リボツナ2 | ナノ



17.




押さえつけられたままの肩と、開かない口と。
どうすればいいのか分からなくて固まっていると、またコロネロの顔が落ちてきた。
怖くてぎゅっ…と目を瞑れば、それ以上は近付いてこないから、そっと目を開けた。

「てめぇら、何してやがる。」

低く、唸るような声。
いつの間に入っていきていたのか、リボーンがコロネロの肩を掴んでオレの上から離してくれた。
ほっと小さく息を吐くと、リボーンがこちらを見ていた。その視線にまた動けなくなる。

オレはリボーンから視線を外す。見られないのは好きな証拠か?違うよ、ただ意識しちゃうだけ。あんなこと山本に言われて、どうしていいか分からないだけ。

「一々てめーに言う必要があんのか?」

オレの上からは退いたけど、横に腰掛けたコロネロが挑発的に切り返す。
するといつもは余裕のリボーンがすごい殺気を放ってコロネロを睨む。互いに視線を逸らさず睨み合うと、部屋から出て行ってしまった。

「助かった…かな?」

でもそれは、目先のことだけだ。山本のこともコロネロのことも、リボーンのことさえ解決していない。
まさかコロネロまでオレなんかを好きなんて…って、

「オレのファーストキス!」

あああぁぁぁっ!!されちゃったよ!男が初めてってどうよ!

あまりのことに頭の回線が焼き切れてしまったようだ。まともな思考にならない。
益々パニックになったオレは、そのまま寝てしまったようで翌朝まで起きることはなかった。










翌朝、珍しく早く目が覚めた。まだ薄暗い空をカーテンの隙間から覗く。
曰くつきの目覚ましを見ればまだ5時だ。

もそもそと着替えを済ませ、顔を洗うとキッチンで水を飲もうと足を踏み入れる。
そこにはリボーンとコロネロが寝ていた。
モダンなキッチンの一角に互いに背を向けた格好で椅子に凭れかかっている。
周りには酒瓶が一杯だ。ダメな大人の見本である父さんとあまり変わりがない姿の筈なのに、見た目がいいせいでよれたシャツ姿さえもかっこいい。…かっこいい?

「いやいやいや!そんな馬鹿な!」

自分に突っ込みを入れていたら、リボーンが気付いてしまったようだ。
身動ぎするリボーンを尻目に慌ててキッチンから出ると、洗面所に駆け込んだ。

何してるんだ、オレ。

ほうっとため息をつく。
凭れかかった洗面所の扉が思いの外冷たくて、身体が火照っていることに気付かされた。

「うわぁぁぁ…最悪っ!」

これからどうすればいいのか。顔を合わせたらバレそうな気がする。
バレたらからかわれるか、距離を取られるかだろうし。
それでもドキドキが治まらない。

「こんなの要らないよっ。」

身体を抱きしめて縮こまっていると、扉をガツン!と蹴る音が聞こえた。

「ダメツナ、出てきやがれ!」

すごーく不機嫌な声のオレ様が扉の向こうで怒鳴っている。
昨日からずっとリボーンと話をしていない。
色々あったけど、それを無視したのは自分だ。怒っているのは当然だと思うけれども。

かけられた声にびくりと肩を震わせ、余計に動けない。
そうこうしている内に、勝手に開けると中に入ってきた。

「ひっ…!」

視界に入った途端、気持ちを知られたくない一心でリボーンの足元から扉の外に飛び出て行った。
鞄も持たず、つっかけで隣の自宅に転がり込む。

思いの外大きい音で閉まった玄関扉。起こしてしまったかとびくびくしていると、既に起きていた母さんがいつもの呑気な様子で声を掛ける。

「あらー今日は早起きね。」

ご飯はもう少し待っててね、と洗濯をしに行ってしまう。
キッチンに入るとビアンキさんまで起きていた。

「おはよう、ツナ。リボーンはまだ寝ているのかしら?」

ビアンキさんからアイツの名前を聞いて、びくつきそうになったがどうにか堪えた。

「さっき起きたみたい。夕べはコロネロと酒飲んでたみたいだよ。」

あの流れで何で酒を飲むことになったのかが不思議でならないけど。
まあ殴り合いや撃ち合いにならなくて何よりだ。

「そう。それなら後で会えるわね。」

うふふっと微笑むビアンキさんは綺麗だけど可愛い。こんな人が好きでいてくれて、他にもいっぱいそんな人がいるんだろうリボーンに何を言える?
しかも小さい頃からよく知る相手にそんなこと思われてたら、オレならひいちゃうね。

早くビアンキさんとくっついちゃえばいいのに。
そうすれば諦められる。

息をする度に苦しくなる。キラキラしているビアンキさんに笑いかけて、でも段々情けない顔になってきた。
それに気付いたビアンキさんがオレに声を掛けようと手を伸ばす。
その白い繊細な手を見ているのも辛くって、椅子を引いて立ち上がった。

「お茶煎れるね!」

「え、ええ。」

少し不審げだけれど、気にはすまい。オレは想い人の幼馴染みだ。今はそれに生徒という名前も付いている。どちらにしろ世話をして貰っているのが情けない。

そんなことを考えていても、お茶を煎れる手は淀みない。
ほっこりと暖かなお茶は、秋の朝の寒さに少し冷えてしまった身体を癒す。

6時になり、リボーンとコロネロも来て朝食を取った。コロネロと顔を合わせるのが気まずいが、隣のリボーンよりマシだ。

いつものようにビアンキがリボーンの給仕をして、それは当たり前のことなのに見ているのも辛くなってきた。
半分食べたところで、箸を置くと母さんに謝ってから席を立つ。

履いてきたつっかけでカランカランと隣に鞄を取りに行くと、後ろからコロネロが追いかけてきた。

「コロネロ?」

「ツナ!…昨日はいきなりで悪かった。」

アルコールは抜けているらしいコロネロがきちんと謝ってきた。それじゃあアレはなかったことにしてもいいのかな?

「だが、お前が好きなのは本当だ。」

「うっ…趣味悪いよ、もっと綺麗な女の人とかより取り見取りだろ。」

「それでもお前がいい。」

熱っぽい視線で口説かれる。
朝の清々しい空気の中で、段々と熱気を帯びる雰囲気に慣れないオレはどう言っていいのかさえ分からない。
視線を彷徨わせていると、肩を抱きしめられる。押しても引いても逃げられない腕の中でどうにも出来ずに強張るだけだ。

耳元に低く囁かれる。

「あんなヤツ止めとけ。オレがいいぜ!」

囁きに震える耳が熱を持ってきて困る。
何だこれ?これが大人ってヤツか??

「ちょっと!やめてくれって!」

顔を押えて遠くに離す。耳はやめて欲しい。ゾクゾクした。

「何してやがる。」

昨日といい、今日といい、すごくイイタイミングだ。ある意味最悪とも言う。
リボーンがコロネロからオレを引き剥がすと腕の中に抱き込んだ。

途端に顔に熱が集まり、心臓はマラソン後みたいに早くなる。ドキン、ドキンと鼓動が痛くて足の力が抜けていく。へたりと座ってしまったオレは、何が何だか分からない。

「どうした、ツナ?」

何気なく覗き込まれるだけで、知れそうな想いにぎゅっと胸を掴む。

「何でもない!」

慌てて立ち上がるとリボーンの肩にひょいと担がれた。背の高いこいつに担がれるとかなりの高さで、しかも俵担ぎなので鳩尾に圧迫感を覚える。苦しい。

「昨日の勝負に勝ったのはオレだ。今日一日はツナに近寄るんじゃねぇぞ。」

言い捨てるとオレを担いだまま、リボーンの家に連れ込まれた。
玄関でつっかけは落としてきたが、そのままで居間のソファまでくるとドスンと落とされ両手を一纏めにされて、足の間に身体を捻じ込まれる。

「ちょっ…!これ何?!」

あまりの体勢にオレはびびった。何をされるのか。

「さぁ、カテキョーの時間だ。正直に言えば痛いことはしねぇ。しっかり吐けよ?」

ニヤリ、といつもの10倍は黒い笑顔で言われた。

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