リボツナ2 | ナノ



14.





朝食を摂りにキッチンへと向かう廊下で身支度を終えたらしいリボーンとすれ違う。
オレの顔を見て険しくなっていく顔に昨夜の失敗を知った。
それでも口角を上げて精一杯笑顔を作る。

「おはよ、リボー…じゃない兄さん。」

それを無視して横をすり抜けていく。
唇を噛んでそれを堪えていると、後ろから頭を鷲掴みにされて振り返させられた。
びっくりして振り向いた先でリボーンが苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見ている。

「…リボーンでいい。」

抱えられたままの姿勢で額に生暖かい何かが触れて、それがリボーンの唇だと気が付いたのは顔が遠ざかっていってからだった。

「な、な、なっなんで?!」

手を額に当てて自室へと上がっていくリボーンに声を掛けてもやっぱり返事はなかった。そのまま部屋に入っていったのだろう音だけが聞こえてきて、その音に緊張の糸が切れた。
ペタリを座り込んだ場所は昨日の晩にリボーンが拳で穴を開けた壁のすぐ真下。

嫌われてるのか、そうでもないのかさっぱり分からなかった。
それはオレがバカ過ぎるからなのか、リボーンが難解過ぎるからなのかそれさえ理解できない。
分かるのはこのままじゃ普通の兄弟にもなれないってことだけだ。

「誰かに相談できればいいんだけどな…」

何気なく呟いた言葉にハッとする。
そうだよ!相談してみよう。
自分ひとりで考えても埒が明かないのは明白だった。
それならば誰に…と考えて人選に悩む。

だってユニさんは当事者その1だし、マーモンさんは面白がって話をややこしくしそうだ。コロネロさんは一番まともそうだけどあの人は相談って柄じゃなさそうだし…スカルさんはリボーンに厳しそうというか恨みがありそうな感じだ。ラルさんは相談に乗ってもらえるほど親しくはない。山本や獄寺くんは申し訳ないけど無理だ。
と、そこまで人の顔を思い浮かべてげっそりしてきた。

相談できそうな人って居ないよ。どうしよう。こういう時にこそ兄が欲しいと思った。兄…アニキと言えばガンマさんなんだけど、この人も当事者なんだよな。
…でも大人で相談に乗ってくれて、尚且つ冷静に周りが見られるのってガンマさんくらいしか思い付かないよ。
今日はユニさんと会う約束をしていたけど、その時にちょっとだけ相談に乗って貰おうかな。悪いよな。…でも訊ねるくらいはしてみよう。嫌ならきっと断ってくるだろうし。

座り込んだ廊下から立ち上がると、駆け足で2階の自室まで飛んでいった。
そうして昨日ガンマさんから教えて貰ったばかりのメアドに恐る恐る用件を打ち込んだ。







メールで相談したいことがあると送ると、ガンマさんから授業がはじまる少し前にメールが返ってきた。
今日はユニさんが例のホストクラブに行く日だから、その待ち時間なら空いていると。
ユニさんはやっぱりおかんむりらしく、今日会う予定はキャンセルだとメールがきたし、それならば丁度いいと思った。
ユニさんもリボーンもその時間は用事があるってことは、相談に乗ってもらうのにこれ以上いいタイミングはない。
勿論すぐにガンマさんへとメールを返したのはいうまでもない。





今日はリボーンの後を追っていないのでゆっくりとホストクラブの近くにある路上に停まる黒塗りの車へ近付いた。
先に電話で確かめてからコンコンとガラスを叩くと運転席に座るガンマさんがハンドル越しに手を挙げて中に入るよう指で指図する。それを見て遠慮なく助手席へと収まった。

「よう、お嬢抜きでオレに相談ってのは何だ?」

途中で寄ったスタバのコーヒーを手渡して、自分はラテを手に視線をガンマさんへと上げた。

「…その、個人的なことなんですけど…」

どう言い出していいのか分からないオレに、いかにもコーヒーを飲むついでだといわんばかりの態度のガンマさんに救われる。

「リボーンとユニさんて付き合ってますよね?それなのに、ユニさんはオレとも付き合ってる…っていうか、オレで遊んでるだけだとは思うんですけど…」

「ちょっと待て。お前何か勘違いしてないか…?お嬢はリボーンとは付き合ったことはねぇぜ。」

「えっ…?」

そんなバカな。だったら何でユニさんは自分のことを「リボーンの大事な人」だとオレに言ったんだ。
それにリボーンも焼きもちを妬いていたんだ。はっきり聞いたから間違いない。

「…それじゃあ、リボーンの片思い…?」

だとしたら悪いことをしてしまった。お互いに好きだけどまだ付き合ってはいない状態だったということか。ならばリボーンがオレみたいなのにさえ焼きもちを妬くのも頷ける。
やっと納得がいったオレに、ガンマさんが違うと首を振る。

「そりゃありえねぇな…うちのお嬢もだが、あのリボーンがお嬢を?天と地がひっくり返ってもないぜ。言い切れる。」

「そんな…なんでそんなこと言い切れるんですか!?」

「似たもの同士ってのは反発するんだよ。あの2人の間に流れるのはビジネスだけだ。あのメンバーは一人残らず似通っていてな…強いて言うならお前さんみたいなタイプの方がお似合いだと思うぜ。」

「…オレ?」

まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったオレは、びっくりして手の中のラテを零しそうになる。それを見ていたガンマさんが咄嗟に手を出して受け止めてくれて事なきを得た。
考え事をすると色々と疎かになりがちなのはオレの悪い癖だ。
しっかり持っておけよと両手に握らされているところで、ガン!という大きな音と共に車が揺れた。

「ガキが…っ!!」

「へ?」

紙コップに集中していた意識を外へ向けると、そこには車を足蹴ししているリボーンと腕組みをするユニさんとがこちらを鬼の形相で睨めていた。



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