リボツナ2 | ナノ



続 2.




パレードが終わる頃になるとかなりの人が帰っていく。
同じように人垣を歩くオレとリボーン。

寒さに手足がかじかみ、鼻の頭が痛くなってきた。
手袋で顔を覆い、息を吐いて顔を暖めているとリボーンが顔を下げてきた。

「手袋は?」

「忘れた。」

丁度よかったかも…と思いながらも、自分でしたようにリボーンの頬を手袋で覆うとはーっと息を吹きかける。

「ちょっとはあったまった?」

「ああ、かなりな。」

珍しく本当に機嫌がいいと分かる笑顔が零れる。
嬉しくてもう一度暖めようと息を吹きかけると腰に手を回された。
うん?それだと意味ないよな。

「手、寒くないの?」

「寒くねぇな。せっかくツナが積極的になってるってのに、寒さなんざ関係ねぇぞ。」

「……うわっ!」

そう言えばこの体勢って傍から見ればバカップルがイチャついているように見える。
慌てて手を外すと腕から逃れ、横に移動しようとして人にぶつかってしまった。

「すみません!」

頭を下げて謝ると、通りすがりの男の人は手を振って平気だと合図すると消えてしまう。
それでも心の中でごめんなさいと呟いて、ハタと気が付けば一人になっていた。
駅やホテルへと向かう人垣に、ポツリとオレ一人が佇んでいた。
誰もが皆一様に幸せそうな笑顔で帰っていく。
親子連れやカップル、中には友達同士で楽しかったことを話し合い寄り添い合う。
たくさんの人がいるのに、肝心な人が居ないことに気付かされて胸がぎゅうと締め付けられた。

心細さと寂しさで道の端に追いやられていると、いきなり手を掴まれる。

「バカか、いきなり消えやがって!」

探してくれたのだろう、肩で息をつくリボーンに怒られて、いつもなら怒り返すところだというのに安堵と嬉しさにぽろりと涙が零れた。

「泣くな。」

零れた涙を舐め取られて、またも身体が逃げそうになったが押し留め、ぎゅっとリボーンのコートの裾を握って堪える。
どうせここを通る人たちはオレたちのことを知らない人だ。
ちょっと過剰なスキンシップぐらい、イブの夜ということで見なかったことにして貰おう。

「今度は迷子にならないように手つなごう。」

「…そうだな。」

手袋を片手だけ脱いでリボーンと手を繋ぐ。走ってきたせいか少し汗ばんでいるのに指先が酷く冷たい。
脱いだ手袋を繋いでいない方のリボーンの手に嵌めて、繋いだ手はコートに押し込めた。

「こっちの手袋、大きくなるぞ?」

「いいよ、洗えば縮むって。」

そんな訳あるかとか言い合って、やっとふたりになれたことに感謝した。
コートの中の握り合った手が暖かくて、外の寒さなんて気にならなくなっていた。





電車に乗って帰るのだろうかと思っていたら、いつの間に予約していたのかホテルへと連れていかれた。
大きなホテルには、カップルやら親子連れやらがたくさん居てかなり忙しそうだ。
案内された先には広い続き間になった部屋ともう2部屋あって、滅多にこんなところに泊まったことがないオレはわくわくと部屋の探検に勤しんだ。
窓際のカーテンを引くと園内が見え、その向こうに海が見える。
キラキラとこの時期特有のイルミネーションに彩られた風景にしばし見入っていれば、足音を立ててリボーンが近付いてきた。

「キレーだね。」

「そうだな。」

そっと近付いてきたリボーンに後ろから抱き締められて、そのまま身体の力を抜いて凭れ掛かる。広い胸と長い腕に抱き込まれているとすごく安心できて目を瞑っていると顔が近付いてくる気配がした。
目を瞑ったままで顔を後ろに向けるとそっと唇が重なる。
軽く何度も啄ばむように重ねていれば、徐々に深くなっていく。
腕を後頭部と背中に回されて思う様貪れている頃には、オレの手もリボーンの首の後ろに縋り付いていた。

窓の外のイルミネーションが遠くで瞬くだけの暗い室内に2人分の息遣いが篭る。
やっと離れた唇から漏れた息が妙に甘い。
立ったままの姿勢で服の上から弄られはじめて慌てる。

「まっ、てって!」

ニットの裾から入り込んできた手を止めると、首筋を辿っていた顔も押し留める。
少し力を入れて顔を離すと不機嫌になっている顔が見えた。

「オレ、貰いっぱなしだからさ…たいしたもんじゃないけど。」

ソファに放り投げられていたコートから紙袋を取り出した。
いかにもな包装を施された小さい紙袋には赤いリボンが綺麗に巻き付いている。
それをベッドに腰掛けているリボーンに押し付けると、ちょこんと横に座った。

何も言わずに包みを開けるリボーンにドキドキした。
出てきたのは黒い革の手袋。
リボーンの手は大きくて中々合うものがないのだが、コレは平気だと思う。
どうかなと顔を覗き込むと淡く笑っていた。

「ありがとな、ツナ。」

手にした手袋を嵌めているが、やっぱり丁度よかったようだ。
こんなところで見つけたプレゼントの割にいいものが見付かってよかったと思う。
本当は家に置いてあるプレゼントもあるのだけれど、やっぱり今日渡したかったのだ。
それは明日でもいいや。

リボーンの笑顔にほっとしていると首に先ほどのプレゼントに使われていたリボンを結ばれる。

「…どうしてコレをオレに結ぶの?」

「聞くだけ野暮ってもんだろ。大人しくプレゼントになっとけ。」

ぼわんと湯気が出そうだけど、たまにはいいかな…なんてね。
もう一度落ちてきた唇に自分のそれを重ねていった。


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