リボツナ2 | ナノ



10.




明け方近くまで眠れなかったせいですっかり寝過ごしたオレは、心配した獄寺くんと山本に起こして貰うまで深い眠りの底へと落ちていた。
もう思い出せないほどの夢なのに、深く重いその名残でまだ胸が苦しい。

リボーンはといえば、今日は何か思うところがあったのか起こしにこなかったようだ。
昨日の八つ当たりは完璧にオレが悪いと思う。自分の彼女がただの言葉遊びとはいえ義理の弟とも付き合うことになったなんて、プライドの高そうなリボーンには許せなかったんだろう。
しかもバイト先にまで現れてキモいヤツだとか思われていそうだ。

山本と獄寺くんは先に行って貰った。オレのせいで遅刻するんじゃ悪いし、今はまだ一人で居たい。
どんなに急いでも遅刻は決定している時間のせいで、逆にゆっくりと一人きりのキッチンで朝食を摂る。
リボーンの席を見てため息が漏れた。

好き、なんだろうか。
イヤイヤイヤ!オレは断じてゲイじゃない。
普通の男子高校生だ。同じクラスの可愛い女の子と席が前後になれて嬉しいと思う程度には。
だとしたら何でこんなに気になるのか。

昨晩は食欲も湧かなくてそのまま寝てしまったせいか、今はおいしく朝食が摂れる。
トーストにバターを塗ってベーコンとレタス、玉ねぎを乗せるとマヨネーズとマスタードちょっとかけて2つに折った。パクつくスピードを落とさないまま、ミルクパンに牛乳を入れて温める。そこに少し砂糖を入れよくかき混ぜたら出来上がりだ。

香る程度の甘さにほんわりしていると、ケータイの着信音が聞こえた。この音はメールか。誰からだろうと何気なく覗いて身体が竦んだ。リボーンからだった。
今まで考えていた相手からのメールに、ドキドキしながらメールを開く。

「…休むのかって、わざわざメールくれるんだ?」

昨日のことには一切触れずに、今朝起きてこなかったことを皮肉りながらも体調が悪いのかとメールをしてきた。意外とマメらしい。いや、意外じゃないか。
そういや最初の出会いはすげぇマメ男だと思っていたんだっけ。
夜のバイトもマメじゃなきゃできないだろう。その延長線上にいるだけだ。

ふっと息を吐いて残っていたトーストサンドに噛み付く。先ほどまで美味しかったのに、何故か今は味がしなくなっていた。

考えるのもバカらしい。
オレとリボーンじゃどうにもならない。
男同士だし、義理とはいえ兄弟だ。

最後に残っていたミルクを口に含むとすっかり冷め切ったそれがいつまでも口の中に残った。







二時限目にどうにか間に合う時間に着いて、それから担任に叱られたり、山本と獄寺くんに心配されながらもどうにか昼休みまで乗り切った。
食欲が湧かなくて、寝不足のせいで頭痛がする頭を抱え、昼飯を食べることを放棄して寝てしまおうと保健室まで足を運んだ。

昼休みの賑やかな教室や廊下をヨロヨロと歩いていくと、すれ違う上級生から声が掛かる。
心配だからついてきてくれると言い張る彼らを丁重にお断りして、どうにか保健室まで辿り着いた。
この間、15分は経過していてすっかり疲れ果てていた。捲いてくることに。

げっそりとやつれた顔で保健室の引き戸の取っ手に手を掛けると、中から声が聞こえてきた。
その声の主にぎくりと身体が竦む。

「チッ、まだ返信してこねぇ…」

イラついた様子のリボーンが、コロネロ相手にしゃべっているのが聞こえる。
それをプクク…と笑うコロネロに、リボーンが睨んだのか怖ぇ面すんなとおどけていた。

「ユニ相手じゃ分が悪いからか、コラ。」

「…そんな訳あるか。」

話の内容は、どうやらユニさんらしい。メールと言われ、オレも返信していないことを思い出す。
固まっていても仕方ない、登校してきたけど頭痛だから寝かせてと言おうと扉に添えた手に力を込めるとまたコロネロがしゃべりだした。

「大方、付き合うっつてもからかう程度だと思ってたんだろ。それが気に入られて焦ってんのか?」

「煩ぇ…黙れ。」

ガン!と何かを蹴り上げた音が聞こえた。
殺気すら感じる会話に中に入れずにいると、ふとその気配が緩んでオイと声が掛かる。

「誰か居んのか?」

こちらの気配を察したリボーンの声に、何故だかわからないが逃げ出した。廊下を曲がり、階段を駆け上がって、手近な教室へと逃げ込む。
はぁはぁと荒い息を吐くと、ぺたりと座り込んだ。

あの話の内容は、オレとユニさんのことだ。
ユニさんがオレと付き合っていることを快く思う筈がないと、知ってはいたけどあれ程怒りをあらわにするとは思わなかった。余裕がある付き合いだから、許しているのだと思っていた。
でもそうじゃなかった。

「本当に好き、なんだ…」

「何がだい?」

突然かかった声に、心臓が止まりそうな程驚いた。恐る恐る振り返ると、そこにはマーモンさんが牛乳パックを銜えたまま後ろに腕を組んで立っていた。


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