リボツナ2 | ナノ



2.





書類との格闘もボスの仕事のひとつだ。
面倒くさがりのオレはデスクワークが大っ嫌いなんだけどね…前に一度溜めたことがあって、その時は1週間不眠不休なんて悲惨な事態になった。もうしないよ。

それにオレの唯一の楽しみ、睡眠だけは死守だ!

なのに今のオレは寝る間も惜しんで執務室に篭りっぱなし。
オレがここに居るってことは、獄寺くんも同じだけ篭っているわけで…

「隼人、このAの資料持って来て。」

顔を上げて獄寺くんに頼むと、目の下はすごい隈。

「…その資料持って来たら今日は休んで。」

「いえ!10代目がお休みにならなければ、自分だけ休む訳にはいきません。…10代目、顔色悪いっス。」

獄寺くんはオレの前に立つとそっと額に手をかざす。

ふっと、煙草とコロンの香りがした。
いつも傍にいる元家庭教師からは匂いはほとんどなかった。

彼の匂いらしい匂いはあのとき嗅いだだけ…と思い出して顔に血の気が集まるのを感じた。

「じゅ、10代目!熱が出てきたみたいです。すぐに医務室にっ!」

「何でもないよ。平気だから!」

「しかし!」

焦れた獄寺が綱吉を抱き上げようと屈む。
目の前に獄寺の顔が迫ってきて、あまりの近さに腰が退けた。

ううぅっ…やっぱりリボーン以外は顔近付けられんの嫌だ。気持ち悪い。

ジリジリと逃げて背もたれで止まる。これ以上は逃げ場がない。

「そこまでだぞ、獄寺。」

いつの間に入って来ていたのだろう、真っ黒い死神が真っ黒い愛銃に手をかけ照準を合わせていた。

「うわっ!何してやがる!物騒なモンしまえよ!」

「すっすみません!」

ホールドアップをして綱吉から距離を置く。照準は獄寺にぴったりと重なっているからだ。

「もう…おかえり。」

立って獄寺とリボーンの間に入り、発砲を防ぐ。これ以上ここの壁に傷をつけられてたまるか!

すると銃を懐にしまって綱吉に近付くといつものように唇が落ちてくる。

「ただいまだぞ。」

ちゅっ…と軽く触れ合うだけなのに、びくりと震えた。
おかしい、ただの挨拶なのに。

あれぇ?何でドキドキしてんの、オレ。
ううぅっ、何だか久しぶりに見たリボーンてかっこよくない?

うんうん唸っていると後ろから声が掛かる。

「10代目、医務室に行って下さい。ここ1週間くらい碌に眠っていらっしゃらないじゃないですか。」

「そんならオレが連れてくぞ。獄寺、てめぇも休め。顔色が悪い。」

いえ!自分は!と遠慮する右腕に、君に倒れられると困るから…と言付けて部屋を出る。
と、言うか部屋から連れて行かれた。
…せめて俵抱きはやめて貰えませんか、先生。

「うっせぇ。また痩せやがったな。」

「知るか!」

「しかも目の下に隈がばっちり出来てんぞ。そんなに先生が恋しかったのか?ん?」

「バッ馬鹿言うな!」

連れてこられたのは綱吉の自室。ホレ、とベッドに投げ込まれて噎せた。
いきなり投げんな!気管に入ったわ、ボケ!

噎せる綱吉を尻目にソファに腰掛けると書類とパソコンを取り出してテーブルに広げる。

「…早かったな。あと1週間くらいかかる仕事渡した筈なんだけど。」

「ハッ!てめぇオレを誰だと思ってる。」

うん、知ってる。最強のヒットマンだ。性格も最凶だけどね。

「…突っ込みが鈍ってんぞ。早く寝ちまえ。」

「分かってるんだけどさぁ…。」

ジャケットを脱いで、ネクタイは外し、スラックスからベルトを抜いて脱ぎ捨てた。
シャツ一枚だけど楽だしいいか。

ごろんところがりリボーンを見つめる。

あぁ、帰って来た。そこに居るんだ。

「ツナ、見るのは構わねぇが足しまえ。」

「うん?寒くないよ。…はいはい、分かったよ。ったく、行儀だなんだって結構うるさいな。」

すぐに銃出すんじゃねぇ!そんなことしてるから寝れないんだって。
うわっリボーンにぬるい顔された。お前にまでそんな目されるなんてお終いだな。

「いいから早く寝ちまえ。」

ひょっとしてオレが寝るまで付いていてくれる気なんだ…?
何だよ、昔は理不尽の塊だったのに。
いつの間に育ったのかなぁ。オレずっと一緒に居たのに気付かなかったよ。

書類とパソコンを睨んでいた顔を上げて、ふぅとため息を吐く。

「寝れねぇのか、ツナ。」

「身体は暖まってきたから眠気はあるんだけどね。…リボーンと会うの久しぶりだからかな、嬉しいみたいで目が閉じてくれないんだ。」

どうなってんの、これ。

「ちっ!」

「何舌打ちしてんだよ!」

「てめぇ、我慢大会か?!」

「何が?」

「相変わらず鈍いヤツだな…ダメツナ健在だぞ。」

「ダメツナ言うなっ!」

ツカツカとベッドまで近寄ると乗り上げられた。腹の上に。

「って、寝るんじゃなかったのかよ?!」

「これも寝るって言うだろ。今のはツナが悪いんだぞ。」

「だから何が!」

ってえええええぇっ!!!!?
どっから出したの、その手錠!

「うわわわっ!押さえんな、嵌めんな!!イ〜ヤ〜っ!やめろーーっ!!」





3週間前に致されたアレに腹を立てて、1ヶ月はかかると見込んだヒットマンの仕事を押し付けた。
その後、3日は身体がぎしぎし言ってたんだぜ?鬱血なんて2週間は付いたままだったし、手首の痣はまだうっすら残ってる。
しばらく顔も見たくない!って思ってたんだけど、1週間で寂しくなった。2週間で声が聞けないことに不安を覚えた。眠れなくなったのもたぶんここからだ。
で、今日やっと顔が見れたのに動悸が止まらない。何これ?って思ってたら、またもリボーンにいいようにされちゃってる。
恐ろしいことにほっとしてるんだよ。こえーよ。手錠に繋がれて、ガキに好き勝手されてるのにだよ?
ああ!もう、どうなってるの!

「往生際が悪いぞ。いい加減開き直れ。」

くくくくって、人の首の後ろで笑うな!見えねぇけどイイ顔で笑ってるんだろーなぁ。
つか、腰撫でるの止めてくんない?卑猥だよ、先生。

「突っ込まれて卑猥もクソもあるか。まだ余裕がありそうだな?」

ねーよ!何回イかされたと思ってるんだ。そしてお前はまだヤんの?元気だな…。
入れっぱなしのソレが硬度を取り戻しつつあるのを確かめた。だからもういいっつーの!

「噛むのヤメて。跡残るんだぞ!それからいい加減に手錠外してよ。もう逃げれねーよ。」

足腰立たないからな!

「逃げるなんて思っちゃいねぇよ。てめぇはオレから逃げれねぇだろ。態々オレに喰われるのを待っていたうさぎだからな。」

何だ?それ?喰われるのを待つって、うさぎってヒデェ言い草だな!

「ガキだガキだっと言いながら、誰とキスした?誰と寝た?てめぇが分からなくても身体は知ってるだろ。」

「っ!サド教師!」

そうだよ!知ってるよ!獄寺くんも山本も、コロネロもマーモンもスカルもラル・ミルチも、誰もお前のようにはならなかったよ。

たった3週間だけど、不安だったよ!…大好きだ、ちくしょー!

「一言余計だけどな。まぁ及第点やるぞ。」

って、だからもういいよ!これ以上の身体を使った愛情表現は!!







終われ



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