4.その布地に手を掛けて…止まった。 手をそこから滑らかな肌を伝いきちんと腹筋がついている引き締まった腹へとそっと触れる。額を手のある腹へと押し当てて本音が零れた。 「…ごめん、やっぱムリ。する気はあるし、もう逃げないけど怖い。」 ダメな大人だと笑われてもいい。 あと一歩が踏み出せないのは大人だからか、男だから。 中学生の頃に襲われかけてからこっち、男は勿論怖くて、でも実は女の子にもあまり興味を持てなかった。告白されたりしてキスまでは何度かいったこともあるけど、それ以上はできなかった。 あの時のオレに覆い被さってきた欲望に歪んだ顔に迫られる恐怖がどうしても忘れられなくて、そんな顔を見せるのも見るのも怖かった。 4月に入ってすぐに約束しただろと迫られた時も、恐怖に負けて叫び声を上げた。 ちゃんとリボーンと同じ意味で好きだし、他の4人に割って入られた時もすごく後悔した。 それから迫ってくることもなくなって、どうしようと思っている間に時間だけが過ぎていった。 そんな折に先ほどの女優からの電話が夜中に掛かってきた。いつものように取らないだろうと高をくくっていれば、すぐに出てしばらく話し込んでいた。めずらしく真剣な様子に苛々して、でもそんなことを思う資格もないんじゃないかとひどく落ち込んだ。 もう一歩踏み出したい。その気持ちに嘘はない。 でも怖い。 それ以外にもある。 いかにも手馴れている感じからも分かる通りこいつは経験豊富なのだろう。女の子と。 オレが男だと分かって押し倒すぐらいだから大丈夫だと思うのにやっぱりダメだと言われそうな気がしてそれも怖い。 大人なのに未成年に手を出していることに罪悪感が消えない。 色々な恐怖や罪悪感やらに目を瞑りたくて逃げてきた。 でもここにはオレとリボーンしかいなくて、そしてもう逃げたくなかった。 腹筋から顔を上げて胴にしがみ付く。頬に触れる肌は若々しく張りがあって思わずスリスリと頬を寄せていれば、上から歯を食いしばっている音が聞こえた。 びっくりして上を仰ぐと肩を押え付けられ、ソファへと沈んでいく。あっという間もなく口を塞がれて、中心を握り込まれた。 他人に触れられたことのないそこの刺激と、いつもより余裕のない口付けに恐怖よりも先に身体の芯から痺れるような快感が湧きあがってきて、それについていくのが精一杯になる。 巧みな手淫に仰け反り、重ねた唇の隙間から切れ切れの喘ぎ声が漏れ、それすらも奪うように絡め取られる。 口端から溢れて、顎を伝う唾液を追って唇が首筋に落ちていく。 やっと開放された口からは追い立てられている中心の熱を逃すように荒い息が漏れるだけで言葉が出てこない。 淫猥な音を立てて立ち上がるそこと、肌の上を彷徨う唇とに意識が向かっていった。 怖いもダメだもなかった。 あるのは餓えを満たすかのように覆い被さってくるこの熱い身体を愛おしく思う気持ちだけ。 胸元にある顔を腕で囲うと、欲に染まった瞳がオレを映す。深淵を思わせるノワールは今、内に熱を孕んだ黒へと変貌を遂げていた。それが嬉しい。 「待って…あっちに、いこう……」 言えば身体の熱を逃がすように深い息を吐いてオレの上から起き上がる。手を引かれてソファに座ると横に座っているリボーンの最後の一枚へと手を掛けた。 腰を上げてもらってゆっくりと脱がしていく。 やっと互いが全裸になった。 「まだ怖いか…?」 首を横に振ってソファから立つとリボーンの手を取って同じく立ち上がらせてベッドのあるだろう奥へと2人、足を進めた。 リボーンの手を取ったまま、ドキドキと煩い心臓を無視して奥へと進んだ。 自分が逃げ出さないようにと先を歩いていたのに、2つ並んだ広いベッドを目にした途端逃げたくなる。 怖いというより、恥ずかしい。 どうしようかと固まっていると、後ろから肩と腰に手を回されて耳裏に生暖かい息が掛かる。 ゾクリと身の内を這い上がる快感に肩が揺れた。するとそれが気に入ったのか耳を甘噛みしつつ腰から下へと手が這い回る。 耳を舌で嬲り、先ほどまで弄られていたせいで立ち上がっているそこを避けるように手が股関節や内腿を撫で付ける。気持ちいいのにもどかしい身体は前へとのめり込んだ。 膝をベッドに立てて崩れ落ちそうになる身体を立て直そうとすると、それを狙ったように中心に手を這わせる。やわやわと握る大きな手に力が抜け、カクンとベッドに手を付いた。 後ろを晒す格好になって慌てて立ち上がろうとしても、中心を扱く手に翻弄されて力が入らない。 そのままリボーンが背中に覆い被さってきて、逃げようにも逃げられないことを悟った。 「逃げんな…」 耳朶に絡む熱い吐息と共に零れた声は少し掠れ気味で、その声を聞いただけでカッと焼け付くような渇きを感じる。 先のくびれを指の腹で擦り上げられ、小さい悲鳴なような喘ぎを漏らすと、前をぐっと握り込まれてうなじから背中へと口付けを落とされた。つつーと背中を這う舌に長い息が漏れ、気持ちよさに力が抜けてベッドの上で突っ張っていた手が崩れる。 腰だけ高く上げた姿勢だと分かっているのにいうことを聞かない身体が恨めしい。 恥ずかしくて、でも気持ちよさに言いなりになってしまう。手元のシーツをぎゅっと握り締めそれに耐えていると、お腹の下に枕とクッションを押し込められた。 「な、に…?…ひっ…!」 ぬるりとした冷たい感触が後ろの窄まりに触れた。 そっと撫でるだけなのに、自分ですら触れたことのない場所を探られる恐怖に身体が強張る。 後ろを探る指に意識がいってしまう。ぬめりを帯びている指が徐々に容赦なく中へと押し込まれて、痛くはないけど何とも言えない気持ち悪さに身体を振るわせれば、もう片方の手が少し萎えた中心をまた扱きだした。 「っ、ふっ…あ…っ!」 今度は追い立てるように扱き上げられて、堪えようもない感覚にみっともない声が漏れる。 中心への刺激に喘いでいると、今度は後ろも強引に捻じ込まれた。 長い指で掻き回されるとぬめった音がする。 ぐちゅりと指を突き立ててはぐるりと広げていくような仕草でもう一本指を増やされた。 弾けんばかりの中心をぐっと握り込まれて塞き止められた。 いきたいのにいかして貰えない辛さに頭を振っていると、窄まりの奥へと進んでいた指にそこが当たった。 少し触れただけで中心がびくりと震えるくらいのヨさに、怖くなって身体が強張る。 「ひっ…あぁ!」 生理的な恐怖に逃げ出そうとした腰をしっかりと掴まれ、またもそこを指で掻いた。 執拗に何度も指を這わされて、その度に嬌声が上がる。 シーツを掴むと顔に引き寄せて齧り付いた。そうでなければとんでもないことを言い出しそうで。 それでもドロリと蕩けそうなほどの熱に煽られて指の動きに合わせて腰が揺れる。 気が付けば三本目も入っていて、徐々に抜き差しが激しくなっていく。 どうしようもない身体の熱に喘いでいると、ずるりと奥から抜き取られた。 突然の喪失感と開放感とに呆然としていれば、窄まりに何かが当たってぎくりとした。 後ろを肩越しに振り返ると、オレの腰を片手で抱えているリボーンが見えた。 もう片方はといえば、硬くなった中心をまた握る。 先ほどまで放っておかれたとは思えないほど先走りに濡れたそこを扱かれて身体の力が抜けた。先を親指の腹で弄られて気持ちよさに喘ぐと、後ろを宛がっていたそれがぐぐっと窄まりへと入り込んできた。 「…っ!」 さんざん嬲られて指で広げられたというのに、押し込まれた起立の先の太さに声にならない悲鳴があがる。 リボーンの手が前を扱く手を再開させるとすこし身体の強張りが緩み、その瞬間を見逃さずすべて押し込まれた。 熱い塊が中で脈打っている。 馴染ませるように繋がったままでいると、奥からずぐりとざわめいた。 腹の奥にまで入っている起立は、前をゆるく擦りながらも抜き差しし始める。 腰を打ちつけられ、ぐちゅぐちゅと挿入の音が耳を犯していく。 それさえどうでもよくなるほどの快感に甲高い喘ぎが零れると、なお一層激しく抉られた。 「は、あぁ…!」 どこかに飛んでいってしまいそうなほどの気持ちよさに膝の力が抜けると、腰を支えていたリボーンが手を外して後ろから出ていってしまった。 「りぼ…?」 「こっちに掴まれ。」 と手を差し伸べられて掴むと、ぐいっと起こされた。 膝の上に座る形でいると、そのままベッドに背中から転がされ、また上に伸し掛かられた。 . |