リボツナ2 | ナノ



続 1.




高校の冬休みというのは意外と少ない、とツナは思っていた。
山本は今日も野球部の練習で、帰りは持って帰りたくない通知表を手にひとりで家路に着くことになった。
いまだカテキョーをしてくれている恋人にこの鞄の中の成績をどうやって見せればいいのだろうか。
本気で帰りたくなくなって、でもお腹も空いたし、どの道見付かるのは目に見えているのでしぶしぶ下駄箱へと向かった。

通り過ぎる生徒、主に女の子たちが何やら騒がしい。
キャアキャアと黄色い声が聞こえてきて、ついでに悪寒もしてきた。
どうしよう、校門に向かっちゃいけないと勘が告げている。
しかし、その勘はこれ以上遅くなることはいけないとも告げていた。足早に向かうその先には遠巻きにハートを飛ばす女の子たちやら、果敢にも話掛けている積極的な女の子たちの真ん中にあの2人が。

………。

置いて帰ってもいいだろうか。
今、あの2人のところに向かえば間違いなく女の子たちの嫉妬の視線に晒される。
うん、裏門から帰ろう。

見付からないようにこっそり足を忍ばせて裏門に足を向けたのだが、目敏いコロネロに見付かって猫の子のように摘み上げられた。

「オレたちを置いて、何帰ろうとしてるんだコラ!」

「に、にゃあー。」

リボーンと違って、女の子たちを上手く捌けないコロネロは苦虫を噛み潰したような顔になっている。
でもな、お前らが学校に来なけりゃこんな目に合わなくて済んだんだからな。
自業自得っていうもんだ。

「ツナも捕獲したし、行くか。」

「捕獲って何?!」

「つべこべ言わずとっとと乗り込め。」

やっぱり女の子たちのジト目に晒される羽目になりながら、校門に横付けされていたジープへと押し込まれる。
運転席にはコロネロ、助手席にはリボーン。オレはといえば、放り込まれた後部座席に置いてあった荷物の山に埋もれていた。

「ちょっ…!これ何?」

「お前の着替えだぞ。」

「コートと手袋、マフラーはオレからだコラ。」

「それ以外の洋服と靴はオレだ。」

ふた山に積まれていたのは洋服だったらしい。
て、言うか。
そもそも何でここで着替えなきゃならないの?
洋服を手に固まっていると、リボーンが乗り出してきた。

「着替えらんねぇのか?脱がしてやるぞ。」

「んぎゃー!いらねぇ!やめろってば!!」

ネクタイを取られて、ジャケットは剥がされ、シャツをズボンから引き抜かれていると車が横に傾いた。
キキーッ!!とタイヤが鳴る。
ゴロンと車の中で転がり、慌てて座席にしがみ付く。

「どうかしたの、コロネロ?」

「………。」

「ハン、これしきで顔赤くしてんなよヘタレ。」

見ればコロネロの耳が赤くなっている。…相変わらず純情だな、誰かと違って。
それにしても、どうしてここで着替えければならないのか訊ねる必要が出来た。

「なあ、何でこんなとこで着替えなきゃならないの?家でいいだろ。」

「ダメだ。今からねずみと犬とアヒルのいる国へ遊びに行くんだからな。」

「何で突然?!」

「色々と、な…。」

ついでに家光が帰って来ていて、夫婦ふたりっきりのクリスマスイブにしたいんだそうだぞ。とまで言われる。
納得できるような、できないような?
だって色々と言ったときのこいつの顔はすごくイイ顔をしていたのだ。
何か絶対裏がある。

「…ここで着替えるとコロネロの運転がヤバそうなんだけど。」

「チッ、しょうがねぇ…高速に乗ったらパーキングのトイレで着替えて来い。」

「ええっ!嫌だよ!」

「ここで事故って死にてーのか?」

「……分かった。」

しぶしぶながら、承諾するしかなかった。





そんなことがあったりもしたが、無事夕方にはねずみの国へと辿り着いた。
途中、パーキングへ寄って着替えと昼食を取ったり、渋滞に巻き込まれたりしながらだったけど滅多にこの3人でドライブすることもなかったので、喧嘩しながらも楽しかったりした。
リボーンとコロネロはお互いが邪魔だと言い合っていたけど。

クリスマスイブということもありカップルだらけのパークの中を、男3人で歩いている様はやっぱり異常なのか道行く人々がオレたちを振り返っていく。
女の人は分かるのだが、男の人まで立ち止まって眺めている。隣には女の人がいるんだからそっちの気はない筈だろうに、どっちに見蕩れているんだろうか。
間違った道に目覚めちゃったのかな。

「違うぞ。男どもはツナを見てんだぞ、忌々しいが。」

「へ?オレ…?」

リボーンとコロネロがくれた服は、淡いベージュのコートと7分丈のパンツ、もこもこのニットにブーツを合わせている。ついでにとイヤーマフまでくっ付けられていて、確かに遠目に見たら男とも女とも分からないかもしれない。
でも近くで見れば間違えないと思うんだけど。
ガラスに映る自分の姿を見て、やっぱりオレじゃないと確信する。

「ツナは自分が思ってる以上に可愛いぜ。」

「はははっ…コロネロの欲目だよ。」

ふたり揃って違う!と言っていたけど、違わないって。


クリスマスともなれば夜の帳が足早にやってくる。
暖かいコートに包まれていても出ている顔が冷たくて、手袋で暖めているとリボーンがコートの中に入れてくれた。
暖かさに恥も忘れてしがみ付いていると、コロネロも手を広げて待っている。
…そっちに行くとリボーンのお仕置きが怖いので遠慮させて貰った。
そんな感じでパレードまで見て、お土産を梱包してから園内を出ようとしたとき。
ふと、今更思い出したとでも言うようにリボーンがコロネロに耳打ちする。
どんなことを言われたのかは聞こえなかったが、聞いた途端に青くなるコロネロって初めて見た。

「オレたちは別で帰るから気にすんな。ラルによろしく伝えとけよ。」

「〜〜っ、てめー覚えとけよ!」

すごく嫌そうなのに、駆け足で園内に逆戻りするコロネロ。
そう言えばラルって誰だろう?

「ラルって誰?コロネロの恋人?」

聞いた途端にリボーンがぶぶぶっと吹いた。珍しい。余程ツボだったらしくしばらく笑っていが、それを収めると教えてくれた。

「ラルはコロネロの従姉だ。」

「ふ〜ん。その人がなんで居るってリボーンが知ってるの?」

「……」

無言で笑っている。先ほどとは違う種類の笑みに、何かしたんだと分かった。
本当にこいつって色々画策するよな。





.










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -