続 3.空調の効いた室内は寒くはないのだが素肌を晒していくには少し空気が冷えていた。 セーターを剥ぎ取られ、中のシャツをはだけられていくと肌寒さにぶるりと身体が震える。 重ね合わせていた唇を解かれてほうっと息を吐くと手袋を嵌めたままの手がするりと薄い背中を撫でる。 革独特の冷ややかさと、撫でる指の優しさに声が漏れた。 心臓が口から飛び出そうだ。 こんな日に、こんな場所で、慣れない行為に及ぼうとしている。 大体したのは1ヶ月以上前の上に片手で足りるほどしかしていない。 いや、ヘタにこれからどうなるのかを知っているだけに逃げ出したかった。 最初の時のように勢いがある訳じゃない。雰囲気に流されて…というのに相応しいシチュエーションではあるのに、逆にそれが恥ずかしい。 一ヶ月以上あいたのには理由があった。 学園祭やテストだけじゃなく、する度におかしくなるような気がして意図的に逃げていた。 未知のことは誰しも怖いものだろう。しかも理由が理由で、自分が異常なんじゃないのかと思うとするのも怖くて、結果的にここまで間があいたという訳だ。 だけどここで逃げるとどうなるのかも知っている。 シャツを剥ぎ取られ、ズボンは膝まで下げられてその中途半端なおろし方のせいで足が動かなくなったところでベッドに転がされた。 恥ずかしさに顔を腕で覆うと、ドキドキと鼓膜を叩く血流の音が聞こえる。 どうなったんだろうか。 キスまでは普通だったのに、何でそれ以上になるとこんな風になるの。 手袋を嵌めたままの指が革の感触が肌で感じるほどゆっくりとまあるく撫でていく。 冷たい肌触りとわざと中心を避ける触り方がもどかしくて覆った手から覗き見る。 すると胸を撫でていた手が、先ほど脱がされたせいで解けたリボンを拾うとゆるく手首に巻きつけた。 少し動けば解けそうなほどゆるい結び方に、何かあるのだろうと当たりをつける。 「これ、何?」 「リボンだろ。解けねぇように気を付けろよ。そこが解けたら下を結ぶぞ。」 「へ?…ええ?!」 下と言いつつ指差した先にはまだ下着が残されている場所。 「………さすがにそこは止めて欲しいんだけど。」 必死に手首を縮めてリボンが解けないように胸に持ってきた。 それを見てリボーンがニヤリと笑う。 「最近避けてただろ。」 ぎくりと肩が揺れた。正直過ぎる身体のバカ! リボーンを見れば張り付いた笑みを浮かべている。 怒るまではいっていないけど、あまり機嫌がいい訳でもない。 やばい。 「今日の様子だと浮気とも思えねぇ。…するのが嫌なのかと思えば反応はするしな。つー訳でオレが納得するまでこのままだぞ。」 「いやだ!バカ!サド!この結び方じゃ絶対解けるって!おま、下に結びたいだけだろ?!」 「そうとも言うか?」 「それしか言わねーよ!」 最近大人しく手を引くと思ったらこれか。 嬉しそうに結んであるリボンに手を掛けようとするので、急いで頭の上に持っていく。 解かれても下に結びそうな予感がするのだ。 それを見て、今度はイイ顔で笑うと唇を胸に落として先を咥えられた。 万歳をした格好のせいで好き勝手され放題だということに気付いたのは今。 手袋を脱ぐと、ベッドサイドに置いて咥えているのと反対の先に指を這わせた。 押しやりたいのに手を動かすと解けそうでそれもできない。 それでももぞもぞと身体をひねって逃れようともがく。 すると咥えているだけだった突起を舌で嬲りはじめる。ついでもう片方も指の腹で擦る。 いきなりの刺激に声が漏れた。 「あっ…!あぁン!!」 あまりに甘さを帯びた声に、漏らした途端羞恥が走る。 カーッと赤くなった顔と、火照った身体を容赦なく快楽が覆っていく。 離されない口と、摘んだり擦ったりを繰り返す指に先ほどよりも甘い喘ぎが止まらなくなった。 ちゅっと音を立てて口を離すと下から顔を覗かれた。 隠すもののない上気した顔を眺めるリボーンは先ほどとは打って変わってご機嫌だった。 「かなりよさそうじゃねぇか。溜まってんならいくらでも付き合ってやるぞ。」 「バッ、ちが…!」 バカ、違う。と言い掛けた口は下着越しに握られたせいで途中で途切れた。 布越しに擦られて背中がしなる。 もっと…と言いかけてはっとした。 何言おうとしてんの、オレ! くつくつと胸元で笑うリボーンに、逆ギレだと分かっていてもつい睨んでしまう。 「なるほどな。理由がわかったぞ。」 「…はぁ?オレも分かんないのにリボーンは分かったのかよ?」 「まーな。」 とうとう下着ごとズボンも脱がされて、身に付けているのはリボンひとつになってしまった。 上に覆い被さるリボーンはまだシャツがはだけているだけなのに。 居心地の悪さにもぞもぞしていると、手首に絡まるリボンを解かれてしまった。 「んな?!何するんだよ!」 「くくくっ…虐めるのはヤメてやる。」 「へ?」 解かれたリボンはまた首に結ばれる。 両手首を開放されてほっと息を吐いていればまた口付けを落とされた。 頭の芯から痺れるような感じが身体にも広がり、与えられる快楽にただ酔った。 唇を離された時には羞恥も忘れて縋り付いていた。 ぼんやりと眺めるリボーンの顔が獲物を前にした狼のように獰猛になってきて、その顔を見て這い上がるのは食べられてもいいという気持ちだけ。 分かった、というか思い出した。 こうなるのが恥ずかしくて、逃げていたのだ。 けれど今更思い出しても、もう遅い。 身体中を這い回る手に淫らな自分を暴かれた。 . |