13.夕食が終わり、そのまま自宅の居間で今日の宿題を見て貰っている。 今日は英語の英文を訳してくることだったのだが、オレはさっぱり分からない。 「てめぇは日本語ですらさっぱりだもんな。」 「ヒデーよ!日本語は普通だろ!」 堪能とは言えないかもしれないけど。ぶーぶーと怒っていると、ビアンキさんがぬるい目でこちらを見ていた。何故だかリボーンに同情しているような。それって失礼だな! 「理解力が欠けてるぞ。」 「んなことあるか!」 日本人なんだから普通なんだよ。 「英語とイタリア語はねっちょり教えてやるぞ。」 「英語はともかく、イタリア語はオレには必要ないけど?」 ほらな。って言わんばかりの顔すんな。どうしてお前の母国語まで教わらないといけないんだ。…しかも絶対ムリだし。 「家光も奈々も喋れるぞ。」 「えっ!そうなの?」 それは知らなかった。父さんはイタリアでリボーンのお父さんとお母さんと一緒に働いているらしい。でもオレの母さんはずっと日本だったと思っていたいたのでびっくりだ。 「へー。」 でもそれって関係ないよね?オレはずっと日本で暮らすし。イタリアなんて行かないよ。行く必要もない。 イチイチ構うのもアホらしいので、さっぱり分からない英単語を辞書で引いてみる。う〜ん。 「…ガキだとは思っていたが警戒心はねぇわ、あれだけ言っても気付かねぇわ…ツナ、服を買ってやった意味は分かるか?」 「う〜ん?連れて歩くのにみっともなかったからかと思ってたんだけど、違うの?あれだけってどれのこと?お前に警戒はいつもしてるだろ!虐めっ子に無防備にはしてないつもりだ。」 ぷうと頬を膨らませて言うと、両手でぱちんと頬を挟まれた。地味に痛い。 「やっぱりてめぇは理解力がねぇ…壊滅的なレベルだ。」 視線を落として宿題を見ながら言うな! 嫌味なヤツだな。そんなこと言われなくてもわかってるよ!本当に英語って苦手だ。さっぱり分かんねー。 どうにか宿題を終えて、リボーンの家に戻る。 もう真っ暗で、暗闇に星や月が瞬いている。星座を眺めるような教養もないので、あー綺麗だなー…今年の十五夜いつだっけ?なんて思ってリボーンの後ろをてくてく付いて歩く。 なんか、リボーンがこっちに帰る時間になる頃から大人しいんだけど、腹でもくだしたのかな?すごい不気味だ。 すぐに玄関先まで付いて、ガチャリと鍵を開ける音が響く。 すると斜め前の家からコロネロが顔を出して声を掛けてきた。 「ツナ!一緒に泊まってやるぞコラ!」 声でかいよ。近所迷惑になるって! 「えええっ?!いいよ。オレもう中学生だよ!それにリボーンがいるし、大丈夫だよ!」 「それが大丈夫じゃねーから言ってんだろうが!」 「んん?どうして?何か悪いの?」 最後の問いかけは、珍しくコロネロに反論しないリボーンに訊ねる。 だからてめぇは…とか何とか言ってるけど、何がいけないんだ。今までだって同じ家に居候してたんだし、オレと一緒に住みたくないって訳じゃないと思うんだ。 それなら、こいつはカテキョーなんてこと態々しない。それくらいは分かるんだけど、何だかコロネロの言っている意味とオレの考えていることが喰い違っているみたいだ。 微妙な言い回しのリボーンってのも変だ。 「ガキは相手にしねぇから、泊まりに来るんじゃねぇぞ。」 コロネロに向って言ったが、ガキってオレのことだよね?本当に失礼だな〜。 でもここで言い合うのは不味い。煩いしね。 「よく分かんないけど、また明日ね!コロネロ。」 「何かあったら叫べよ。すぐに飛んで行ってやるぜ!」 意味分かんないけどおざなりに手を振って、リボーンの背を掴んで家の中に入る。しっかり閉まったことを確認してから鍵をかけた。 他人の家の臭いに少し寂しくなったけど、こいつがいるからいいや。 へばり付いた背中から手を離すとやっとこっちを向いてくれた。 「風呂入ってこい。」 「えー。まだいいよ。それよりゲーム進めないと。」 今面白いところなのだ。少しでも進めたい。しかしオレをよく知る幼馴染みは許してくれなかった。 そのまま2階に上がると各々の部屋の前で止まる。オレは何と言われようとゲームするよ。っていうのが透けて見えたらしい。 「あと5分で入っていかなかったら服のまま突っ込んでやるぞ。」 いつものニヤリ嗤いが出た。これが出ると問答無用で虐められるから、反射的に言うことを聞いてしまう。勿論、即座に風呂場に直行だ。 風呂なんか一日入らなくても死なないっての! オレの小さい呟きが、耳に入ったらしいリボーンに聞き咎められた。 「何なら一緒に入って洗ってやろうか?」 「いらんわ!」 クツクツと後ろから笑い声が漏れてきた。それは育ってからのお楽しみだ。とか言ってるけど、もう充分育ってるっつーの!ああ、クソ。身長はもう少ししたらぐーんと伸びるんだ。父さんはでかいし。母さんに瓜二つってよく言われるけど、きっと。 こうして奇妙な同居生活が始まった。 . |