて痛みに全身を強張らせていると胸にあった黒い髪がもっと下へと下っていった。
握っているそこへと吐息が掛かり、見られている恥ずかしさに手で覆い隠そうとするもそれより早く暖かい口腔へと吸い込まれていった。

「ヒッ!んんん…ン!」

中途半端に脱がされたせいで思うように動かない足の間に顔を埋めるリボーンの黒い髪を見詰めながら喘ぎ声をあげる。
吸い付かれ下生えの奥にあるそれを手でやわやわと握られてガクガクと腰が震えはじめた。

「いやぁ…あ!離してっ!離し…」

強烈な衝動に飲み込まれそうで涙ながらに口を離してと哀願するも聞き届けられることはなく白濁を吐き出してしまった。
ビクビクと跳ねる腰を押さえ付けられて最後まで吸い取られると涙腺が壊れてしまったかのように涙が噴出してきた。

お終いだと叫ぶ心中を表すかのように止め処なく流れる涙に情けなくも嗚咽が混じる。
ただの悪戯ならばよかったのに男にされて喜ぶような生徒ではきっと呆れているに違いない。
泣いている様を見られたくなくて手の甲で瞼を覆うと身体の上から重みが遠退いていった。

どうしてこんなことになったのか、それともオレがリボーンを好きだということがバレて本当かどうかを確かめるためにしたのか。
支離滅裂だと思いながらもしゃくりあげているオレの手を取り上げた先には、酷く暗い瞳をしたリボーンがくいっと口端だけをあげてオレを覗き込んでいた。

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