リボツナ2 | ナノ



2.




親しい者同士でハグはあるが、さすがに同性で顔にキスはない。守護者たちは生粋の日本人のくせに、こちらに渡ってから妙に感化されたようで長期間ボンゴレ本部から離れた後には、必ずハグされるけれど。
だからって、これはやばいんじゃなかろうか。

恋人同士のようにピッタリと身体を密着させているハグと、目の前に迫ってきた顔を慌てて手で押し留める。
すると手で半分隠された顔が不機嫌そうに歪む。

「…てめぇは久しぶりに会った師匠にこういう態度を取るのか?」

「イヤイヤイヤ!頬くらいにならいいけど、そこはダメだろ?!」

大きくなったリボーンは、あのまん丸お目々はどこに消えたのやら切れ長の目から垂れ流されるフェロモンが半端ない、存在自体が猥褻物となり果てていた。
手で押えている鼻や口が現れれば、一体どんな色男になったのやら。

「愛人さんにしてやりなよ。きっと喜ぶよ。」

「居ねぇ…」

「は?」

「だから、今は居ない。ツナと約束したじゃねぇか。」

「あー…、うん。そういうことね。」

不機嫌そうに寄せた眉さえその美貌を損なうことはなく、むしろ雄臭さが増して心臓が妙な具合に跳ねた。
これ以上この顔と密着してたら妙な気分になりそうで、リボーンの腕から抜け出そうと抵抗を試みるも抜く腕を取られ、逆に近くのソファの上に縫い付けられた。

「ちょっと!」

「…てめぇ、意味分かってんのか?」

「ん?……今は愛人さんが居ないけど、オレの愛人の誰かが気に入った子居たんだろ?約束だし、リボーンの頼みだからいいよ。」

多分、呪いを解くにあたって死ぬかもしれないからと愛人たちと切れたのだろう。この顔じゃ、すぐに愛人なんてできそうだけど、オレの愛人の中の誰かを気に入ったようだ。
欲しいものをやるという約束をしたのだし、愛人はどの子も綺麗だったり頭の回転がよかったりと気疲れしない子ばかりだからちょっと惜しい気持ちもあるけど仕方ないかと思ったのだ。

「でも、この体勢は分かんない。」

そう言ってやると、リボーンははーっと長いため息を吐いた。
そのいかにも分かってねぇと言わんばかりの態度に、ボルサリーノを押し上げて下から顔を覗いてやるとそのまま唇に吸い付かれた。

ちゅ!と音を立ててすぐに遠ざかっていったそれが離れていくのを呆然と見ていた。
ホント、綺麗な顔だな……って、どうしてリボーンにキスされなきゃならないの!

「ちょ…」

「欲しいのはてめぇの愛人なんかじゃねぇ…ツナ本人だ。」

「……」

……………。

ちょっと待て。一旦整理しよう。
リボーンとオレは元家庭教師と生徒だった。それがイタリアに渡ったことで、リボーンは元のヒットマンへ、オレはボンゴレのボスへと押し上げられた。
うん、そこは間違いない。

で、リボーンはアルコバレーノの呪いを解くと突然言い出して、その別れ際に欲しいものを寄越せと言っていた。それが何なのかは分からなかったが、ヒットマンとしての報酬以外を欲しがることのない…愉快なことはいっぱいしても、物欲という意味では薄かったリボーンの欲しい物に興味が湧いたのは事実だ。

どんな物を要求されるのかとちょっと心配だったけど、オレに強請るということはオレの用意できる物なんだろう。そう思っていたのだけれど…

「理解できたか?」

「イヤ、それムリ!」

確かにリボーンは男の目から見てもカッコいいと思うよ?でもオレも男なんだよ。いくら美形でも男はご免だ。
だというのに、首からネクタイを解きジャケットのボタンに手を掛けて脱がされていく。
これがまた上手いんだ。手で邪魔しようとしても、その手すら利用して気が付けば上半身はシャツが袖に引っ掛かっているだけ、下半身はベルトを緩められていた。

「うわわ…!やめろってば!」

これ以上は洒落にならない。全力で伸し掛かるリボーンの肩を押し返すと、ふいっと上から身体を起こしてソファから立ち上がっていった。
よかったァ!リボーンのただの気まぐれだったんだ、やっぱり。
ちょっと残念…イヤイヤイヤ!そんなことないから。うん、うん。

遠ざかる背中を見ながら、慌てて起き上がると脱がされかけていたシャツをしっかり羽織る。
自分よりも大きくなった背中を見ても違和感は感じなかった。
オレよりどうだろ…1つか2つくらい上と思われる容姿に、ブラックスーツとボルサリーノという出で立ちの変わらなさにほっとする。

そのリボーンは自室によく守護者たちや本人がワインを置いていくために、ワインセラーを作りつけてあるそこを覗いてお目当てのワインを片手に戻ってきた。
昨日送られてきたワインだ。

「…オレはあんまり詳しくないけど、いいワインなんだよね?」

「まぁな…」

言って封を開けるとグラスに注いでこちらに寄越した。
素直に受け取るとリボーンが横に座るまで待って、グラスを重ねて口を付けた。

「ん…いいけど、オレにはムリかも…」

一口飲み込むのがやっとだったそれをテーブルに置くと、横のリボーンが残ったワインを口に含み飲み込むことなくこちらを見てニッと笑った。

「な、に…ふぐぐっ!」

よからぬ気配に逃げ出そうとしたのに、たった一口のアルコールでぼんやりしていたところを引き寄せられて口付けられた。
今度は口と口がしっかり重なって、薄く開いたところにワインを流し込まれる。

口の中に広がる芳醇な香りと、無理矢理飲み込まされていくアルコール独特の喉越しに抵抗するも相手が相手だ。あっという間の全て嚥下させられた。

「…今度は酒飲みの授業?」

ついでとばかりに舌で口腔を弄って出て行ったリボーンに、それでも軽口を叩いてみるもまだ目の前にいるリボーンはフンと鼻で笑った。

「んな訳あるか。てめぇが往生際悪ぃから、酒で自制を緩めてやってんだ。」

肩に羽織ったシャツをまた剥ぎ取られ、今度は床に投げ捨てられた。
拾いに行こうとふらつきながらもソファから立つと、スラックスまで脱がされて絨毯の上に転がる。
アルコールで眠たくなった身体から力が抜けていくと、腕を取られてソファまで引き摺り上げられた。

「寝るんじゃねぇぞ…お楽しみはこれからだ。」

そう言われても、眠たさに勝てずリボーンの肩に額を乗せるとそのまま目を閉じた。


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