続 6.ラルさんの冷たい視線もなんのそのな厚顔なリボーン。 そんな図太い神経になれないオレは何だか居た堪れなくて空港に着くまで無言を通した。 だってさ、父さんはオレとリボーンのこと知ってるとはいえ昨晩のようなことまでしちゃってるとは思ってないだろうし、ラルさんも同じだろう。 それなのにと思うと恥ずかしいし、バツが悪い。 リボーンの顔もまもとに見れなくなって、外を見ていた筈なのだが気が付けば寝ていたようだ。 肩をゆすられて目を覚ます。 目を擦って傍にいたリボーンに抱きつこうとして正気に戻った。 危ない…ラルさんもコロネロもいるよ。 宙に浮いた手でリボーンの肩を押し返して車の外に出ようとすると、その手をぐいっと引っ張られて抱き締められた。慌てて逃げようとしたが寝起きで力が入らないのと力の差で逃れられない。 そうこうしている内に顔が迫ってきてぶちゅっと。 「うぎゃー!何しちゃってんの?!バカ!」 血の気が顔に集まったまま捨て台詞を吐いて逃げ出した。 追いかけてきてくれたのはコロネロだった。 肩を掴まれたと思ったら後ろに引っ張られた。首がぎゅうと締る。 「ぐぇ。」 「お前、こんなところで迷子になったら洒落になんねーぞ、コラ。」 逃げると苦しいので足を止める。 コロネロがやっと手を離してくれて、空気が吸えた。お前の馬鹿力で締められたら死んじゃうんだからな。 涙目で睨むと頭をぐしゃぐしゃと掻き回された。 人より力があることを自覚してるのに、オレが絡むと忘れてしまうのがコロネロのコロネロたる所以だ。 諦めた。 結構走ってきたようで、リボーンもラルも姿が見えない。 走ったことで疲れたオレの目の前にあった喫茶店にコロネロと2人で入るとリボーンにメールを出した。 空港の中には色々なお店が入っているのだが人がいっぱいで、どの店も座るのに苦労する程の繁盛振りだ。 運よくそんなに待たずに座れた喫茶店でコロネロはコーヒーをオレはココアを注文して向かい合う。 そういえば。 すっかり忘れていたのだが、コロネロへもプレゼントを買っていたのだ。 脱いだコートのポケットに突っ込んだままのそれを取り出すとコロネロの手を取り上に乗せる。 「何だ?」 「一日遅れだけど、クリスマスの。」 綺麗なブルーの瞳が大きく見開くとオレと手の上のプレゼントを交互に見つめる。 あんまりマジマジ見られて恥ずかしさにぷいっと横を向くとやっと気が付いたのか、手の中の包みを鷲掴む。 力いっぱい握られたせいでぐしゃぐしゃになったそれに慌てたコロネロがおかしい。 「大丈夫だよ、壊れものじゃないし。開けてみてよ。」 「お、おお。」 リボンを解く手付きが恐る恐るといった風で益々おかしい。 緑色のリボンが解かれてファンシーな包装紙から現れたのはカーキ色のマフラー。 コロネロはマフラーなんて滅多にしないだろうけど、色目がコロネロのいつも着ている洋服に丁度ぴったりだったのだ。これなら邪魔にならないかと思って選んだのだが、さて。 コロネロの顔を見ればニカッと笑顔を返してくれた。 うん、どうにか気に入ってくれたみたいだ。 包装紙とリボンごとマフラーを鷲掴んでズボンのポケットに捻じ込んだ。ポケットがパンパンになっている。 そういうところが男らしい。 笑い合っているとコーヒーとココアが運ばれてきて、口に運ぼうかとしたら…取り上げられた。 「てめぇ、こんな筋肉馬鹿にまで用意してやったのか?」 「へっ?だって、コロネロにもコートとか貰ったし…無しって訳にはいかないだろ?」 オレのココアを手にしたリボーンがイイ笑顔で訊ねる。つーかいつの間に? コロネロの横にラルさんが座って、やっと4人揃った。 「あ、これメニューです。」 気にせずラルさんにメニューを渡していると、怒ったリボーンがオレのココアを飲み切った。 ってオレの! 「口直しだ。」 「ちょっ…!ここではマジでやめろって!」 危うくまたキスされるところだったが、咄嗟に肘で防いで事なきを得た。 こんな公衆の面前で何さらす気だ! 「リボーン、貴様そんなことを家光の前でしたら沢田家に上がらせて貰えなくなるぜ。家光は綱吉のことを娘と勘違いしている節があるからな。」 「今更だな。ツナとはセッ…」 「どわっ!」 慌ててリボーンの口を手で塞ぐ。よかった、間に合って。 何を言わんとしていたのか察したコロネロとラルが呆れた顔でリボーンとオレを見る。 ううううっ…お前のせいでオレまで恥かいた! 睨んでいるオレを無視してリボーンは、口を塞ぐために身体を押し付ける格好になったオレをここぞとはかりに抱き締める。 「ちょっ、人が…」 「…こんなヤツで本当にいいのか?」 「遅くない、オレにしとけコラ!」 ラルさんが呆れ、コロネロが言い募る。 うん、ちょっと考えたいくらいだよ。 . |