リボツナ2 | ナノ



おひさまおはよう




カーテン越しの柔らかい朝日が部屋をゆっくりと染めていく。

抱き込まれる暖かさと、身体に巻きつく重さに、沈んでいた意識が徐々に浮上してくる。
重い瞼を上げればぼやける視界の先には肌色と漆黒。

ぼんやりと視線を廻らせて天井の色と高さに違和感が。
もう一度、横の暖かさに首を捻れば見知った顔。

「よく寝れたか?」

「…うー何でこんなにはっきりしないんだろ?」

横にいたリボーンもオレもパジャマ姿だし、どこも違和感がないからした訳じゃなさそうなのに。
肩を竦めたリボーンが起き上がると、手を差し伸べて起こしてくれる。
ミネラルウォーターを寄越され、ぐいっと煽る。

…妙にうまい。

「ゆうべの記憶が途中から途切れてるんだけど…。」

「どこまである?」

「…夕飯こっちでオレが作ったよな?それからジュースを飲んで…ジュース?」

冷蔵庫で見つけた桃のジュース。コンビニでも見たことのない、果汁50%とか書いてあったそれはとても甘くておいしかった。

だが。

それを飲み始めたあたりから記憶が飛んでいる。あれは本当にジュースだったのか?

「ツナが飲んでたのはジュースじゃねぇぞ。アルコールだ。」

つらっと言われた。

「んなー!?なんてもん冷蔵庫に入れとくんだ…オレ飲んじゃったよ!」

「死にゃしねぇから安心しろ。」

死なないが、日本では未成年の飲酒は認められていない。
しかも身体がだるい。

「…お前があんな甘いもの飲む訳ないよな?オレに飲ませようと思って置いといたんじゃないのか?!」

2人でよく、深夜のコンビニに行く。ジュースを選んでいると、横でリボーンがこんな甘ぇのなんざ飲めるか。と嫌そうに顔をしかめていたとこを思い出した。その時持っていた缶は桃色じゃなかっただろうか。

「たまたまだ。」

絶対、嘘だ。
だけど…身体がだるい理由は分かった。外を照らすおひさまが眩しい訳も。

これが二日酔いか。

顔を顰めてもう一度枕に沈むと、額を撫でられた。
少し冷たい体温が気持ちいい。

目を瞑って手の平の感触にまどろんでいると、悪戯な指が唇を行ったり来たりする。
がぶりと噛んで悪戯を止めると、もう片方の手が耳をくすぐる。
くすぐったさに笑い出した。

そんなオレに珍しく優しい声が掛かる。

「何か喰いたいもんあるか?」

「んー…バニラアイス!」

怒られるかな?と覗き込むと、声と同じくらい優しい顔にぶつかった。

「ちっ…しょうがない。コンビニに行ってくるか。」

「待って!オレも行く。」

慌てて起き上がると、くらり…とした。
うおっ、目の前がチカチカする。

頭を抱えて、でも手は離さずに服を握り締めているとまた冷たい手が頬を撫でる。
首にしがみ付くと、抱え上げられた。

「家光が強いから、ここまでお前が弱いとは思わなかった…悪かったな。」

「別に…オレ初めてだったから、大人になれば普通になるよ。多分…」

母さんは飲めない体質みたいだけど。

抱え上げられたまま、どこに連れていかれるのかと思えば階下の居間のソファの上に置かれた。
それでも首に巻きついたままの腕を外さないでいると、困ったような顔にぶつかる。
でも、離してやらない。

くすくす笑っていると、唇を唇で塞がれた。ちゅっと吸われて慌てて顎を引くとその分追ってきてもっと深くなる。
首に回した腕に力が入らないでだらんと垂れるけれど、逆にオレの頭に回された手にしっかりと抱えられ。もう片方の腕は背中を抱いているので身体は密着状態だ。

やっと唇を離された時には身体に力が入らず、ソファに転がされた。
ポフポフと頭を撫でられると、身体が離れていく。寂しい。

「ちょっと待ってろ、二日酔いに効くヤツを持ってくるだけだからな。」

恨みがましい顔をしていたのだろうか、一々ことわるとリボーンはキッチンに姿を消した。
何だか優しい…ひょっとしてどこか悪いんじゃ…。

気になりだすといても立ってもいられず、起き上がってこっそりキッチンを覗き込む。

…後ろ姿からもご機嫌なリボーンが見えるだけだ。
ううん?

出来上がったらしいマグカップを手にして、くるりとこちらを振り返った。
別に疚しいところなどないのに、何故かぎくりとして顔を半分だけ扉に隠してみた。

「丁度いい、こっちにきて飲めよ。奈々に教わったヤツだから飲めるだろ。」

マグカップからは白い湯気がほこほこと立っている。
でも匂いがあれだ、梅干っぽい。
食べられない訳じゃないんだけど、そのまま食べることは好きじゃない。潰したヤツを飲めとかじゃないよな?

それでもキッチンの椅子に座ると、マグカップを受け取る。
意を決して口に含めば、想像よりは柔らかい酸っぱさだった。
飲み切ると酸っぱさのせいか、暖かい飲み物のせいか、少しだけ頭痛が和らいだ。

リボーンはといえば、オレが飲んでいる間中ずっと目を離さず見守っていた。
その優しい視線にこそばゆくなる。

「今日は優しいね。」

「いつも優しいだろうが。…それにツナにはそっちの方がきくからな。」

きく?何にだろうか。

ぼんやりとしていると、また頭を撫でられて腕に抱き上げられた。
いつもなら歩けるから下ろしてと言ってるのに、今日は言う気になれなかった。
こんな優しいリボーンをもう少し堪能したいから。

「着替えてコンビニ行くんだろ?」

「うん!」

まさか、コンビニまで抱き上げて行こうとしてるなんて思ってなかったけど。









ひよこ屋さまより『朝』のお題を拝借しています










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