リボツナ2 | ナノ



続 4.




シャワーを浴びてバスローブのまま出ると、すでに着替えまで済ませているリボーンが新聞を広げてテーブルの前で座っていた。
そのテーブルの上には朝食が並べられていて、ツナを待っていてくれたようだ。

「おまたせ。」

「気にすんな。…それよりひとりで大丈夫だったか?」

新聞から目を上げて足を組み直す。
嫌味ったらしい長さだ。
しかもこちらを見る目が笑っている。

「平気だよ!」

ふたりで入ったら昨晩の繰り返しになりそうで、わざと時間をずらして入ったというのに。
ニヤリと笑う顔からはからかいの色が見て取れる。
思い出したくもない痴態を演じたせいで、声は擦れていて身体は普段使わない筋肉を酷使したためにバリバリと悲鳴を上げていた。
それでも朝といわれる時間に起きられる程度には手加減してくれたようで、どうにかひとりでシャワーも浴びることができたしこうして朝食に在り付くことができる。

「…あのさ、今日何かあんの?」

リボーンの前に座ると、注いであったりんごジュースに口を付ける。
冷たい喉越しと自然な甘さに身体が水分を欲していたことに気が付いた。
飲みきってしまうまでこちらを見ていただけだったリボーンが、新聞を横に置いて訊ねてきた。

「どうしてそう思う。」

「だってこんな時間に起こすし…朝もあっさりしてたしさ。」

「何だ?もっとねっちょりして欲しかったのか?」

「いいぃ?!いいよ!遠慮する!」

リボーンの手がバスローブの裾を割って膝を撫でようとするので、慌てて足をずらすと手の届かない場所まで椅子を避けた。
先に着替えようか。でもお腹はこれ以上のハンストに耐えられないと抗議の声が上がっていた。
仕方ないのでちらちらとリボーンの手の行方を気にしながら手近にあったクロワッサンに齧り付く。
口の中にほわんと広がるバターの香りに食が進んだ。

食べ終える頃には警戒もすっかり薄れて、最後の楽しみに取っておいたいちごを頬張る。
リボーンを見ればコーヒーとクロワッサンにしか手をつけていない。
奈々やツナの作ったもの以外は手をつけないリボーンに、いつものこととはいえよくないよなと思いいちごを口の前に持っていく。

「ほら、あーん。」

いちごとツナの顔を交互に見て、ニッと笑うといちごの半分に齧り付いた。大きくて赤いいちごは一口で頬張れないほどで、仕方なく半分残っているいちごを摘んだまま待っていた。
その手をぐいっと引かれて、テーブル越しに乗り出していた身体が椅子から浮く。そのまま強く横に引っ張られ、気が付けばリボーンの膝の上にいた。

横座りで膝に座らされ、腰には手が巻き付いている。
それ以上何かする訳でもなさそうなのでいいや…と続きを食べさせることにした。
手にした半分のいちごを押し込めると指に赤い果汁が付いている。何気なくペロリと舐め取ると顎を取られて口付けられた。
先ほど自分でも食べていたいちごの香りがまた口に広がっていく。
鼻から抜ける息まで甘い香りがして妙に恥ずかしい。
口を離そうとずらすとまた追ってきて結局深く重なった。
朝の挨拶にしてはずいぶんと濃厚なそれが終わったのはいちごの香りが気にならなくなってからで、力も入らずくったりとリボーンの肩に凭れ掛かるのが精一杯の状態にさせられていた。

「おいしかったぞ、ツナ。」

何がおししかったのか。言うまでもない程イイ顔で笑っている。
首筋をくすぐる息にぞくぞくさせられていれば、唇が吸い付いてきた。
ちくっとした痛みが走った後、舌がネロリと舐めていく。
小さく漏らした声に甘さが混じっていて再び燻りはじめた身体の奥の熱がバレてしまわないかと気が気ではない。
弱々しく肩に手を掛けて身体を離そうとするとバスローブの襟かを手が割って入ってきた。


結局、朝からフルコースでおいしく食べられる羽目となった。






「時間がねぇぞ、急げ。」

「だったらするなよ!」

「だから一回で終わってやろうとしたら、ツナがもっと…」

煩い口は塞いでしまえ!
顔を赤くしながらリボーンの口を両手で塞ぐ。
聞いてられるか!たとえ事実だとしても。

ニヤつく顔が塞いでいる手の平にキスを落とす。
慌てて手を離すとほっぺたにまでキスされた。
恥ずかしいヤツめ。

今度は下着を身に着けて、さて昨日着てきた洋服を…と探すと何故か大きな荷物が出てきた。
うん?この大きさだと軽く海外旅行行けちゃうんじゃね?

………まさか。

恐る恐るトランクを開けて、閉めた。そしてまた開けて確認する。
色々な荷物の一番上に乗っているこれは、パスポートとかいうヤツじゃなかろうか?

「今日着る洋服はこいつにしろ…っと、何だ見付かったか。」

「……一応聞いとこうか。これって誰の?」

「勿論ツナのだぞ。」

いささかも悪びれがない顔でリボーンが言う。

「何でオレのがここにあるの?!」

「今からイタリアに行くからだ。」

「どうして?!」

「ツナと付き合うことにしたと言ったら久々に会いたいから連れてこいと親に言われてな。奈々にも相談したんだがそれなら冬休みがいいだろうと話が纏まったんだぞ。」

「ちょっと待て!母さんがいいって?!いやいやいや!それよりオレの意思は??」

頬を膨らませて下から睨んでいるのに、気にした様子もなく胸に抱き込まれる。
引っ掻いても暴れても離さない腕に、最後は疲れてでもくやしくてしがみついた。
肩におでこをくっ付けて背中に手を回す。

「…ずりぃ。」

どれだけ嫌だといっても聞いちゃくれないし。しかもそういうヤツだと知っても好きなのは自分だ。
だからくやしい。

「観光だと騙して連れて行こうと思ったんだがな。やっぱり嫌か?」

「や、じゃない。」

悪かったな、と小さく聞こえてきたので驚いて顔を上げると眉尻を下げるリボーンの顔が見えた。
珍しい顔に目を瞠って、それからそっと口付けた。


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