リボツナ2 | ナノ



11.




しゃがみ込んだオレの横まで歩いてくると、抱えていた腕の中からイチゴミルクを取り出して投げて寄越した。
とっさに両手で抱え、どうにか取りこぼさずに済む。
ピンク色のそれを手にして確認するとイチゴミルクと書いてあった。今一番ハマっている購買の飲み物だ。たまたまとはいえ嬉しい。

「ありがとうございます。」

「ん、いいよ。…スカルが君んとこに持ってくところだったのを奪ってきただけだから。」

「素直にお礼し辛くなりました…」

と、いうかこの人たちはどこまでオレのことを知っているんだろう?まさか遅刻してきたところまで知ってるんじゃないよな。
ブリックパックにストローを差して口を付けると、果汁も入っていないくせにイチゴの香りが広がった。今まではそれが美味しく感じたのに、今日に限ってその香りがくどい。

床にぺたりと足を伸ばしながら飲んでいると、マーモンさんも同じように横にしゃがみ込んできた。
身長はオレより高いのに、座ると目線が変わりないってどういうこと。
足の長さを比べていると、隣から声が掛かる。

「それで?ユニと付き合うことになってリボーンとでも喧嘩したの?」

「…なんで知ってるんですか…?」

「さっき君にそれを持っていってやろうと探してたら、保健室に向かうのが見えてね。そのまま付いていっただけだよ。」

「…」

それじゃ一連の行動は全部見られていたという訳か。
視線を上げられずにイチゴミルクをすすっていると、マーモンさんが肩を竦めた。

「朝から珍しくイラついていたかと思えば、そういうこと…よりにもよって相手があのユニじゃね。」

「…でも、ユニさんとはそういう意味で付き合っているんじゃないですよ。」

非難するような言い方に、つい反論してしまう。それも分かっていたのかフフンと笑って長い足を組んだ。

「それも分からないくらい焦ってるってことでしょ?意味分かる?」

「…分かってます。」

それくらいユニさんが大事だということくらい。
ついでに自分の気持ちも昨日分かったばかりだ。同じ家に住んでいる家族をそういう意味で好きになったなんて知りたくなかった。
膝を抱えその上にパックを乗せると、倒れないようにバランスを取る。
無意味なことでもして気を紛らわせないとこの人に色々バレてしまそうで怖い。

「無自覚天然と周りが見え過ぎて自分が見えなくなってるバカか…傍で見てる分には面白いよ、君たち。」

「…誉めてないですよね?」

「それ誉められてるって感じたなら君の感性はすごいね。」

この人かなりの毒舌だ。段々ヘコんできた。
マーモンさんに背中を向けて飲み切る。くどい甘さが胃にもたれ、眉根を寄せてゴミ箱を睨んでいると手からパックを取り上げられた。
ぎゅっと小さく纏めたそれが綺麗な放物線を描いてゴミ箱へと吸い込まれていく。

「ユニをどうにかして欲しければお弁当で手を打ってあげる。言っとくけど君が作ったヤツだからね。」

何気なく言われて、ふと疑問が湧いた。

「…どうしてオレが作れるって知ってるんですか?」

ズボンについた埃を払って立ち上がるマーモンさんの背中に声を掛けると、こちらを振り返らずに呟いた。

「リボーンがね、最近夕飯時は何があっても出てこないから聞いたんだ。そうしたらあいつ何て言ったと思う?『ツナのメシ以外は食う気がしねぇ』ってさ。ホント、弟バカだよね…」

マーモンさんが後ろを向いていなくてよかった。嬉しさに赤くなる顔なんで見られたらバレちゃうよ。
バイバイと手を振って出ていったマーモンさんに声が掛けられずに、ただ見送った。





考えて、考えて。やっぱりユニさんに振って貰うのが一番穏便に済むんじゃないのかという結論に達した。
…っといっても、別にお互い好きで付き合っている訳でもないし、振るとか振らないとかとは違うと思うんだけど言葉尻を捉えるとすればそれが一番しっくりくる。

昼休みから午後の授業を全部潰してまで考えた結果、メールでお願いするのも失礼だろうと空いている日に会いましょうとメールをした。
まだ授業中だったにも拘わらずすぐに返事が返ってきて、今日はあのメンバーで家に集まる日だから明日の放課後にしましょうという内容だった。

そう言われてみれば、あのメンバーが集まる日だった。何をしているのかは分からないけど、何かを話し合っていて場合によっては深夜までいることもある。
リボーンの夕飯はそのままでいつも置いておくのだが、今日は差し入れでもしてみようか。
…いや、だってスカルさんからイチゴミルク貰っちゃったし!マーモンさんもユニさんも一度食べてみたいって言ってたし!

などといい訳をしながら近所のスーパーに立ち寄った。
簡単なのでいいだろうか。話しながらつまめるようにサンドイッチにしようか…とパンのところで悩んでいると見覚えのある金髪がそこにあったカレーパンやソーセージパンをすべて手に抱えているところだった。

「…あの、コロネロさん?」

「ああ?…何だツナじゃねーか、コラ。」

見た目だけは金髪碧眼の美男子が、こんなところでパンの山を抱えているのってミスマッチすぎる。
こちらに近付いてきたコロネロさんはいかにも鍛えてます!といった体躯をしていて、目の前にこられると背の高さもあって威圧感がある。
背が低くていくら食べても肉にならない貧弱な身体しか持ち合わせていないオレのコンプレックスを刺激しまくりだ。

「今から家に来るんですよね?」

「そうだ。」

「…たまにはみんなに差し入れでもと思って、サンドイッチ作ろうと思ってたんですけど…これじゃ足りなそうですね。」

一斤をサンドイッチ用に10枚切りにしてもらおうと思っていたが、この人の手の中にあるパンの量を見るに、二斤は欲しいだろう。
もう一斤手に取ると、コロネロさんは抱えていたパンを元に戻すとオレの後ろを付いてきた。

「卵サンドがいいぜ。」

「はいはい。」

シッポがあったらフリフリと景気よく振っていそうだ。
そこまで喜んで貰えるなら作り甲斐もある。



そんな感じで買った材料を持って貰いながらコロネロさんと家まで歩いていくと、道の向こうからラルさんとユニさんが黒塗りの車から降りてくるところだった。
ガンマさんが後部座席のドアを開けるために立っている。

「ガンマさん!」

「よぉ坊主。」

ニッと笑う顔にこちらも笑い掛けると、ラルさんの次に出てきたユニさんがキッ!とこちらを睨んだ。

「私やラルにも声を掛けて下さいな。」

「あ、はい。…っていうか、降車したら声を掛けようと思って…」

もごもごといい訳をすると、少し考えた風の顔をしてからため息を吐かれた。

「いいですわ…本当にツナくんはガンマが好きなのね。」

「へ…?そうかな…そうかも。」

だってアニキ!って感じだし。いかにも頼れる男じゃん。
深く考えずに納得してしまったオレは、その後勘違いしたコロネロとラルに一杯喰わされる羽目となる。


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