リボツナ2 | ナノ



17.




ベルトを寛げられた。脇腹を下る舌の生暖かさを感じても、ガチャガチャという音がぼんやりと聞こえてきても逃げる気にはならなかった。
外されたベルトが床の上で鈍い音を立ててもそれをぼんやりと眺めているだけだ。

好きだと気付いた瞬間に失恋が確定していた恋だった。どんなことをしても手に入れたいとは思えなくて、どうしたら諦められるのかそればかりを探していた。
ガンマさんに相談に乗って貰いたかったのも、本当は他人に諦めろと言って欲しかったのだと思う。男同士は気持ち悪いでも、月とすっぽんでもいい。とにかくオレとリボーンとはどうにもならないんだとバッサリ切り捨ててもらいたかった。

それなのにユニさんはガンマさんの気を引くためにオレをダシにしていて、リボーンとは付き合っていなかったことが判明した。つまりリボーンの片思いだったってことだろう。
その腹いせではないにしろ、無関係でもないこの行為に喜びなんて見い出せなかった。

ガキだと笑われるだろうか?心のない行為に何を楽しめばいい。
一時の快楽を好きな人と過ごせることよりも、気持ちを置いていったままの上滑りする淫蕩さに辟易するだけだ。
反吐が出そうなほど拒絶する心とは裏腹に、きちんと快を快として受け止める身体が恨めしい。

静かな玄関にジー…と響くジッパーの音にマットを握り締めて耐えた。
それでもこれだけは言いたい。

「…オレ男だよ…?ユニさんの代わりになんてなれない…よ…」

開けた隙間から忍び込む指が下着越しに中心を撫でた。立ち上がってきたそれの形を確かめるように這う手に包まれると気持ちよさに息が詰まる。

そうだ。ユニさんの代わりになんてなれる訳がない。そんなこと分かっていた筈なのに、今更気付くなんて遅過ぎる。

起立をぎゅっと握られて、それがリボーンの手だというだけで益々熱を帯びる中心とは逆に徐々に冷めていく気持ちを止められない。
サバサバした口調で言っても、脇腹に口付けた唇から漏れるのはどこか投げやりな笑い声だった。

「何言ってやがる…そんなもん、ココを握ってんだから分かってんぞ?」

ズボンを膝まで下げ腿の内側に手を這わせてきた。やわやわと撫でる手の動きが知らなかった快楽をゆっくりと呼び覚ます。
スルリと膝裏から腿を撫で上げ、そこから下着の裾へと指を差し込んできた。
布越しでなく直接指で弄られ、他人の手の感触に震えた起立の先からぷくりと体液が膨らむ。
堪らず顔を手で隠すと、リボーンがその手を掴んで床へと押し付ける。

「誰にされて喜んでんのかちゃんと見とけ。」

言って唇を塞ぐと下肢をまさぐる手に力を込めた。他人の手を知らないそこをぎゅっと握られて痛さに声が漏れて、緩んだ口許からリボーンの舌が忍び込んできた。
重なりあう度に漏れる唾液の音とは別に、卑猥な音を立てる下肢に裏切られた気分だ。

先ほどの言葉の意味を考えようとしても追い立てる手の動きに意識が奪われていく。
霞む視線の先を覆う黒に蝕まれて手放した快楽が下着の中に飛び散った。




散らした白濁を受け止めた手が下着の裾から抜き出されて目の前へと突きつけられる。
どろりとしたそれは独特の青臭い匂いを放って、リボーンの大きな手を濡らしていた。

罪悪感と憤りと、悦びと。
どれも心の底にあって、どれにも目を背けたくなる。
なのに目の前で手の平の白濁を舐めていくリボーンは何を思ってそんなことをするのだろうか。

噛み締めた嗚咽が食いしばった口から零れては玄関に響いていく。
睨みつけた先の顔は悪びれなく舐め終えると、また唇を重ねてきた。
口の中に広がる自分の匂いに吐き気がする。
それでも気が付けば互いの舌を絡ませてリボーンのキスを受け止めていた。

貼り付けられていた手が解かれても、押し返すこともせずに肩へと縋る手を取られて握り締められた。
大事そうにオレの手を包む大きな手の平に切なくなる。
誰を想って触れる手なのだろうか。
自分以外を想っているのだろうこの手を握り返すこともできない。何て惨めなんだろう。

口付けの合間も絶え間なく零れる涙に気が付いたリボーンがオレの顔を覗き込む。
それを見詰め返せずにいるとぼそりと呟いた。

「…ガンマはユニがいる…諦めろ。」

「なに…いって…?」

「あいつはユニ以外は見ねぇ…好きになるだけムダだ。」

「ちがう!…オレは、オレが好きなのは…」

まさかの誤解に慌てて言葉を紡ぐも、玄関先からガチャガチャと鍵を開ける音が聞こえてきた。
母さんか義父さんか。
こんなところで息子たちが半裸でもつれあっているのを見せてはいけない。
慌ててズボンを引っ張り上げると、リボーンに抱え上げられて2階へと逃げ出した。


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