15.「今日部活ないからツナと遊びたいのな。」 といつもの爽やかな笑顔で親友に言われ、嬉しくないヤツがいるだろうか? しかも部活が野球部なので中々遊ぶ機会がないの親友と久しぶりに遊べるというのに。 勿論オレは嬉しくって、二つ返事で約束と取り付けたさ。 山本はダメツナをダメとは言わない。ありのままを受け止めてくれるヤツなんだ。 前に「好きだぜ、ツナ!」とわざわざ口に出してまで友達宣言してくれたこともある。 ウキウキと山本を伴って家路に着く。手にはコンビニで調達したお菓子たち。ゲームして、菓子喰って、宿題は…カテキョー様に見てもらって、と楽しく居候先へと辿り着いた。 「ただいま〜!リボーン、友達連れてきたー!」 玄関を開けるとリボーンがビアンキさんを張り付かせていた。何で玄関先なの! 開けたまま固まっていると、後ろの山本が不思議そうに声を掛けてきてやっと解凍された。 ちょっとまっててと手で押し止めると、慌ててリボーンのシャツを掴み耳元に小声で怒鳴る。 「ちょっと!そういうことは家の中でやれよ!」 「悪いな、ビアンキ。ツナの友達が来てるらしいんだ。離れてくれ。」 ツナの方を見ずにビアンキと距離を置こうとするが、離れない。 「ビアンキさん、友達来てるんです!場所を変えて下さい。」 それでもひしっとしがみ付くビアンキさんに言葉もない。もーいいや。玄関広いからちょっと目を瞑って貰おう。 後ろを振り返ると山本がこちらを気にした様子で見ていた。 「…ごめん。ちょっとバカップルが居るけど、見ないようにして上がってくれる?」 「お、おー?んじゃ、おじゃましま…」 玄関先での抱擁シーンだもんな、見せ付けられて言葉もないよね。 っとに、あっちの国の人達って激しいなぁ。しかも何かムカムカする。 「ほら、行こう!」 極力視界に入れないように、山本の手を引くと階段をかけていった。 軽く握った筈の手が握り返されていたのは、あれだ。きっと縋るもののないところに手を出されたからだ。 せっかく山本が遊びに来てくれたのに、何故だか全然面白くなかった。 ゲームをしても上の空で負けてばかりのオレに苦笑いして、ちょっと外に出ないかと連れ出された。 少し歩くと公園に着いて、2人でブランコに乗る。人気のない公園で中学生が2人でいるのもおかしいかな。 さすがに子供用なので足を曲げなければ乗れなくなっていたブランコをギーコギーコと揺らしていた。 家を出たことで少し気分が晴れた。 あのバカップルのことを気にしなくていいからかも。かも、じゃない。そうなんだろう。 はぁ…とため息が出た。 「ツナ、あの人のこと気になるのか?」 「うっ!…うん。」 「…あの美人な人がツナのおふくろさんの生徒か?」 「そう、リボーンを追っかけてイタリアから来たんだって。で、よく分かんないけどオレと料理勝負になって、オレ勝っちゃって…そしたら何故か家に居つかれてるっつーか。」 「すげぇな!イタリアからかー。それじゃあリボーンさんに美味しい料理を食べさせたくて習ってるんだな!」 ニカって笑ってるけど、目が笑ってないよ。しかもなんで確認させるの。 言葉もなくて黙っていると、顔を覗き込まれた。 「ツナ、あの人のこと好きなのか?」 どきんとした。顔は赤くなるし、胸はドキドキと鼓動を刻む。ありえないと思っても、よく考えてみれば、このムカムカとかイライラはそれに近いのかもしれない。 「……好きな人いるじゃん。…オレ敵わないし。」 恥ずかしさに顔を上げられずに言う。 すると肩を掴まれて顎を摘まれた。意外なことに真剣な顔をしている。 「相手に好きなヤツが居たら諦めるのか?」 「普通諦めない?」 「オレは諦めねーな。」 「ふーん。」 いいなぁ、かっこいいヤツはそれでも決まるから。オレじゃあカッコつかないや。 「でもさ、わざわざイタリアから追っかけてくる程好きな相手なんだよ?オレ、アイツみたいにかっこよくないし、ムリ。」 そうオレが言うと、山本は目を見開き口はぽかんと開けたまま顔が引き攣った。 「ツナ…誰のこと言ってる?」 「イチイチ聞くなよ…ビアンキさんだよ。」 耳に口を寄せて呟くと、今度ははぁ…とため息をつかれた。 何で?!何か疲れてる風だ。 「それ違うと思うぜ。」 「えええぇ?!何が違うの?」 そうでなければ他には居ない。リボーンは男だし幼馴染みだから、そういう意味での好きとは違うし。違うよな? 「コロネロさんだっけ?そっちに彼女はいねーの?」 「見たことない。」 「そんじゃ、もし居たとしてああいうシーンを見たらどう思う?」 「んー…羨ましい、かも。」 オレも彼女欲しいし。綺麗なビアンキさんは目の保養だ。 だからリボーンとくっついているのを見るとムカムカするんだよな。 「…ビアンキさんに抱きつかれたらどうする?」 「うえええぇ?!いや、それは…想像つかないや。」 ビアンキさんはリボーン一筋だ。他の人に抱き付くなんてありえない。 そう言えば苦笑いを返された。 大きくブランコを漕いだ山本が高く飛び上がる。…!おおー!綺麗に着地した。やっぱ運動神経のいいヤツは何やらせても決まるな。 「ツナ、考えが逸れてるだろ?…あと、ツナの好きなのはビアンキさんじゃねーと思うぜ。」 「…いやいやいや!ありえないから!」 「ついでにオレのツナへの好きはソレと一緒だからなー。」 じゃな!と鞄を背に帰ってしまった。 オレは呆然とそれを見送るだけ。 …つーか、あれ?オレ山本に告白された?しかもオレの好きなのがリボーンだって誤解されたまま? 「マジ、ありえねー…。」 両手で顔を覆うが、顔に集まった熱は中々引きそうになかった。 . |