16.俵のように抱えあげられた姿勢で連れて行かれそうになったので慌てて懇願すると、両手首をしっかりと握られたままで連れ帰られる羽目となった。逃げないようにか酷く強い力で。 ホストの格好のままで飛び出してきたリボーンは、広い肩幅と厚みのある身体に長い足が嫌味なほど決まっている。電車では帰宅途中の女性たちの視線をすべて攫っているほどに。 そんなリボーンに連行されているような格好で連れていかれるオレはいい恥晒しだった。 何を言っても無視するリボーンは、いつものようにムダに色気を振りまいてはいない硬質な横顔が逆にストイックな色気を醸し出していた。 そんな顔を見てドキドキしているオレはバカだ。 どんなに好きでも報われない恋なんてするもんじゃない。 家に辿り着くも、まだ義父さんも母さんも帰ってきてはいないようで、シーンと静まり返った家は2人きりだった。 そこへ玄関の灯りだけしか点いていない家の中へと押し込められた。 いきなり手を外して放り投げられた先は玄関マットの上で、少し厚手だったためにどこも痛くなかったが、体勢を崩したオレが上半身だけ起き上がるとその上にリボーンが伸し掛かってきた。 体格差と体勢の不利に思うように起き上がれないオレの顔にリボーンの顔が近付いてくる。 何をされるかなんて2度もされればバカでも分かる。 逃げ出そうともがく身体を足で押さえ付けられて、床についた手はそのまま押し付けられた。 それでも意味も分からずされる行為に精一杯反抗する。 顔を背けて床に頬を付けても、追ってきた唇が無理矢理重なった。 悔しさと惨めさに噛んだ唇を舐め取られる。濡れた感触にぞくりと背を這う何かに耐えようと口をきつく結んでも唇の隙間に舌が這いその音が静かな玄関に響いていった。 震える上唇を食まれて、びくりと小さく開いた口腔にするりと舌を捻じ込められた。 噛み付いてやろうとしても、一枚も二枚も上手なリボーンはそれを許さない。 逃げる舌を絡め取られ、ねっとりと重ね合う度に飲み込めない唾液が口端からマットへと伝っていった。 嫌だった。何の意味もないこの行為に浮つく自分も、それを分かってか繰り返すリボーンの真意が見えないことにも。 それでもいいように貪られた唇からリボーンの唇が離れていくころには、身体の力が抜け吐く息の荒さの中に熱さが混じりはじめた。 ぼんやりと仰ぎ見る先にあるリボーンの顔は照明を背にしているためによく分からない。 けれど先ほどのような冷たい視線ではなく、熱を帯びたそれがじっとこちらを見詰めていることは確かだった。 これで気が済んだのだろうと手で顔を覆って情けない顔を隠すと、Tシャツの裾からヒヤリとした空気と共に少し冷たい指が忍び込んできた。 咄嗟に手で押さえるも、無理矢理胸まで捲られた。 「なにす…っ!」 片手で上まで捲くって、もう片方で脇腹を撫で付ける。そんなことをされるとは思ってもいなかったオレはどうしていいのか分からずに身体が強張っていくだけで動けなくなった。 それも計算の内だったというように、腹を辿る指がそろりとヘソを撫でてまた上へと肌を確かめるようにゆっくり辿っていく。 逃げ出せないオレを嘲笑うかのように耳裏に口を寄せて息をかける。這い上がる指と耳を食む唇とに翻弄されて段々息が上がってきた。身の裡に巣食う熱は徐々に膨らんでそれが快楽であるということを突きつけられる。 逃しようがない熱に身を任せることもできず、潤む視界に唇を噛み締めた。 「忘れちまえ…」 耳朶に口を付けながらの呟きに一際大きく身体が震える。 目を瞑ってやり過ごすも、這い上がってきた指が胸の先を押し潰すように強く触れて小さく声が漏れてしまう。 そんなところなど触れたこともないのに、身体は快感としてそれを受け止めていることに底知れない恐怖を感じた。 嫌だと言ってもやめてもらえずに捏ね回される。 指の先で摘まれてそれが立ち上がっていることに気付かされた。 ぎゅっと指の腹で形が分かるように撫でられて眦からぽろりと涙が零れた。 本当に嫌だったらこんなことにはならないのだろうか。 吐き出す息の熱さに気付いているのか、しきりにそこを弄られて違うところに熱が溜まりはじめる。 ぐったりと力なく横たわる身体は抵抗もできやしない。 嬲られて膨らんだ胸の先に熱い吐息が落ちてきた。 吸い付かれて跳ねた背に手が差し込まれる。大きい手の平が背中と腰とを包んでそれに安堵する間もなくまた舌で舐め取られた。 ビリビリと身体を駆けるそれに漏れる声の色が甘さを帯びていく。 「いや…っ!」 跳ねる身体を押さえられながら、ズボンの前に手が掛かった。 咄嗟に手を掴むが力の入らない手では役に立たない。 それでも気まぐれでこんなことをされるのはどうしても嫌だった。 好きだから。 「リボーン!っ…こういうのは好きな人として!オレは…オレじゃ…」 震える声で胸にある顔に言い募る。するとふっと笑う顔がまるでやけっぱちのように見えた。 「好きなヤツとしてんぞ?オレはな…」 酷い言い草に気が付けばリボーンの頬を叩いていた。 力なんか入らないと思っていたのに、思いの外綺麗にヒットしたようでバチンといい音を立てる。 叩かれたリボーンは、叩かれることも分かっていたのだろう、赤くなった頬も気にせずまたオレの身体をまさぐりはじめた。 「っ…っつ!お前の好きはそんなに適当なのかよ?!」 本当はユニさんが好きなくせに、振られたからって手近で済ませようってことか。 激昂するオレを無視して指と唇とで翻弄していく。 逆らえない身体に涙が止まらなくなった。 . |