9.珍しく住み込みカテキョーが居ない朝。 ああ、なんてすがすがしい朝なんだ!って言ってる場合じゃねぇ! 「もう、母さん起こしたのにツッ君起きないんだもの!おにぎり握ってあるから持っていきなさい!」 「ううううっ…。いってきまーす!」 しっかりおにぎりは2つ抱えて出たけどさ、最近はリボーンに起こされるのが当たり前になったせいで、目覚ましを掛けることを忘れちゃったんだ。 あと10分。走ってぎりぎり間に合うかどうかだ〜。 向いのコロネロも先週の土曜日から居ないんだよなぁ。てっきりリボーンに足止め喰らって買い物に付いてこれなくされたくらいだと思っていたのに。 また教官をしに行ったのか、それなら一言あってもいい筈なんだけどね。 っと始業のチャイムがぁぁぁ〜…! 結局間に合わず、担任にこってりしぼられる羽目になった。 京子ちゃんにも笑われちゃったよ。恥ずかしいー。 ダメツナなりのいつもの一日はそんな感じで始まった。 それから体育では山本の投げたボールを顔で受け止めて保健室に運ばれ、英語の宿題を忘れて立たされたりとまぁあんまりな内容だった。 そんな一日だったがどうにか終わった。やっと終わってくれてほっとした。 山本は野球部なんで教室で分かれた。 誰かと一緒に帰るわけでもなく、いつも通り歩いて帰る。 今日はリボーンが帰ってくるか分からないって言ってたんだよな…。 居ると怖いけど、居なくなると寂しい。 これってあいつが留学してた1年前と同じだ。清々した!と思っていたのは3日だけでその後はいつ帰ってくるのかばかり気にしていたっけ。 もう大人なんだし帰って来ないんだよな…と諦めていたら、突然カテキョーとして戻ってきた。 嬉しいより、今更なんだよ!って反発心が勝っちゃって今に至る。 こう考えるとやっぱオレってあいつの言う通りガキなんだ。 ぐぅぅ〜とお腹が鳴った。 ちょっと遠回りだけど、コンビニで秋のお菓子でも買って帰ろっと! そうしていつもの帰り道ではなく、少し国道沿いの大通りまで出てきたのだった。 うちの近所でもなく学校の近所でもないコンビニは歩いて行ける距離にあるので重宝している。 大通り沿いの割りにあまり人が入っている感じがしないのは、寄る時間帯のせいかもしれない。朝早かったり、夜遅ければ利用者は多いのかもしれないのだが、オレはいつも学校帰りのこの時間に来ていた。 自動ドアの前に立ち、開くのを待って週刊誌を立ち読みしよ〜と思ったら…。 わお。 並盛の最凶委員長の口癖が出ちゃった。見たことはあるけど、知り合いではないんだけどね。 そんなどうでもいいことを考えてしまうような、現実逃避したくなる事態だった。 「てっ、手を上げろ!!!」 目だし帽に黒い服、手には拳銃ぅ?? 改造拳銃かも。 持って威嚇している相手の方ががたがたしていた。 オレはと言うと、拳銃は幼馴染み2人が何故か持ち歩いているせいか意外と落ち着いていた。 犯人は店員を人質に取ってオレを威嚇している。すぐにオレを撃つことなないだろうけど、下手に動いて刺激してはいけない。 手を上げてその場で犯人を見ていると、もう一人いた犯人が店員から金を受け取ると縄か何かで縛り上げていた。もう一人はイラついているのが分かった。 つーか、何てタイミングでここに着ちゃったんだろう。呪われてるんだろうか、オレ。 朝の占いを見る暇もなく登校したオレが悪かったんだろうか? ガタガタ震えている改造拳銃を持った犯人がオレに近付いてきた。 さすがにオレも肝が冷える。撃たれたらお終いだから。 「兄貴!コイツはどうしますか?」 「縛ってここに寝かしとく。オイ、こっち連れてこい!!」 拳銃を背に当てられ、現実味なく歩かされた。目の前には目だし帽の犯人、ひょろっと長細い。もう一人はがっちりした中背。そちらがオレを掴むと後ろでに縛りはじめた。 その時だった。 「ここは完全に包囲されている。おとなしく出てきなさい。」 外を見れば警察官が4人ほどコンビニの前で拳銃を構えていた。 警察官の持っている拳銃はリボルバータイプで殺傷力も低い。こっちの改造拳銃の方がやばい代物だ。 駆けて逃げれば後ろから撃たれるだろうし、警察官は当てにならない。 だって明らかに及び腰だ。 いっそ雲雀さんが来てくれた方が…いや、それもやばいか。敵味方関係なく噛み殺されるみたいだし。 …どうしよう。 八方塞で黄昏ていると、見覚えのある黒と金が視界を掠めた。 外ではなく、コンビニの中。犯人2人からは丁度死角になる棚に隠れている。 いつの間に…っつーか、こいつらどこから入ってきたんだ?ひょっとして店員用の通路からじゃないか? そんなことを考える余裕が出たのは、この2人は絶対助けてくれるって知っているからだ。 ほら… ガッ! 拳銃を持っていた犯人の手を目掛けてナイフが投げられる。過たず手首に掠り手から拳銃は床へと離れた。 オレは動かずに待つ。動くと邪魔になるからだ。 犯人が2人に気付いた瞬間に炭酸水が勢いよく犯人の顔目掛けてぶっ掛けられ、目を潰された犯人2人は幼馴染みに敵うわけもなく、床に押し付けられた。制圧完了。 警察官の見守る中、一般市民が強盗犯から店員と客を助け出した。 周りを囲んでいた人達から惜しみない拍手と喝采が上がったら、2人はオレしか見ていなかった。 コロネロが先ほど飛んでいったナイフで結ばれた縄を解いてくれた。 「ありがと。」 「なんともなかったか?痛いところはないか?」 肩を掴まれ確かめられる。こういう時には赤面症は出ないらしい。 「うん。平気だよ。」 コロネロに返事をしていると、いきなり身体が浮いた。ってリボーン、オレ荷物じゃないから担ぐな! しかも炭酸がオレにもかかっていてビショビショだ。 「帰るぞ。」 「イヤイヤ!オレもお前も警察の事情聴取があるじゃないの?!」 「こんな格好でいたら風邪ひくだろ。用がありゃ勝手に来る。」 そんな訳はない筈なんだけど…追ってこないところを見ると何やらあるみたいだ。こいつ等何やってるヤツらなんだろう?この対応、雲雀さんっぽいような。 うん、うん、唸っていると頭の上にシャツが被さってきた。ついでがしがしと手荒く拭かれた。 「痛い!痛いって!」 「軟弱だなコラ。」 「お前の力で拭かれたら誰だって痛いよ!」 ったく。 リボーンは黙って何も言わない。言わないけど分かる。伊達に10年も一緒じゃない。 心配してくれてた。だから何も言わずにあそこから離れてオレを気遣ってくれている。 シャツで顔が見えないから、小さく呟いてみた。 「ありがと。」 ふん。と肩の横から声がして、少し気配が緩んだ気がした。 分かりにくい幼馴染みだけど、オレのこと分かっててくれてる。 何だか胸があったかい。 ふふふふっ…と小さく笑うとコロネロがびっくりしたけど、リボーンは頭のネジが緩んだだけだ、気にするな。とか失礼なことをほざいていた。 お前ほどネジがぶっ飛んでないから平気だよ。 . |