リボツナ2 | ナノ



19.




勢い余って歯をぶつけてしまったけれど、はじめて自分の意思でした。
してしまってから我に返って飛び退くと、されたリボーンは切れ長の目を大きく見開いたまま呆然とこちらを見ている。
何か言わなきゃと思っても上手く言葉にならない。
リボーンも混乱しているだろうけど、オレだって負けず劣らず混乱していた。

だってリボーンはユニさんのこと好きなんだとばかり思っていたら、実はオレのことが好きで。オレがガンマさんに横恋慕してるんだと勘違いしたリボーンに襲われかけて…眠さに勝てなかったオレは気が付けば一晩経っていたなんて間抜け過ぎるだろうか。
朝起きれば目の前にはリボーンが居て、逃げ出そうとしたのにとっ掴まって好きかと聞かれて思わずキスしてしまった…。

リボーンにされたキスと比べるまでもないほどぎこちないけれど、それでも問いへの答えにはなっただろうか。
好きかと問われて簡単に返せるほどの軽い気持ちじゃない。やっぱりどこかで義理とはいえ兄弟だからこんなのよくないと咎める気持ちもある。だから言いたくとも言えない気持ちをのせたつもりだ。

けれどあまりに繁々と見詰めるリボーンの視線が痛くて、後ろ手に握ったドアノブを回して廊下に逃げ出した。ドタドタと音を立てて駆けていくと階下から母さんがそろそろ支度しないと遅刻するわよ〜と呑気に声を掛けてくる。

それをどこか後ろ暗い気分で聞きながら、隣の自室に飛び込むとベッドの上にダイブした。
やっちゃった!バレちゃったよ!!
枕で頭を隠しても布団の上で悶えても、何をしても今更遅い。

義父さんや母さんのためにも、ユニさんのためにも、ただの兄弟で居るのが一番だと思ったこともある。
どの道男同士だから叶うわけもないと諦めてもいた。
それが実は一方通行じゃないと知って、何も考えずに行動してしまったけど本当にいいんだろうか。

リボーンだってまさかああ返されるとは思っていなかったからこそ、追ってもこないんだろうし。いやいやいや、違うよ、それは責任を全部リボーンに押し付けているのと変わらない。
そうじゃなくて、オレはこれからどうすればいいのかを考えなければ。

頭から枕を外すとゆっくりと起き上がる。そのタイミングを見計らったように自室の扉がドン!と大きな音を立てて揺れた。今、この部屋をノックするヤツはリボーン以外いない。
驚いて恐る恐る振り返るも、扉は閉まったままだ。鍵は掛けていない。だから開けようと思えば開けられる扉から入ってくるのではないかと眺めていても入ってくる気配はなかった。

「今日の昼休み、一人で保健室に来い…」

それだけ言うと階下に降りていく足音が聞こえて消えた。








どうにか身支度を終えてキッチンへと向かうと、リボーンの姿はどこにもなくてホッとした気持ちと置いていかれたような心許なさとがない交ざる。それでも朝食を食べないと不審に思われるだろうから仕方なく口を付けていくと、母さんがいきなり頭を撫でてきた。にっこりと笑顔付きで。

「…ツナは家のことを頑張ってくれてとっても助かるわ。でもね、我慢はしちゃダメよ?母さんも家光さんのこと大好きで再婚したけど、だからってツナが我慢するのは違うと思うの。」

「言ってる意味が分からないよ。」

頭に乗せられた手を振り解けなかった。
どこまで知ってるんだろうか。…いや、まさか。知る訳がない。
箸を止めて焼き鮭を睨んでいると、また母さんが頭を撫でながら爆弾発言が飛び出した。

「ツナ、リボーン君のこと好きよね?」

「んな…!ちがっ…!」

「うふふ。嘘吐いてもダメよ。母さん知ってるんだから…好きな子には反対ばっかり言っちゃう癖、天邪鬼なとこ母さんにそっくりね。」

かぁ…と赤くなる頬を止められず、顔を下に向けて必死に隠した。
それを見た母さんがくすりと笑うと、だってね…とまた話始める。

「母さんも同じだったの。家光さんのこと好きだったけど、どうしても認めたくなかったの。ツナを大事に育てなきゃならないのに、そんなことに現を抜かすなんて死んだあの人に申し訳ないじゃない?」

「そんなことないよ!母さんが幸せならオレも嬉しいよっ!」

ああ、これは母さんが一番最初に義父さんとのことを話してくれた時と同じ会話だ。にっこりと笑った母さんがやっぱりあの時と同じくぽろりと涙を流すと、ありがとうと呟いた。

「母さんも同じ気持ちよ。」

「母さん…」

力強い笑顔に強張っていた心が解けて暖かい何かが灯ったような気がした。







どうにか時間に間に合って家を出ると、いつものように山本と獄寺くんが待っていた。
挨拶を交わして歩き出す。山本がふざけると獄寺くんが憤り、それをオレが宥める。そんなオレの肩に纏わりついてくる山本が何かに気付いたようにオレの襟元を覗き込むとぎょっとして顔が強張った。
それを見た獄寺くんも視線の先を辿っていって同じように固まる。

「…なに?なんかあった?」

「何かってな…」

「そそそそれは!」

「それ?どれ?どこ?」

2人の視線の位置を辿ってもよく見えなくて、必死に襟元を摘んで下を見る。だけどよく見えない。
摘んだせいで益々よく見えるようになったそれに山本が指を這わせる。

「うひゃあ!」

鎖骨より少し上の首のつけ根を点々と押され、妙な声が出た。
そこには覚えがある。そんなところが弱いなんて昨日までは知らなかった場所だ。
山本の指を引き剥がすと、外していた第一ボタンまできっちり閉めた。
今更なにをしても遅いことなど承知だったけど。

2人の間を縫って前に出ると足早に学校へ向かう。
それに気付いた2人が情けない声を出して付いてきても止まることなく歩いていった。


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