リボツナ2 | ナノ



2.




ドレスコードのある場所での食事なんて好きではなかったのだが、ここはそういった煩わしささえも美味しい料理を食べるための手順だと思えるほど。
個室ということもあり、食事や会話を邪魔されることなく進められることも気に入った理由だ。

ホテルの12階にあるフレンチレストランから望む夜景を楽しみながら目の前のドルチェに取り掛かる。
さて、この綺麗に着飾った貴婦人のごときお皿の上の芸術品をどうやって食べていこう?

たくさん食べるオレは、コース料理だと足りないので大皿料理を多めに頼む。きっかり5人前でやっと腹8分目といったところだ。個室だと一々驚かれたりしないし、マナーの行き届いた店ではそれくらいのことで客を不快にさせたりしない。
ゆっくり味わえるのが嬉しくて、ニマニマしながら頬張っていると目の前のリボーンがワイン片手に笑っていた。

「そうだった!お前、未成年だから飲酒禁止な。正月の時も言っただろ!」

「イタリアじゃ飲酒に年齢制限なんざねぇぞ。」

「ここは日本です。今日は頼んじゃったからしょうがないけど、次からは頼むなよ。」

「…アルコールのない食事ほどつまらねぇもんはねぇけどな。」

「そういうもん?」

飲めないオレには分からないけど、そう言われるとそうなのかも…なんて甘い顔しちゃダメだ。
とにかくバレたら困るんだからダメだと言っても肩を竦めるだけで、さてどこまで分かったやら。
ワインって物によっては10%を越えるアルコールの物もあり、結構きついと思うのだがさすがは生粋のイタリア人といったところか、1本開けても顔色ひとつ変わっちゃいない。
一口で夢の中へ誘われるオレとは大違いだ。

ゆっくり食事を取ったので結構いい時間になってしまっていた。そろそろ帰ろうかと促せば、会計は済ませてあるぞと言われてしまった。曰く、男の甲斐性だから口出しするなと。オレも男なんだけど?

「黙って奢られとくのも恋人の務めだぞ。」

「…お前の場合は裏がありそうで怖いんだよ。」

言えばため息を吐かれた。
可愛くない態度だっただろうか。
バツの悪さにシュンとしていると、気にした様子もなく促される。こういうところが優しいっていうか、イイ男っていうか…度量が違う?そんな感じだ。

リボーンと一緒にお店を後にすると、廊下やロビーですれ違う人たちの視線が隣に吸い寄せられていくとこが分かる。今日は変装などしていないのでリボーンのままだというのもあるだろう。
これで隣にいるのが女優だったりしたら色々な意味で注目の的だろうが、オレなので平気だろう。
そこまで考えて、また嫌なことを思い出した。

もう一回聞こうかな、とか。はぐらかされたということは言いたくないってことなのかな、とか。それはイコール聞きたくないことかもしれないし。
自分の想像だけで不愉快になってきて、隣を歩くことさえ苛ついてくる。
歩調を早めて先に進むが、リボーンとオレとではコンパスの長さが違うせいですぐに追いつかれてしまった。

「オレの歩調に合わせてくれなくてもいいぞ。」

「違うよ!」

ふんと横を向いたのに、気にせず肩を寄せてきた。

「どうした?今日はやけに苛ついてんな。いや、ここ2〜3日か。何かあったのか?」

「……」

言いたくなくて無言のまま地下駐車場へと駆けていく。車に飛び乗ると、同じく無言で助手席にリボーンが滑り込んできた。
こっちは息も絶え絶えだというのに、こいつは髪の毛一本乱しちゃいない。
ムカつく。

ハンドルを抱えて息を整えていると、隣からガサゴソと何かを開けるような音が聞こえてきた。
見れば小さな箱を開き、中から小さな粒を取り出していた。

「口開けろ。」

ふわりと香るのはチョコレートの物だ。大好物とまではいかないけど、よく運転前に食べているのを覚えていたらしい。
金の包みから解かれたそれを口の前にまで寄せられる。
不審に思うことなく、美味しそうな香りに口を開けるとゆっくり押し込まれた。
舌の上で転がして溶ける舌触りを楽しんでいると、中からトロリと溶け出してくるこれは…

「あの店のドルチェは美味しかっただろう?ショコラティエもいてな、お土産に人気なんだと。それはオレも美味いと思ったチョコだ。どうだ?」

どうもこうも!
慌てて吐き出そうとしたのに、手を押えて飲み込むまで見届けやがった。
口に入れられたのは少し苦味のあるチョコレートにブランデーを閉じ込めたいわゆるチョコレートボンボンのようなチョコだ。もっと柔らかくてしかもアルコールがきつい…

やばい…眠くなってきた。
きついアルコールのせいで食道から胃にかけて爛れるような熱さに襲われた。普段飲み慣れていないということもあり、あっという間に血管を通って身体の隅々にまでアルコールが運ばれていく。
シートに凭れ掛かり、ぼんやりと視線をめぐらせるとリボーンが呆れ顔でこちらをみていた。

「いくらなんでももう一粒くらい喰わなけりゃ酔わねぇだろうと思ってたんだが…」

その言葉に引っ掛かりを感じる。

「もう一粒…?酔わない??」

「まだ意識はあるな?」

何を確かめているんだと言おうとして言葉が止まった。
おもむろに取り出したカードをピラリとオレの目の前に突きつける。

「…お前、謀ったな……」

「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ。アルコールに弱いツナを気遣ってのことだぞ。」

絶対違う!
オレが酔う前に部屋を取っておいて、何言ってんだ。

「飲酒運転はヤベェからな。泊まってくぞ。」

眠気で思うように動かない身体を運転席から引っ張り出された。


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