7.傷口が開いてしまうことが怖くて、暴れることも出来ずに浴室からベッドへと担がれてきたオレは、そのままの勢いでベッドへと放り投げられた。 病院のベッドにしては大きくしっかりとした作りだが、さすがにオレの体重を受け止めるとギッと軋んだ。 手をついて起き上がろうとしたところでベッドに肩を押し戻されて身体が竦む。 「リボーンさん…っ!」 素肌の重なる感触に悲鳴をあげると、唇を唇で塞がれて喉の奥で唸り声をあげる。 薄く開いていた歯列の奥へと舌が進入し、それから逃げようと首を振るといきなり膝裏を抱えられて割り広げられた。 みっともない格好を強要されて抗議の声をあげようとしても、それすら遮られた上に口を大きく開けたせいで口腔の奥まで蹂躙される。 舌を舌で絡め取る濡れた音が静かな病室に響いて耳から犯されていくようだった。 「んふ…っ!」 抱え上げられた膝を肩に担がれてそのまま体重を掛けらたせいで身動きが取れなくなった後ろに手が伸びて、指であらぬ場所を撫でられた。 そこを触られるとは思ってもいなかったオレは身体が強張る。それに気付いているだろうリボーンさんはけれど知らん振りのままでそこを弄りはじめた。 強引に捻じ込まれそうになって痛みに身体が引き攣ると、枕元に置いてあった傷薬を取りそれを奥へと塗りだした。 襞に沿うように丁寧に塗りこめられて、痛みは消えたが異物感は消えない。 せり上がる吐き気に嗚咽を漏らすと、やっと口付けを外したリボーンさんの唇は首筋からもっと下へとくだっていった。 抵抗する気もなくなったオレはされるがままで大人しくしていた。 乏しい知識ながらも奥を弄られる意味だけは知っていて、ならば好きにすればいいと思った。 ただのそっくりさんなだけのオレならば一度してみれば違うことに気付く筈だ。 それともヤれれば誰でもいいのかもしれないが、それでもそこまでの手間を掛けるほどイイ訳じゃないだろう。 男同士のこんな行為ははじてのオレだから、きっとものすごく挿れるまでに手間も時間も掛かる筈だ。 指一本ですら思うように入ってはいかないというのにあんなものが入るものか。 タオルで拭く間もなくこうなってしまったためにリボーンさんの髪から額、頬を伝ってオレの胸に雫が落ちる。濡れていた身体はベッドのシーツに吸い取られほとんど乾いていた。 その雫が肌を辿る度にぞくりと身体が戦慄いて、それを認めたくないオレはぎゅっと硬く目を閉じる。 唇で肌の上を辿られる度に熱を帯びていく身体を恨めしく思いながら、それでも声はあげまいと腹に力を入れて堪えた。 「声を上げた方が楽んなるぞ。」 それだけ言うと奥を弄っていた指を躊躇いなく増やしていく。別の動きをする2本の指に悲鳴をあげそうになって両手で口を塞いだ。 卑猥な音を立てる下肢をぬるりと擦られて膝が揺れる。 奥を押し広げる指にはっ!と小さく息を吐き出すと、肌の上を悪戯に辿っていた唇がふっと胸の先に息を吹きかけた。 「っ…!」 何もされていないというのに尖って存在を主張していたそこを触れんばかりに近付くも決して触れはしない。 もどかしさに口を塞ぎながらも目を開けて覘くと、ばっちり視線が合った先でリボーンさんはわざと見せ付けるように舌で小さい粒を舐め上げた。 唾液を擦り付けるように舐め取られ、窄まりで食んでいた指をぎゅうと締め付ける。視線も逸らせずに見詰めるその先でぷっくりと赤く尖る粒を咥えたその顔は雄の本能に満ち溢れている。 本当にオレでいいのかとぐらついたところを、唇で扱かれていた先に噛みつかれて息を飲む。そんなオレを直に感じて分かっていたリボーンさんは噛んでいた口を少し離してクツクツ笑いはじめた。 「悪いもんでもないだろう?ジョットとヤれるんならオレともしてみろ。」 「ってない!」 正真正銘、男とは初めてだ。 男同士のセックスなんてリボーンさん以外とは考えたこともない。 ジョットさんとのあの一件をまだ誤解したままなのだと知って手でリボーンさんの顔を押し退けようともがくと、胸の上から重みが退いて突然中心を掴み上げられた。 「慣れてねぇならこうはならねぇだろ。」 そう言って眼前に晒された自身は一度吐き出しているにもかかわらず、触られてもいないのに期待に膨らんで先走りを零していた。 理性を裏切った身体は浅ましくもしっかりと反応し、あまつさえ握られているだけで止め処なく体液を垂れ流していく。 違うのだと首を振って視線を逸らそうとしても、顎を掴まれてまたそれを突きつけられる。 「違う…、違うっ!」 何があってもこれだけは知られたくなくて、うわ言のように言葉を繰り返す。 弱いと嗤われてもいい。意気地なしだと罵られても構わない。 だけどこの気持ちだけは、自分の身体の真ん中にある想いだけは誰かに汚されたくはなかった。 諦めなければならないことなど最初から分かっていた。 だからジョットさんという存在が現れて、それが自分に似ていると突きつけられた時でも素直に諦められた。邪魔するつもりもなかったのは最初から想いを告げることを諦めていたからだ。 恋人になりたいと思わなかったとは言わない。だけど自信のないオレはリボーンさんの隣にいることすら想像がつかなかった。 ジョットさんとリボーンさんが本当に恋人同士なのかなんて本当はどうでもいい。ただリボーンさんを諦めたかったに過ぎないのだから。 肩で息をつきながら視線を合わすことも出来ずに俯いていると、顎を持ち上げていた手がするっと離れて代わりに唇を塞がれた。ぴったりと重なり合って息すらままならない。 逃げる舌を絡め取られて飲み込めなかった唾液が喉の奥で噎せた。 酸素を求めて開いた口腔を思うさま蹂躙した舌を押し返そうとするも、まったく敵わずにただ上から伸し掛かる肩に縋るように手をつくだけだ。 情熱的なキスに思わず錯覚を起こしそうになる。 本当にオレのことが好きなのだと言われているようで、そんな勘違いをする自分は滑稽すぎる。 ただの身代わりならば、身代わりらしく扱って欲しい。 酷い男だと思った。 「あなたは、最低だ…!」 「あぁ、知ってる。」 やっと離れた唇は膿んだようにジクジクと痛む。熱を持ったように痛む唇は怒りに震えながら怨嗟の言葉を吐き出す。 「ひどい、ひどいよ!オレの気持ちなんてどうでもいいって言うのかよ!」 あばかれたくないと軋む心が怒りを生んで、言葉の刃を突きつける。けれどもリボーンさんは何を言われても黙ってオレの顔を見詰めていた。 . |