リボツナ2 | ナノ



続 5.




身支度を整えると昼近くになってしまっていた。
飛行機の時間は夕方だということでそんなに焦ることもないのだが、余裕を持って行こうとチェックアウトしてホテルを後にする。
12月下旬とは思えないほど暖かい日だ。
空は高く、雲は風に流されてあまり見えない。

荷物もあったのでタクシーを拾おうと外で待っていると、見覚えのあるジープがやってきた。
運転席には昨日別れた筈の幼馴染み、その隣には見たこともない美女。
どうしてここに?

オレたちの前で止まると、コロネロが後ろに乗れとジェスチャーした。
何だかお疲れの様子の上に、顔色が悪い。
それに構わずリボーンが乗り込むのでオレもそれに倣った。

「おはよ、コロネロ。顔色悪いけどどうしたの?」

「おう。……どうもこうもねーぞコラ。」

多くは語りたくないようだ。思い出したくもないといった様子にオレは首を傾げる。

「フン、軟弱だな。だからオレが鍛えにやってきてやったんだ。」

そう言うのは助手席の美女。
構わない性質なのか髪はざんばらで服装といえばコロネロの普段着と同じミリタリールックだ。
にも拘わらず、小さい頭と等身のとれた身体に整った顔まで乗っかっていて美女であることに変わりはない。
コロネロとお似合いだよな、と思っているとリボーンがくくくっと笑った。

「昨日は楽しかったか?コロネロ。」

「楽しいわけがあるか!よくもこの女をイタリアから呼び寄せやがったなコラ!」

「煩い。黙れコロネロ。おい、そこのお前…リボーンの隣のお前だ。沢田綱吉。」

キョロキョロとしていれば、有無を言わせない強い声にいきなり矛先を向けられて背筋が伸びる。

「うっ…はい!」

後ろを振り返ってオレをジロジロ見ると眉根を寄せてリボーンに向き直った。

「貴様、どうしようもない男だとは思っていたがこんなガキに手を出して良心が痛まないのか?」

「全然痛まねぇな。12年待ったんだからよく我慢した方だろ。」

「外道め!」

と吐き捨ててこちらに向き直る。

「家光も何でこんな子供をこの外道と一緒にイタリアへ渡らせることにしたのか…。」

意外な名前が出てきて、思わず身を乗り出す。

「あの!ラルさん、でしたよね?うちの父さん知ってるんですか?」

「知っているも何も、オレは家光の元で働いている。」

「そうなんですか。いつも父が迷惑を掛けてすみません!…それと、オレこれでも16歳です。高校生なんで子供じゃないです。」

「なに…?」

「本当だぞ。これでも16だ。」

横のリボーンが余計な一言を付け足して言えば、ラルさんがもう一度マジマジとオレの顔を見た。

「信じられん!ジャッポネーゼは若く見えると聞いたが、ここまで幼く見えるヤツばかりなのか?」

「ツナは特別だぞ。コレを見ろ。」

何やら懐から出したのは一枚の写真。それをラルさんに渡す。
何の写真だろうと覗き込むと母さんとオレがエプロン姿で台所に立って料理をしている姿だった。
これは23日が休みだったので一日早いクリスマスをしようと用意しているところを撮られたやつだ。
今の写真屋って現像速ぇ…っじゃなくて、いつの間にこんな写真を?!

「この横にいるのはこいつの姉か?」

「違うぞ、母親だ。」

「?!!」

ラルさんの目はオレと写真の上を行ったり来たりして、最後に写真を凝視するとリボーンに返した。
うん、それ撮られたの知らなかったから今すぐ渡せ。
そんなフリフリなエプロンを身に着けている写真なんざ持ち歩いてんなっ!

隣のリボーンに手を差し出すとそれをぎゅっと握り込まれた。
そしてひっくり返されて薬指にちゅっとひとつキスを落とされる。

「何だ、指輪でも欲しいのか?まだ早ぇと思ってたが、欲しいなら今度用意しといてやるぞ。」

「いらない!」

そんなオレとリボーンを見て、ラルさんが一言。

「やっぱり貴様は外道だ。」

どんな意味で言ったのやら。


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