リボツナ2 | ナノ



はちみつトースト





懐かしい夢を見た。
あれは小学生の頃の話。


オレはリボーンに抱きつくのが好きで、しょっちゅう抱き付いていた。
低学年の間はリボーンもすぐに抱き返してくれて、近所でも兄弟と間違われたりしていた。
それが距離を置かれるようになったのは、高学年に入ってからだ。


両親が出張中のリボーンに、母さんが朝と晩のごはんを作っていてそれを呼びに行くのがオレの日課であり、楽しみでもあった。特に日曜は遊んで貰えるので、はりきって起こしに行っていた。
兄弟のいないオレには、リボーンは兄のようなもので気安い関係だったのだ。


その日も、日曜の朝の日課であるごはんに来いコールをしにリボーンの家まで呼びに行った。
母さんから手渡される鍵が、なんだか特別なもののようでこれを受け取る度に誇らしいような、頬がにやけるような、そんな気分になる。


ガチャ…と玄関の扉を空けると見覚えのある靴と、見たことのない綺麗な赤いハイヒールが仲良く並んでいた。
誰かいるのかと声を掛けようとすると、シャワーから出てきたらしい女の人がこちらに気付いた。
お互いにその場から動けない。
けれども、相手の女の人がリボーン!と呼ぶと居間からリボーンが顔を出す。
こちらを見て目を見開くと、女の人に何かを言って怒らせ、彼女がすぐに出て行ってしまった。

慌てたのはオレだ。
その頃になると、さすがに男女の仲に興味も持ち始める年頃だったし、毎週毎週連れている彼女が違うことに気付いていたオレは、オレのせいで怒らせたのだと思ったからだ。

けれど、しょせん小学生。うまい言葉も出ずにリボーンを下から窺うのみだ。

「あの…ごめん。」

「何がだ。」

何かあったのかと言わんばかりに普通の顔をしていた。
それでもモジモジしていると、この頃では滅多にしてくれなくなった抱っこをされた。
恥ずかしいが、嬉しい。

へへへへへっ。

笑うと笑い返されて、もっと嬉しくなって首に抱きつくと頬を寄せられた。
リボーンはイタリア人なのでこんなのは挨拶だという。
そんなもんかと丸め込まれていたので、何の気なしにオレからも頬にちゅっとする。

普通の男子高校生は知らないが、リボーンはにきびひとつない上に外国人特有の白さが綺麗な肌だ。
あまり抵抗なくしていると、低い声が零れる。

そういえばこの頃からだ。
早く育ってくれと言いはじめたのは。

抱えられたまま家に帰ると、母さんが分厚いトーストに切れ目を入れてたっぷりのはちみつとバニラアイスをのっけて食べていた。
甘いものが大好きなオレは、オレにも!と強請った。

「あら、まぁ。リボーンくんに甘えているのに、まだ甘い物が欲しいの?」

なんて意地悪を言った母さんを睨む。
すると、リボーンがオレを椅子に座らせてトーストを手にした。片手には包丁。
綺麗に切れ目を入れると、トースターで焼き色を付け出ていたはちみつをたっぷり掛け冷蔵庫からアイスを出して乗っける。

「…すごい。おいしそう!」

ニコニコで口に運ぶと、横に座ったリボーンにもお裾分けした。
甘い物は少しでも致死量だと公言しているリボーンだが、何故かその時は大人しく口を開けて食べた。

「おいしい?」

「…甘ぇ。」

口直しだとすぐにエスプレッソを煽る。それなのに、もう一口寄越せと口を開ける。
カリカリの耳と、たっぷりのはちみつに解けたアイスがおいしいと思うところを選んで、口に入れてやる。
それを見ていた母さんはくすくす笑う。

「まぁ…ごちそうさま!」

何がごちそうさまなんだろう?まだ残ってるよ、母さん。







なんていう夢を見て目を覚ました。
かなり懐かしい夢だ。


そして、何でそんな夢を見たのか分かったよ。
横でオレを覗き込むリボーンの手には夢で見たはちみつトーストが。


「今、起こそうかと思ってたんだが…。」

呆れ顔のリボーンに、喰い意地の汚さを見透かされたようで恥ずかしくなる。
でも、いい匂い。
そう言えば、朝食を食べる前にコンビニへ言ってそれから2度寝しちゃったんだっけ?

「食べたいか?ツナ。」

「うん!」

二日酔いも大分治まってきたようで、食欲も戻っていた。
ベッドからリボーンを見上げると、蕩けそうな笑顔で言われた。


「キス一つで、一口づつ食べさせてやる。」

「んなっ?!」

なんてこと言うんだ!もう!

でも、嫌な訳じゃない。恥ずかしいだけで。
今はオレとリボーンの2人きり。誰も見ていない。
オレはむくりと起き上がるとリボーンの横にぴったりとくっつく。

段々と顔に熱が集まるのを感じたが、ままよ!とリボーンの口めがけて口付けた。
冷たくみえる唇は、けれども温かくて柔らかかった。
すぐに離すと、あーんと口を開ける。

リボーンはと言うと、目を見開いてオレを眺めると口にトーストを入れながら呟いた。

「頬にして貰うつもりだったんだが、積極的になったなツナ。」

「んぶっ。(ゴホゴホ)…ちがっ!」

違わないけど。だってリボーンとこういう時間を持つのは久しぶりだし。
…恥ずかしいけど、リボーンとそういうことしたいし。


どうにか咀嚼すると、もう一度唇に向かってちゅっと。
今度はリボーンからも口付ける。

「甘いな…昔と同じだ。」

覚えてたんだ。びっくりしていれば、また口にちぎったトーストを入れられる。
もぐもぐと口に含んでいると、唇をぺろりと舐められた。

「ん?付いてた?」

「いや、おいしそうだったからな。」

「ふ〜ん?あ…指。」

トーストをちぎったリボーンの指にはちみつが垂れていて、思わずパクっと口に入れる。
甘くてちゅうちゅう吸い付いていると、コテンとベッドに転がされた。
仰向けで口に指を入れたまま、その指が口の中の上顎や歯茎、舌をゆっくり触っていく。


上を覗けば楽しそうな顔。
唇から指が離れて、すぐに唇で塞がれた。

いいんだけど…アイスが溶けちゃう。

でも今更やめてはないよね。

土曜の朝のはちみつトーストからはじまる、甘い時間。









ひよこ屋さまより『朝』のお題を拝借しました










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