リボツナ2 | ナノ



14.




ソレを忘れたことに気付いたのは早弁派の山本が2個目の弁当を手にして「今日は屋上でメシ喰おうな!」と授業中にもかかわらずニカっと笑いかけられた時だった。

分かったよ!と言いかけて、弁当がある筈の鞄を漁って焦った。
ない。
ある筈の弁当がない!

昨日から寝るところと食べるところが別になったせいで、バタバタとしていて持ってくるのをすっかり忘れていた。

「やっべー…。」

男子中学生にとって、弁当の有無は重要だ。ただでさえ発育不全(リボーン談)なのに、これ以上伸びなかったら忘れた弁当を食べなかったせいだ。

などと固まっている綱吉を置いて、授業は終わってしまった。
昼休みの喧騒をよそに、黄昏る綱吉。だってパンを買いに行こうにも、財布の中は100円すらない。
ダラダラと汗を垂らしていると声が掛かった。

「沢田く〜ん。お呼びよ〜!」

クラスの女子の筈だ。しかし、こんな甘い黄色い声聞いたことがない。何かの間違いかと首を呼ばれた方に向けるとすぐに逃げ出したくなった。
…しかしながら逃げ出す訳にはいかないので、速攻でそちらに向かい、自分を呼び出した2人の首根っこ、は掴めないので腕を取って人気のない教室に入る。

「奈々に頼まれたからな、持ってきてやったぞ。」

埃っぽい教室ですら、ステージのような華やかさにしてしまうリボーンがニヤリと笑う。
絶対分かってた来た!この後の女子の質問攻めを思って泣けてくる。

「ありがたいけど!ありがたいけど、なんでわざわざ教室まで来たの?!」

「着いたらもう昼休みの時間だったからだ、コラ!」

リボーンと違う男らしい美形のコロネロも、しっかり女子のチェックが入っていたことだろう。
プロフィールを2人分答えるのか…虚しい。

「しかも何で2人で来るの!」

「ああ、オレだけで充分だったよな。コロネロは勝手に付いてきたんだ。」

「てめぇだけで行かせるとツナに何するか分からねーからな。」

「うるせぇぞ。オレはツナに悪い虫が付いてねぇか覗きにきたんだぞ。」

悪い虫?
それは年頃の女の子にお父さんが言う言葉じゃないだろうか。カテキョーしてるから父性まで目覚めてしまったとか?

ないないない!
ありえないことを想像して首を横に振る。

「大体の目星は着いたからな。来てよかったぞ。」

黒い嗤いを浮かべたリボーンにぞくりとした。
ろくでもねーこと考えてる!
ともかくお帰り願わねば!!

「もういいんだろ!?帰れよ!」

手間賃だと2人に今日の夕食を作る約束をさせられて、泣く泣く承諾してお引取り願った。
廊下に出た途端、女子のキャー!という黄色い声に眩暈がした。
ああぁ…あいつ等の通っている廊下の位置が声の遠近で分かるよ。すごいよ。嫌すぎる!

勿論、女子に捕まる前に逃げたとも。






今日はあいつ等のせいで女子に引っ掻きまわされ、逃げても逃げても追ってくる女子をどうにか撒いて人気のない屋上へと足を向けた。

「疲れた〜!」

「災難だったな、ツナ!」

やっと山本と会えたよ。撒いてきたから来ないと思うけど、じゃないと女子に質問攻めにされておちおち昼飯も食べられない有様だ。

「うん…ムダに顔がいい幼馴染みって迷惑だ。もう来るなって絶対言ってやる!!」

拳を握り締めていると、まぁまぁ!と爽やかな笑顔で窘められた。
山本の横に座ると、胡坐をかく。待っていてくれたらしく、手には手付かずの弁当が。
一言いっていけばよかった。

「でも、弁当届けてくれたんだろ?よかったよな!」

「それはね。できれば用務員のおじさんに預けて欲しかったけど。」

今更言っても仕方ないけど、昼休みが終わったら授業中とか放課後とか絶対に女子に離して貰えないよ〜!しかも何でリボーンとコロネロの2人で来んの!どっちか一人だったらよかったのに…か、どうかは…どっちが来ても同じだったか、うん。諦めた。

「あれが噂の幼馴染みかー。かっけーのな!」

「見た目はね。コロネロはともかく、リボーンは中身は最悪だよ。」

持ってきて貰った弁当を突きならが答える。
何に興味があるのか、山本はまた訊ねた。

「んで、どっちがリボーンさんだったんだ?」

「真っ黒い方。ったく、毎日顔つき合わせてるのに何で態々持って来るんだろ…お前の顔は猥褻物だから来るなっての。」

「…成程ね。」

小さく呟いた声に顔を上げれば、何やら山本からも黒いモノが出ているような?

「ゴメっ!ひょっとしてリボーンが何かやらかした?」

「いや!何でもないぜ、ツナ!」

ニカっと笑う顔はいつもの爽やかな笑顔だ。先ほどの黒い何かは幻覚だろうか。
まぁいいや。


「まだカテキョーして貰ってるのか?」

「うん。どころか、昨日からリボーンちに二人で追い出されちゃったんだよ。母さんが余計なことするから…って、あれ?山本??」

弁当が喉につかえたらしい山本が悶絶している。

「ぶはっ…!」

ゲホゲホと噎せる山本の背中を擦ってやると、涙目になった顔がこちらを向く。

「ゲホっ!…ツナ、それオレ聞いてない。どうしてそんなことになったんだ?」

噎せながら聞くほどのことじゃない。
まぁ変わっているのはいつものことだけどさ。

「う〜ん。話せば長くなるから掻い摘んででいいよな。今イタリアから母さんの料理を習いにホームステイしてる女の人がいるんだ。どうだろ20歳くらい?の人。オレもリボーンも男だから一緒に住むのはよくないって、追い出されちゃったんだ。で、リボーンの家に居候してるって訳。」

「ツナ…!」

「な、何?」

妙に真剣な顔で迫ってきた。

「何にもされてないよな?」

「何にもって、蹴られたり叩かれたりはしてるよ。」

あいつ手が早いから。と言うと仰け反ってすぐに戻ってきた。
今度はがしり!と肩を掴まれる。握力あるから痛いんですけど、山本さん。

「手は早いってナニされた?!」

「ナニって?だから蹴られたり、叩かれたり。」

やっと掴まれた肩を離してくれた。肩で息を吐いている。それにしても野球少年だけあるわ、痛てーよ。

「…オレも遊びに行ってもいいか?」

「来てよ。新しいゲーム買ったんだ。まだ始めの方だけど、面白いよ。」

最近野球が忙しくて中々遊んで貰えなかったけど、山本と遊べるのは嬉しい。
にへっと笑うと、ニカっと笑い返された。うん、いいヤツだ。

「今日、部活が休みなんだ。遊ぼうぜ。」

「ん、いいよ。」

そんな具合で約束を取り付けた。
リボーンとゲームするといつもボコられるけど、山本とはいい勝負なんだよな。
っと、そう言えばリボーンと山本って面識なかったっけ?
…ないな。まぁいいか。友達にまで口出しはしないだろ。

と呑気に思っていたオレの馬鹿!馬鹿、馬鹿!!


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