リボツナ2 | ナノ



15.




ガンマさんが車から降りたのと同時に助手席のドアが開いた。
勿論オレは開けていないのだから、外から開けたに決まっている。
夜風が車内に入ってきたと感じる前に腕を引かれて車外に引っ張り出された。
あまりの早業に眩暈がしそうだ。

掴まれたままの腕を辿っていくと、あからさまにご立腹のリボーンといつもの底知れない笑みをかなぐり捨てたユニさんがこちらを睨んでいた。

「えーっと…お仕事は…?」

「どうでもいい。」

「右に同じですわ。」

「「…」」

ガンマさんに視線を送ると、ユニさんがガンマさんの前までいってネクタイを下に引っ張りながらもオレを睨み付けた。

「私が居ない間にコソコソ逢引きするなんて…そんなにガンマがお好きですの?!」

キッとこちらを睨む表情は嫉妬に駆られた恋する女の子のそれだった。だけどリボーン同様、ユニさんも一筋縄じゃいかない跳ねっ返りで今の今までそれは誰に向かっているのか見当も付かなかったのだけれど。

それ以上ガンマさんのネクタイを下に引っ張ると締っちゃいますよ…と言いかけて止めた。そんなこと言ったら火に油を注ぎかねない。

「オレ、そういった意味でガンマさんのこと好きじゃないですよ?…大体その前にオレもガンマさんも男です。男はご免です…」

リボーン以外は、とは言えなかった。
ガンマさんに相談する前に邪魔が入ったということは、それを誰かに言わない方がいいのだろう。

ユニさんにはユニさんの事情があったのだろうけれど、それでもオレとリボーンほどの障害はなさそうで羨ましいと思った。男同士で、兄弟で、しかもオレの片思いなんて誰にも言えない。

ネクタイを締め上げられているガンマさんは苦笑いしていてもどこか嬉しそうで、今更相談もできないだろう。

「相談したいことがあったんです。でもユニさんとリボーンが付き合っていないことと、オレのことは当て付けだったってことが分かりました。もうオレはお役目ご免させて下さい。それじゃ…」

掴まれたままだった腕を振り解こうとしたのに、リボーンの手はオレの二の腕を握ったまま離してくれない。
それでもこの場所から逃げたくて足を踏み出すとリボーンの肩に担がれた。新入生歓迎会の時と同じく俵のように。

「ちょ…っ!」

肩の上で暴れてもぐらつきもしないリボーンが憎い。
ここから離れたいのは、何もユニさんたちにあてられたからじゃない。ユニさんと付き合っていないのに何に嫉妬したのか分からないリボーンと一緒に居たくなかったからだ。

リボーンが誰を好きかなんてどうでもいい…なんて思えない。
ガンマさんはああ言ったけど、やっぱりリボーンが好きなのはユニさんじゃないのかと思う。そんなリボーンを好きな自分はみじめ過ぎる。

「放せよ!」

肩の上からリボーンの後頭部に怒鳴ってもしらっと無視された。

「…ユニ、今から抜けるが貸し借りはなしだぞ。こいつを使ったてめぇが悪いんだからな。」

「分かりましたわ…今日は特別ですからね?」

「そっちこそ、こいつをダシに使いやがって…大目に見てやるのは今回だけだぞ。」

似たもの同士、とガンマさんが言っていたことを思い出させる笑顔が2人から零れた。
腹に一物ある笑顔ってヤツか。
ゾゾゾッ…と背筋が冷えて身体を震わせていると、ユニさんがこちらを向いてにっこりと笑った。もういつもの笑顔で。

「…ふふふっ、リボーンと私が付き合ってなくてよかったわね?」

「いっ?!や…あの…」

どこまで分かったんだろう。あの少ない会話のどこでバレたんだ。
違う意味で冷や汗が滲むオレに背を向けて、ガンマさんのネクタイから手を離すとガンマさんの首にしがみ付く。色っぽいというより、妹が兄に甘えているようなその仕草に羨ましさと妬ましさが入り混じる。

「ついでに言うと、ツナくんに付き合って頂いたのには2つの意味がありましたの。1つはガンマね、もう1つは…そちらも成功したみたいだから、また今度お会いした時にでも教えて差し上げますわ。」

「…はぁ??」

ガンマさんとリボーンを手玉に取って楽しかったということだろうか?
ある意味確かに手玉に取られたリボーンが、ごねて大変な思いをしたというのはまた後日の話だった。

ユニさんにも、オレにも怒っていたリボーンにそのまま家まで連れ戻されてからのこと。


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