リボツナ2 | ナノ



小さな思いが膨らむ




肩口から夜の空気が流れ込んできた気配でゆるりと瞼を上げた。
そんなに寝相は悪くない筈なんだが、と目を凝らすと肩には酷い寝癖が付いた頭が乗っかっていた。
器用に顎だけ乗せて手はリボーンのパジャマを握っている。

くうくうと安らかな寝息を立てているその顔は酷く幼い。これで25歳だなんて詐欺だな。
今日も仕事が押していて、帰ってきたのは夜中の1時を周っていた。
待ってないよと言いながらいつも待っていてくれたのだが、今日は遅すぎたようだ。
すぐに食べられるばかりに置かれていた夕食をさらりと腹におさめ、シャワーで軽く流して寝床に入ったのは2時過ぎ。そして今は4時過ぎを少し回ったところだった。
ツナのことだ、大方トイレに起きて寝惚けて部屋を間違えたのだろう。

もぞりと身体を動かしてツナの頭の下に腕を滑らせる。
すると腕に鼻を摺り寄せふにゃりと笑った。幸せそうなその笑顔にこちらまで心が温まる。
ツナを抱える腕に力を込めて腕で囲うとぽふんと胸に飛び込んできた。

「……起きてたのか?」

「うんん…寝て…けど、おかえり……言おーと思っ…」

どうやらおかえりを言いに来たらしい。
首に巻き付いてきた腕ごと引張り上げると、焦点の合わない瞳がぼんやりとこちらを見上げる。
リボーンを視界におさめた途端ぱっと花が咲いたような笑顔を見せて唇に吸い付いてきた。
柔らかい唇がちゅっと音を立てて軽く吸い付き、甘い息を吐いてすぐに離れていく。
おかえり…と声に出さずに呟くと、また瞼を閉じてまどろみの中へと落ちていった。

「お前…そこまでしといて寝るのか…」

罪作りなツナは煽るだけ煽るとひとり夢の中へ。
残されたのは持て余した欲情をどうすることもできず、かといって腕の中のツナを手放すこともできないリボーンだけ。

腕の中で安らかに眠るツナに今度はこちらから口付けを落とす。
灯りもつけていない室内は輪郭が分かる程度で、けれども夜目に慣れた瞳はしっかりと表情まで読み取ることが出来る。
何度も軽く啄ばめば寝ている癖にしっかりと応えてくる。うぅんと悩ましい声が漏れ、深く重ねると結んでいた唇が緩む。誘われるままに中へと引き込まれゆっくりと時間を掛けて嬲った。
息苦しさにか気持ちよさにか、眉根を寄せ口付けを外そうとする。それを顎を掴んで引き寄せてまた貪った。

さすがに寝ていられなくなったと見え、首に巻き付いていた手が額を押しやり頬を叩く。
しぶしぶ唇を離すと腕の中でトロンと蕩けた表情と荒い息でこちらを見上げるツナが睨む。そんな欲情に濡れた顔で睨まれても怖いどころがもっとその表情を歪ませてみたくなるだけだ。
互いの唾液で濡れた唇を手の甲で拭う仕草にすら煽られる。
じっと見詰めていると居心地悪そうに視線を彷徨わせた。

「っとに…最近忙しいんだろ?寝とけよ!」

「夜這いに来といて言う台詞じゃねぇな。」

「誰が…!」

言葉では拒んでいても身体は先ほどの口付けに溶かされていて拒んでいない。証拠に首筋から耳裏まで這い上がる唇にびくびくと身体を震わせてはいても逃げる気配はない。
耳裏に強く吸い付いて痕を残すと耳を甘噛みする。すると身体の熱を吐き出すように息が零れた。
甘さを含んだその吐息をもっと聞きたくてパジャマの裾から手を差し込む。
脇腹から背中へとそのすべらかな肌を堪能し、もう片手でパジャマを捲り上げる。寒さにか少し震える身体に体重を掛けてから胸へと顔を落とした。

まだ何の反応も示していない胸の先へと視線をやり、パジャマを押える手をそこへと滑らせる。親指の腹でちょんと擦れば少し硬さを持って立ち上がる。親指と人差し指でぎゅっとつまんでいると、まだ触ってすらいなもう片方も硬くなってきて、それに舌を這わせると小さく悲鳴が上がった。

「…っ、はぁ…も…やだぁ……!」

「バカ言ってんな、これからだぞ?」

腰を撫でていた手がするりとまろやかな双丘へと下る。舌と指で胸の突起を嬲りながらも奥へと進む指にツナは首を振った。

「疲れ、てる…のに…?」

「疲れてるからシたくなるんだろ。最近ご不沙汰だからな……ツナ不足でどうにかなりそうだぞ?ツナはそんなことねぇか?」

「……っる。」

小さい呟きに聞こえねぇなと言ってやると、涙目で睨んできた。快感に染まった頬にうるんだ瞳が可愛い。
もっと虐めたくて言葉を待つ。

「ある…!お、んなじって言わせんなよ!」

「言わなきゃ分かんねぇだろ。で、こっから先はどうしたい?」

訊ねると頬をもっと染めて口をぱくぱくさせる。

「するのか、しねぇのか。どっちだ?」

「…する…」

「よし。」

真っ赤になりながらもリボーンの額に口付けを落としたツナは、直後に着ているものをすべて取り払われてベッドの波へと沈んでいった。





スカルは兄弟の中で一番目覚めるのが早い。というより、ツナが来るまではスカルがおさんどんを強制的に受け持たされていたからだ。
今でもその癖は抜けず…というより、朝一番のちょっとぼんやりとした表情のツナを見たいがために早起きを続けている。
今日も可愛いツナの寝起き顔を拝もうと、コトコトと音を立てているキッチンへと足を踏み入れて…固まった。
またも長兄とツナの濃厚過ぎるキスシーンを拝んでしまい、悔しさで泣きたくなった。

スカルがキッチンへと向かってくる気配に気付いていただろう長兄と、うっとりとそれを享受するツナとに。
長兄はわざとだが、ツナは無意識になので余計に性質が悪い。
大体、兄は最近忙しいとかで滅多に顔も合わせない状況だと思っていたのに何だこの甘い雰囲気は。
すん、と鼻をすすると途端にツナが我に返り身体を離した。
真っ赤になって固まっているツナの横では、長兄が余裕の笑みを浮かべている。ムカつくことこの上ない。

「いくら弟とはいえ、新婚家庭に水を差すのは感心しねぇな。」

「バッ…!誰が新婚なの!……もうこいつはほっとけよ、スカル。朝ごはん食べるだろ?今支度するから待ってろよ。」

いつもより赤みの差した頬でにっこりと微笑まれる。やっぱり癒される、可愛い…けど。
バツの悪さにか慌てた様子で支度に取り掛かるツナの背中を尻目に、横に座った兄へと小声で訊ねる。

「…ツナさん調子が悪いんじゃないのか?顔色が悪い上に動きがぎこちない。」

それを聞いた兄がふふんと鼻で笑う。
一々ムカつく。

「聞きてぇか?未成年にゃ刺激が強過ぎるかもしれねぇがな。」

「って、何言う気?!」

味噌汁を手にしたツナが慌てて止めに入ってきた。
それにすら余裕の表情で足を組み直す。
びしっと決まったスーツ姿の長兄は確かに格好いいのだろうが、浮かべる笑みは嫌味ったらしいと感じるのは被害妄想だろうか。

「今夜もおかえりを言いに来いよ?」

「ぜっったい行かない!」

「そうか…それならオレがただいまを言いに行くぞ。」

「来なくていいよ!」

「照れんな。」

「微塵も照れてねぇ!!」

そんな遣り取りを見せ付けられて、歯噛みしているスカルに気付く者はいなかった。


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