2.どこもかしこも未発達で同年代の少年たちと比べるまでもなく幼い印象を与える綱吉は、やはり体毛らしき体毛も生え揃ってはいなかった。 まして胸などよほど男性ホルモンが活発でなくては体毛など生える訳もなく、そこに豹の長くておうとつのある舌を這わせられれば痛い筈なのだ、本来は。 脇腹をゆるく噛んでいた黒豹の牙はさも美味そうだといわんばかりに肌を舐め取っていく。 柔らかなそれを確かめるように這う舌と、獣特有の浅い息が服の中に篭ってぞくんとしたことに驚いた。 道の脇に生えた草に手を伸ばして握り締めていると、服から顔を出した黒豹は綱吉のズボンに歯を立ててずるんと引き摺り下げた。 「なっ?!」 間の悪いことに今日は私服で応援に行った帰りだった。 休日ということもあり、また延長戦がなければ街へ繰り出そうと話をしていたからだ。 制服ならベルトできちんと締められているウエストは、今日はゴムに紐で調節するだけのラフな短パンだった上に面倒で紐を締めてはいなかったことが災いした。 つるんと剥かれ突然外気に晒された下肢に驚きの声を上げると、黒豹は傷ひとつない尻にまたも舌を這わせてきた。 尻のきわから少しずつ上へと向かう獣の舌にまたも先ほどと同じ疼きが広がっていく。 半分以上下げられてしまった短パンの奥で、形を変えはじめた綱吉の起立はじわりと布のしみを作る。 恐怖で頭がおかしくなったのか、それとも逃避なのか。 誰も通らない道の真ん中で獣に襲われているにもかかわらず、綱吉は今までにない快楽を植え付けられていた。 黒豹の浅く繰り返す息に、快楽を押し隠そうと歯をくいしばることで誤魔化そうとする綱吉の息だけが辺りに響く。 まるで人間のように黒豹は前足を綱吉の服の裾に掛けると爪で引っ掛けて上へと押し上げた。 背中から尻が丸見えの姿に羞恥を覚えるもすぐに黒豹がピンと赤くしこった乳首に舌を這わせる。 後ろから上へ乗っている黒豹は脇腹から顔を寄せてぴちゃぴちゃとそこをいたぶり始めた。 綱吉の尻に置かれた黒豹のもう片方の前足は爪をわずかに覗かせたままでそのなめらかな双丘を揉む。 初めての強烈な快感になす術なく攫われた。 胸を舐めていた舌がそっと離れていき、服を押えていた前足が今度は短パンへとかかる。 恥も外聞もなく荒い息を吐き出していた綱吉が慌てて振り返ったときには、どうにか起立を覆っていたそれがずるっと膝の下まで降ろされるところだった。 「っ…!」 苦しかったというように飛び出てきた綱吉自身は濡れそぼっている。 形を変え硬くなっているそれを手で押えるより早く、黒豹が根元から舐め上げた。 薄い粘膜で覆われている起立を櫛で梳かされたように痛みが走る。 「いっ!」 あまりの痛さに思わず黒豹の顔を押し退けると手に噛み付かれた。 尖った牙が手の甲に刺さり慌てて手を引くとまた起立を舐め出した。今度はなぞる動きではなく咥えるように舌を巻きつけて少しずつ動かす。 痛いが先ほどのようなひりつく痛みではなく、じわっと広がる痛みは萎えかけた起立を再び起ち上がらせた。 「やっ、ヤダぁ…!」 神経がそこに集中してしまったかのようにわずかな刺激でも反応する起立の先を細長い舌先で掬い取られて悲鳴をあげた。獣は構わず綱吉を追い立てざらつく舌を上下に這わせると精液を吐き出させられた。 他人の手も、勿論女の身体も知らないままでのこの行為に怒りも悲しみも喜びもないまま茫然と横たわっていると、黒豹は顔についた白濁をペロリと舐め取ってから再び綱吉の上へと覆いかぶさってきた。 下半身を露出したままこの獣に食われてしまうのか。 なんとも情けない最後だがもう逃げ出す気力も奪われた。 獣は綱吉の肩に前足をついて俯けの状態にすると剥き出しの尻に舌を這わせてきた。柔らかいところから食う気なんだとぎゅっと目をつぶっていると黒豹の舌が尻の間を探りはじめた。 ぐりぐりと窄まりの周りを確かめるように這っていた舌が先を尖らせて奥へと侵入を果たす。 イかされたばかりの身体にその刺激は強すぎてチカチカと頭の奥がスパークしている。痛いとか苦しいとか怖いとかを吹き飛ばす感触に浅い息を繰り返す胸が地面で擦れて気持ちいい。 知らず意識をそちらに持っていかれていると後ろを探っていた舌が引き抜かれた。 肩を地面に押し付ける黒豹の足に力が籠り、ハッハッと獣特有の浅い息遣いがうなじにかかる。 どこから食われるのかと縮こまったオレをよそにあらぬ場所に熱を感じて驚いていると、後ろからいきなり突き抜けるような痛みに貫かれた。 引き裂かれる責め苦に苛まれながら、これはどういう事態なんだと必死に考えようとした。けれど痛みでまともな思考も浮かんではこない。 尻の間を行き来するそれが徐々に大きさを増し、腹の底から食い破られる恐怖でガチガチと震えていると頭の上からオイと声が掛った。 「死にはしねぇぞ、ガキ…っ、」 「な、ん…」 突然の声に驚いて後ろを振り返ると、そこには黒豹ではなく何故か真っ裸の男がオレの後ろに伸し掛かっていた。 「っ…、出すぞ、」 なんのことだと思う間もなく男の起立が深く腹を抉り、気持ちよさなんて微塵も感じられないまま腹の奥に熱い飛沫を叩きつけられた。 オレの腰を抱えていた男の手が離れていき、ずるんと音がして後ろからそれが離れていったことが分かった。 後ろの孔からドロリと零れていくのは男に注がれた白濁だろうか。 やっと解放された身体は地面に押さえつけられていたせいでどこもかしこも痛みを訴えている。それでもどうにか下着を身につけてしゃがんでいると裸の男はそれをじっと見詰めていた。 逃げ出す気もない男を睨み付けるも涼しい顔でいる。 「どういうこと…?」 「見たまんまだぞ。」 「分かんないよ!最初は黒豹がいたんだ。」 「あぁ、最初はな。」 「どこで入れ替わった?」 「入れ替わってなんざねぇぞ。あれもオレだ。」 バカな。人間は豹にはならない。もしそうだというならば物の怪の類だろう。 自分で思い浮かんだ『物の怪』という言葉にギクリとした。 先ほどの白い狐、あれと関係はあるのだろうか。 「違うぞ。オレはそいつを退治しにきたハンターだ。昔仕留め損ねたせいで呪いにかけられ普段は黒豹姿だがな。」 「はぁ?って、なんでオレの考えてること分かるの?!」 まるで心を読まれような答えに目を見開いて男の顔を覗きこむとフンと鼻で笑われた。 「読心術って知ってるか?何を思っているのか読めるんだぞ。」 「なっ…」 嘘か誠か知らないがそれでも男の人を小バカにした表情にカチンときた。 「ホモ!」 どうにかしてやり込めてやろうと叫ぶと、男は心底呆れた様子で吐き出した。 「んな訳あるか、ガキ。誰でもよかったんだ、誰でも。一日で仕留めるつもりが、あの白狐ふらり、ふらりと逃げ回りやがって…やっと追い付いたところで時間切れになったんだぞ。それでも白蘭のねぐらだけでも突き止めようと尾行していたところをお前に出会ったんだ。」 「だからなんでオレとせ…エッチしたんだよ。しかもどうやって黒豹から人間に戻ったんだよ。」 「…お前に盛った訳じゃねぇから安心しろ。多分、糞狐が術を掛けていったんだ。お前が女に見えるようにな。」 あの白い狐がオレの周りをふわふわしていたのは術をかけていたからだったのだと気が付いた。 けれど術以外のところが引っ掛かった。 「おま…!女だったらヤっちゃうの?!」 「だから呪いだと言った筈だ。人間と交わらないとこの姿に戻れねぇんだ。……大抵の女はヤっちまえばオレの言いなりになるがな。」 「ケダモノ!」 「褒め言葉として受け取っとくぞ。」 飄々とした態度の男はオレの言葉に肩を竦めると黒豹姿と変わらない身軽さで森の奥へと紛れ込んでいくところだった。 「強姦魔っ!名前ぐらい教えてけ!!」 大声を出すとあらぬ場所がズキズキと響くが、それよりも納まらない腹の虫に急き立てられてその背中に怒鳴りつけた。すると顔だけこちらを向いた男が少し考えた後しょうがねぇなと身体をこちらに向けた。 「リボーンだ。最初の男の名前ぐらい知っておきたかったって訳か?」 「だれがっ!最初じゃなくて最後だよ!っていうか思い出させるなーーっ!」 人の神経を逆撫ですることが上手な男にそう噛み付くと、くっくっと肩を震わせて笑い始めた。 「じゃあな、『綱吉』!」 「な、なんで…?!」 いくら読心術が出来たとしても名前まで知っているのはおかしいんじゃないのかとぎょっとすると、リボーンは自分の胸に指を当ててジェスチャーをした。 「あ…応援バスに乗る時用の名札か。」 首からぶら下げていた名札に視線を落とした隙に森に消えていったリボーンの素っ気無さに憤りを感じ、けれどこれでよかったのだとも思った。 これ以上おかしな世界に足を踏み入れることはよくないと告げる直感に促され、短パンに足を突っ込むと痛む後ろを押えながらいつもの道を歩くことに専念した。 . |