リボツナ2 | ナノ



1.




オレの朝は住み込みカテキョーの襲撃から始まる。




朝7時。通う中学まで歩いて15分の距離。始業は8時なので、そろそろ起きなければ朝食抜きになってしまう時間なのだが…。

「ツナ、起きろ。」

くか〜と暢気な寝息をたて、いまだ夢の中にいる教え子に最初は声を掛ける。起きる訳がないのは分かっているが、声を掛けたという動作はした。

ニヤリと笑い、つかつかと近寄ると綱吉の眠るベッドに腰掛け鼻を摘む。

15,16,17,18,19,20…23まで数えると摘んでいた手を剥がされ、綱吉が跳ね起きた。

「おそようだぞ、ツナ。あんまり遅いと朝飯食っちまうぞ。」

「ふがっ!…はあはあ…死ぬかと思ったぁぁ!」

やっと起きた綱吉にリボーンはとても愉しげな顔だ。
死ぬほど苦しかった顔がよかったらしい。

「リボーン!朝からお前の趣味に付き合う気はないって言ってるだろ?!…もう!」

「それなら早く起きればいいんだぞ。オレはちゃんと起こしたのにすぐに起きなかったお前が悪い。」

本当かぁ?とは思っていても口には出さない。寝汚いのは本当だし、口でリボーンには敵わないからだ。
出会って10年、相手が年上とはいえ一度たりとて口で勝ったことはない。ついでに頭でも顔でも勝ってはいない、って大きなお世話だ。

ピカ○ュウの時計を見ると15分!慌てて着替えなければまた風紀委員に捕まってしまう!
がばっ!とパジャマを脱ぐと先ほどと同じ格好で座る幼馴染みで家庭教師なリボーンがこちらをガン見している。

「…なんだよ?」

「いや、お前相変わらず育ってねぇな。」

貧弱な上半身を見て嘆く。
リボーンがイタリアに留学していた間の1年前と比較しているらしい。

むかっ。

「悪かったな!これでも身長は3センチ伸びたんだからな!」

「3ミリの間違いじゃねぇのか?」

「んなわけあるかぁ!」

ぎゃあぎゃあ言いなからパジャマのズボンも脱ぎ捨て、並盛中指定のワイシャツとズボンを身に付けていく。
ネクタイを適当にぶら下げると横から手が伸びてきた。

「不器用だな…貸してみろ。」

そう言って綱吉のネクタイを取ると結んでゆく。
至近距離でオレ様カテキョーの美貌を見る羽目になり、くらりとした。
間違ってもうっとりした訳ではない。
毎朝のことながら、このムダに色気を垂れ流している美形の幼馴染みに、これもムダとは思いながら言う。

「…自分で結ぶ。手、離せ。」

「もう結び終わったぞ。何だ、なにが不満だ。オレ様が綺麗に結んでやっているのに。」

「そこだけ綺麗に結んであっても仕方ないんだよ!」

見ろ、このボーボーではねまくりな髪を!顔もカテキョー様と違って平凡なんだから、適当でいいんだって!
いくら言っても効かない。そのうえこの一言だ。

「いいか、ツナ。このネクタイの結び目が解けていたらお仕置きだからな?」

底光りする眼光で言われるのだ。
コクコクと首を縦に振るしかないだろう!

この理不尽な振る舞いの幼馴染みで、ダメツナのカテキョーを自ら申し出たリボーンとは10年間の付き合いがある。虐め抜かれた虐待の記憶がフラッシュバックした。

ぶるぶるぶる。腕を抱えて震える。

するとそれを見てにんまり笑う。血も凍る恐怖の笑顔だ。
それを見て余計に慄く綱吉の頭を撫でるとわざとらしく時計に視線をやる。

「…っげ!もう25分じゃん!」

どたどたと騒がしい足音を立てて下がってゆく年下の幼馴染みに、リボーンはこっそりため息をついた。

「あいつ、全然育ってねぇ…。」

これじゃあ手が出せねぇ、なんて思われている沢田綱吉はそんな心情を知る由もなかった。
それはとても貴重で平和な時間だったと思い知るのはそう遠くない。


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