リボツナ2 | ナノ



3.







●束縛が激しい

結局あの後2時間も騒いでいたので、ツナが強制的にジャンケンで作る順番を決めていった。
それにしてもどうしてたかだか炊事当番で争うのか不思議でならない。

まあいいかとまた駄菓子屋に戻ると、今晩の勝者のコロネロが店の方に顔を出しにきた。

「夕飯はパスタと肉料理だ。食べられないものはないか?」

「聞いてくれるんだ。コロネロは優しいな。彼女のなる子は幸せだね。」

「幸せにしてやるぜ!」

「うん?どうしてオレにいうの?まあいいや…苦手なのはあるけど、食べられないほど嫌いなものもないからいいよ。」

「分かった。そういや、冷蔵庫の下にこれが落っこちてたぜ。」

コロネロが例の紙をひらりと投げて寄越した。

「ああ、これね。まだ途中だった。何々?束縛が激しい…っておまえら3人ともすごく煩いもんな。丸だね、この項目。」

丸を付けるツナの背に聞こえない声でてめーにだけだと呟いたが聞かれることはなかった。


●全く束縛されない

近所のおばあちゃんの話し相手になってから、少し外を見て回ろうかと庭に出るとスカルが汗まみれになって刈った枝をかき集めているところだった。

「ごめん!手伝うよ!!」

「いいですよ。これで終わりですから。それよりも綺麗になったでしょう?」

にっこり笑うスカルにつられて辺りを見渡すと、伸び放題で手入れのされていなかったことが嘘のようにきちんと整えられていた。

「うわーっ!庭師にお願いしたみたいだ!センスいいな、スカルは。」

汗を拭くふりをしながら赤くなった頬を隠していると、ツナが頭を撫でてくれた。

「ありがとう、スカル。」

「いえ…」

「なんかお礼するよ!何がいい?それともどこか行こうか?」

にこにこと笑うツナにいいですよ!と言いかけてこれはチャンスだと気が付いた。
ごくりと飲み込んだ唾を悟られないようにタオルで隠してこっそり呟く。

「あの…一言でいいんで、明日も会いたいって言ってもらえますか?」

「へ?嫌だな、そんなこと言われるまでもないよ。色々してくれるからじゃなくて、いい子だからでもなく、毎日会いたいよ。」

ふわりと零れた笑顔が可愛くて思わず伸びた手に何かが当たった。

「…いい度胸じゃねぇか。パシリの分際で。」

仁王立ちしたリボーンの手には小石が握られていた。
どこから見ていたのだろうか。
ざーっと血の気が失せるスカルとは反対に、にこにこ笑顔のままリボーンにも語りかけた。

「リボーンも同じだよ。ちょっと手がかかるし、意味不明な言動も多いけど、リボーンと会えてよかったって思ってるよ。」

「ツナ!」

感極まったリボーンがツナに駆け寄ろうとすると、後ろから手が伸びてリボーンの襟首をむんずと掴んで押し留めた。

「離しやがれ、ヘタレ。」

「誰がヘタレだ!」

またも睨み合う2人の空気も読まずにツナがトコトコと近付いていく。
2人の横までくると手を伸ばして2人の頭を同様に撫でだした。

「喧嘩しない。いい子だから仲良くしような?」

「「できるか!」」

それはムリな話だった。


●煙草

意外にもおいしかった(失礼)夕食を終えて、少し夕涼みでもと外に出ると遠くからドーンと腹に響く音が聞こえてきた。

「花火見えないね。」

隣町の花火大会なのだろう、ここからだと丁度家々に邪魔されて見ることができない。
残念だなと思っていると3人組が自転車を持ち出してきた。

「後ろに乗れ。」

「コラ、てめーまた抜け抜けと…」

「ずるいですよ、先輩!」

「うるせぇ。言い出したのはオレだからオレに権利があるんだぞ。」

またも内輪もめしている3人組に笑いながら、言われた通りにリボーンの後ろに跨った。

「まだオレの方が重いから変わろうか?」

「平気だぞ。すぐに追い越してやる。」

「…そう言えば3人とも少し背が伸びたよな。」

若干足の長さが違うのか、後ろに乗っているというのにつま先立ちだった自転車が走りだす。
遠くに聞こえていた音が少しずつ近付いて、住宅街を抜けて少し開けた道を走っていくとドドーンという音の後に黄色い光が夜空を照らした。

「うわぁ!大輪の菊みたいで綺麗だな…」

「ツナの方が可愛いぞ。」

「いや、オレ男だから可愛くても嬉しくないし!しかもお前よりおじさんだよ?」

「いいや可愛いぜ、コラ!」

「可愛いです。」

「…」

自分より年下で身長も低い3人組に口々に言われ、むぅと口を尖らせたツナは、思いついたように後ろポケットからなにかを取り出した。

人通りの少ない街路灯のまばらな道で自転車が止まり、リボーンの後ろから降りるとそれを一本取り出して口に含む。
ライターを手探りで探し当てると1年ぶりにたばこに火をつけた。

「吸えるのか?」

「…前はね、吸ってたの。彼女に言われて止めさせられたんだ。」

吸いこんでも以前ほどうまいと感じなくなっていたことに驚いていると、横から手が伸びてそれをひょいと取り上げられた。

「ちょっ…!」

「似合わねぇぞ。中学生が無理して吸ってるみたいな面しやがって。」

「誰が中学生なんだよ!失礼だな、リボーンは!」

取り上げられたたばこはそのまま道に落とされてリボーンの靴底に踏みしだかれた。
スターマインが上がっているのか、ドンドンと音は聞こえど花火は上がってこない。

「せっかく止めたのならまた吸うことはないですよ。」

「大人になってからにしとけ。」

「だから大人だって!」



●お洒落に無関心

思いつきで突然見に来たせいで、敷物もなにも持ってきていなかったオレたちは適当に地面に腰を据えて遠くの花火を眺めていた。

「そういや、この前一緒に買いに行った洋服着てねぇな。」

「いや、なんか勿体なくて…」

「着るために買ったんだろ、着ろ。」

「うっ。なんかあれ着ると益々若く見えるような気がするんだけど。」

確かに似合うと自分でも思うのだが、どうにも色が綺麗だったりデザインが小洒落ていたりと自分が妙にお洒落になったような感覚になるので、着るのを躊躇ってしまうのだ。

「こいつが選んだっていうのは気に食わねーが、見たいぜ。」

「明日にでも着て下さい。」

「えぇ!や、うううっ…」

スカルとコロネロにまで言われて返す言葉を失った。期待に満ちた6つの目に見詰められ白旗を揚げたのと、一際おおきな花火が上がったのは同じだった。


●言葉遣いが荒い

花火の音が途絶え、時間も9時を周ってそろそろ帰ろうかと腰をあげたところだった。

オレたちと同じく、遠くから花火を見ていたのだろう高校生と思われる4人組がこちらに向かって歩いてきていた。
言ってはなんだがあまりよろしくない人相をした4人組で、こういう輩とは相性のよくないオレは視線を逸らしたのだがやはりというか声を掛けてきた。

「僕たちこんな夜に可愛い姉ちゃんとお出掛けか?」

姉ちゃんと言われ、どこに女の子が居るんだと辺りを見回すが視線がオレで止まっているところを見るとオレがその姉ちゃんらしい。
って、誰が姉ちゃんだ!

カチンときて睨みつけるより早く、コロネロとリボーンがあっという間に4人を地面に沈めてしまった。

「てめぇらどこの高校か知らねぇが、2度とオレの前に姿現すんじゃねぇぞ。」

「ツナになにかしてみろ…一人ひとりにお礼してやるぜ、コラ!」

2人の啖呵にひぃぃい!と情けない悲鳴をあげて逃げ出していった。
呆然と2人の背中を見ていると、スカルがぽんと背中を叩いてきた。

「先輩たちは喧嘩が強いことで有名なんですよ。あ、オレは違いますから。売られた喧嘩は買いますが、わざわざ買ってまではしません。」

「…あんまり変わんないような。とりあえず、そこの2人はもう少し口調を改めような?」

肩を竦めるだけで人の話を聞いちゃいない3人だった。


●金遣いが荒い

今度はコロネロの自転車に跨って家路を帰る途中、コンビニに寄ることになった。
先週出ていた雑誌を買い逃していたことに気付いたからだ。

「まだ残っててよかったー!あ、ついでにこっちも買ってこ。久しぶりにこれも読んでみよっかな。」

「って、オイ!もう4冊目だぜ。そんなに持って帰れるのか?」

「ダメツナらしい散財の仕方だな…」

呆れ口調のコロネロとリボーンを余所に5冊の雑誌を手にレジに向かうと、スカルも何かを手にしてこちらに向かってきた。

「ロックアイスとシロップ?」

「昨日見つけたんです、カキ氷機。氷はロックアイスの方がおいしく出来るんですよ。」

「いいねー!」

その後、4人でカキ氷機相手に四苦八苦する羽目になるとは予想もつかなかったのだが。


●奥手

あまりに古いカキ氷機だったので、バラして刃を研いだり綺麗にしたりとてんやわんやになりながらもどうにかカキ氷を食べ終わった。

「もうこんな時間か…遅くなったね。風呂沸いてるから二人一組で入っちゃおうか。」

「ブッ!」

「〜!」

食べていた氷をいきなり噴出したコロネロと、どうやら氷で頭が痛くなったらしいスカルが身悶えていると、あまり甘いものは好きではないと公言していたリボーンが持っていたスプーンを取り落としながら訊ねてきた。

「…で、ツナは誰と入るんだ?」

「オレ?オレは最後でいいよ。最初の二人を決めたら一人余るだろ。それとも、オレとは一緒に入りたくない?」

「よし、入るか。」

「って、ちょっと!話聞いてた?オレは最後でいいんだってば!」

リボーンに肩を引かれ風呂場に連れて行かれそうになったので大声で叫ぶと、リボーンは視線を後ろにやって肩を竦めた。

「見りゃ分かんだろ?コロネロは鼻血出してるし、パシリは顔が真っ赤だぞ。今入れるのはオレとツナしかいねぇ。」

「はぁ?って、コロネロ!スカル!大丈夫?!医者連れて行こうか?」

顔を覗き込んだ瞬間に、いっそう顔色が赤くなったコロネロとスカルのお陰でその日は風呂どころではなくなったらしい。


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