リボツナ2 | ナノ



6.




目の前にはゲームを真剣な顔をしてやり込む男子中学生。男臭さとは無縁の薄い背中にブリーチ不要の明るい茶色の髪。出会った頃から変わらない零れそうな大きい瞳。ミルクチョコレートのようなその色は舐めたら甘そうだ。

この危機感の薄い幼馴染みにはいつも手を焼いている。
人の言うことは理解しねぇ、そのくせ厄介事にはすぐに巻き込まれるという悪循環。放っておけないのは所詮惚れた弱みというヤツだ。
こんなお頭の弱いガキに手も出せねぇでいるなんてヤキが回ったか。




疫病神に好かれているこの幼馴染みは、つい先日もコンビニ強盗に遭遇している。イタリアからの仕事を終えて帰路に着いた矢先の出来事だった。

くそったれネイビーと駅でかち合い、帰る先も同じだったが互いに無視を決め込んで歩いているとコンビニの前を通った時にあのハネまくりな茶髪を目にした。
間違いようがない、ツナだ。拳銃を突き付けられている。まったく面倒事には事欠かないヤツだ。
周りはまだ異常事態には気が付いていなかった。それ幸いと店員用の通路から進入してタイミングを計っていたが、すぐにツナがこちらに気付いた。視線はこちらには向けなかったが、口許が少し緩んでいる。馬鹿か。てめぇの状況をよく飲み込め。

その後は難なく犯人2人を取り押さえ、ツナを担いで帰った。警官なんざ雲雀が押さえているから一々煩わされなくてもいい。
そうでなくてはオレもコロネロも銃刀法違反で捕まる。

その後が問題だった。

まさかビアンキがイタリアから追いかけて来ているとは思わなかった。
ビアンキは本国での仕事で知り合った女で、ツナには留学と言ってあるが裏の仕事で一年こちらを空けた際に情報屋として知り合った。出会った時からあの調子で、かわすことには慣れているオレでも辟易するほどの情熱で口説かれた。ま、悪ぃがオレにはツナがいる。ツナはこれといった特技はないが料理上手な奈々のお陰で飯は上手い。ツナの可愛さは言う気にはならねぇ。誰が教えるか。


惚気ていると勘違いしてビアンキがツナに料理勝負を持ちかけた。それによってバレちまうんじゃないかと思っていたのだが、まったくバレなかった。
どころか、あれだけ言っているのに気付いてもいやしねぇ。

鈍い、鈍いとは思っていたが、この調子だと告られても分からずにいい友達になっているヤツの一人や二人はいそうだ。

「リボーン、喉渇いたー!」

「ちっ…てめぇで取りに行け。隣からコーラを持ってきてただろ。」

「えぇー、今いいとこなんだ。持ってきてくれると嬉しいな!リボーンのこと大好きになっちゃうなー。」

こっちも見ずに言いやがった。
分かっていなくてこれだ。分かっていてじゃないだけマシか。
ムカついたんで蹴ってやった。

「うぇ!痛いな!何するんだよ!もうちょっとで死んじゃうところだっただろ!」

そんなキャラは死なせとけ。
こっち向け、いや向くな。

「っとに!いいよ、自分で持ってくるから…って、どうしたの?」

やっとセーブして腰を上げたツナが不思議そうな顔で覗きこんだ。ふい打ちの言葉にニヤけていた顔を押さえといてよかった。見られずにすんだからな。

「どうもしてねぇ、キッチンに行くんならオレのエスプレッソも淹れてこい。」

「おまっ!それは横暴だぞ!オレに淹れさせるために蹴ったな!」

煩いツナにもう一度蹴りを入れると部屋から追い出した。
ここはオレの部屋なんだがな。どうしてかオレの部屋に入りたがったツナが、ゲーム機持参で来やがった。
コロネロにはガキには手は出さねぇとは言ったが、どこまで持つんだ?
あいつはいつまで気付かない気だ。

奈々の手前もある。男子中学生に堂々と手を出す訳にもいかないしな。

「早く育ってくれ…。」

疲れた声が出たことは否定しない。



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