リボツナ2 | ナノ



7.




今日は休日。約束の目覚まし時計を買いにリボーンと隣町のショッピングセンターにやってきていた。
…できれば今すぐ帰りたい、と思ったオレは薄情じゃないと思う。







車で買い物に行こうと言われたのだが、なんだかこいつの運転で行くのが怖くて電車で行くことにした。
だって車って密室だろ?どんな怖い目に遭うかと思うとおちおち買い物も楽しめないよ。
そう言ったら「密室…。」と何やら興奮していたが、これだけは譲らなかった。
うん、やっぱりオレの判断は正しかった。

そういう訳で歩いて駅に着いた。休日だということもあり、割と人出があるなーなんて思っていた。
オレのような中学生3人組とか、女子高生と思われる5人組とか。休日なのに出勤なのかスーツ姿のオジサンたちもいる。

最初に異変に気付いたのは駅の構内に入ってからだ。
やたらと周囲の女の人と視線があうな〜なんて思っていたのだが、どうやらお目当ては隣のカテキョー様らしい。

世の中って理不尽だな。こんな顔も頭も要領もいいけど、性格は壊滅的に最悪なのにどこがいいんだ?そうか、見た目しか見えないからだな。

「オイ…てめぇ、口から漏れてんぞ。」

「あ、ゴメン。口の悪いカテキョーに躾けられてるから。」

「口塞いでやろうか?」

顔を掴まれて上を向かされた。そのまま顔が落ちてきそうだったので慌てて手でリボーンのそれを押し返した。
これくらいしないと衆人環視の中で何されるか分からない。
つい昨日も嫌がらせで首にキスマークを付けられたばかりだ。

「あ、丁度電車来たよ。」

「…。」

リボーンを張り付かせたまま電車に乗り込む。
ため息をつかれた。…お前よりオレの方がため息付きたいよ!

「そう言えばコロネロは来なかったね。」

リボーンと買い物に行くと言ったら「オレも買い物があったぜ、丁度いい一緒に行くぜコラ!」とか言っていたのに。
でもリボーンとコロネロが一緒だと本人たちも周りも煩さ倍増だからよかったのかも。

するとリボーンはあの黒いニヤリ笑いをしていた。こいつが何かして来れないようにしたんだな。
何があったのかは知らないけど、碌でもないことがあったことだけは分かる。可哀想に。

そんなことをつらつら考えていたらすぐに着いた。

リボーンと横に並んで歩くと後ろから前から視線がざっくざく刺さる。何やら後ろの女子高生軍団は付いてくるらしい。…暇人だ。

「ツナ。」

「何、買う物買ってくれたら別行動でもいいからな。帰りは一人でかえれるし。」

「行きも帰りも一緒に決まってんだろ。何で態々別で帰らなきゃならないんだ。」

憤慨してるが、後ろの子たちは悲鳴上げてるよ。…そうか、オレと離れたら声掛けるつもりなんだな。
ちょっぴり黄昏ているといきなりリボーンが止まった。

「この店入るぞ。」

言うなりショッピングセンターの手前の店に足を向ける。肩をがっちり掴まれているのでオレの足は前に出そうとしたまま浮いていて、ふらつく身体を抱えられながら横に連れ込まれた。

ええええぇ?!ここ洋服屋みたいだけど、オレが欲しいのは目覚まし時計だよ?リボーンの買い物に付き合えってこと?…まぁいいや。

引き摺られて入るとかなりの高級ブティックのようだ。後ろの女子高生は入れずに店の前で立ち往生している。オレも一人なら絶対入らないな。リボーンは違和感ないからいいけど。

オレがカットソーの値段にびびっていると、店内をぐるりと見回していたリボーンが一抱えの洋服を手に戻ってきた。

「ホレ、これを着てこい。」

ぽんと放られたが、値段を見た後なので怖くて押し返した。

「ムリ、払えないもん。」

「誰がてめぇに払えって言った。ぐだぐだ言わねぇで着て来い。」

「いやいやいや!オレみたいなチビには似合わないって!」

「誰が見立てたと思ってるんだ。オレがこの格好してこいっつてんだぞ。払うのはオレだ。オレと買い物に来たのに言うことが聞けねーってのか?」

うわーん!こいつ目が据わってる!!黒い!黒いの出てるって!…ダメだこいつ引かない。

「オレこんな高いの請求されても出ないからな!あと、似合わなくっても笑うなよ!!」

自棄になって服を掴むと試着室に駆け込んだ。着てみて似合わなければ納得するだろうと思って着始めたのだが…あれ?サイズがぴったりなんだけど、いつ計ったんだ…。まさか着替えのガン見でとか言わないよな…これからはマジで出ていって貰おう!

嫌々着たのに何故だかしっくりくる。おかしいところがない事がおかしい。似合ってるとかじゃなくて、丁度いい感じ。

着替え終わったのを察したのだろう、何も言わずに扉を開けると上から下までじっくり眺めて靴まで投げて寄越した。履くとまた眺めて納得したようだ。
そのまま何も言わずに出ていってしまい、どうすればいいのかとおずおずと出ていくと店員に値札を全て取られてしまった。

値札を取られている間に会計も済ませてきたリボーンがその日一番いい顔で笑い掛けた。

「よし、見られるようになったな。目覚まし時計も買いに行くぞ。」

…も、って言ったよね。最初からこれも買い物に入っていたようだ。この口調だと。






オレ様カテキョーは絶好調で目覚まし時計も買ってくれました。
勿論目覚ましの声はリボーンの美声を入れて下さいましたとも!

「……これって何の罰ゲーム?」

「嬉しいだろ。これで毎日オレの声で起きられるぞ。」

「今でも毎日お前に起こされてるんだけど?」

「そうだな、それじゃあいらねぇか。また明日も起こしてやるからな。」

「目覚ましありがとう!これで起きるから明日からは起こしにこなくていいから!絶対入るなよ!」

「照れるな。オレとお前の仲じゃねぇか。」

照れてねぇぇぇ!
精一杯叫んでも、聞いてくれなかった。
言葉の無意味さを知った14歳の秋だった。



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