13.連れてこられた高級そうなホテル。いつも使うのか名前を出しただけですぐに用意されたそこは広いく豪奢だ。 慣れない場所と、外してくれない腕に焦りを覚えた。 掴まれた腕の先には感情の見えない能面のような顔にぶつかる。 見上げていると視線だけこちらに向けるが何も言わない。 オレも廊下で喋る気にはならなくて、黙ってついていく。 部屋に入れば重みのあるドアがゆっくりしまる音が響いた。 何故か怖くなってドアを振り返ると、横から腕を掴まれて足がもつれる。 床に転がると上から重みが増した。 潰されない程度に動けなくなった身体に伸し掛かり、服をまさぐり始める。 ぎょっとして手を掴むが難なく外されて、その場で胸ははだけベルトは外されてスラックスも膝まで落とされた。 焦っているのか?オレがはっきりしないから? 逃げてばかりだったことを後悔しているのなら、まずは動かなければ。 「リボーン…待って。」 「待たねぇ。」 言葉と同じく早急な直接的な愛撫に声が漏れる。 はだけたシャツを広げて首の柔らかいところから鎖骨へと唇が落ち、その間に手は胸元を捏ねる。 痛さに顔を顰めていると下がってきた口が、弄っていたそこに吸い付く。 痺れにも似た感覚に身体を震わせていると、そこに口付けたまま笑われる。 その笑いの息にまで反応してびくりと足が跳ねる。 片方を濡らしまた手が弄りだすが、今度は痛さはなく濡れた感触と摘む指に先ほどとは違う感覚が湧いてきた。 オレの反応を確かめながら、もう片方の手はもっと下へと降りていく。 下着の裾から手を入れて間接の柔らかい皮膚を撫で上げた。 触れられてことのないそこを、やわやわと指で辿り、肝心なところは避ける。 もどかしさに腰がムズムズすると頃合いを計っていた手が下着にかかり、そのまま下ろされた。抵抗することも出来ずに腰が浮いた瞬間にするりと。 いつの間にかスラックスは横に放り投げられ、下着は片足に残ったままだが取り払われたに等しい。 ジャケットとシャツは肩まではだけていて、その上に転がっているようなものだ。 「抵抗しねぇのか?」 「しない。」 する必要もない。 すると今まで何かに突き動かされていたようにまさぐっていた手を止めて、オレの顔を覗きこむ。 オレも逸らさず見詰め返した。 手をリボーンの首へと回し、しっかりと抱き込んだ。 重みさえ今は嬉しい。 「好き。」 リボーンの肩が揺れた。 「っ…遅え…先に言え。」 「うん。…大好き。」 何も言わずに唇が落ちてきた。 唇と唇を合わせるとじんわり嬉しい気持ちが広がる。 やっと言えた言葉に、それを受け止めて貰えたことにも嬉しくて涙が出そうだ。 重ねていただけの口付けから、息をすることも忘れるほどに深く溺れる。 抱え込んだ頭から指が外れた。 「場所移動するぞ。」 やっと離れた口付けに荒い息を吐いていると、リボーンに抱え上げられた。 そのままベッドルームまで運ばれ、そっと下ろされる。 早く抱き合いたくて手を広げていると、腕からジャケットとシャツを抜かれた。 オレもジャケットを脱がせてやり、ベルトを緩めているとまた唇が落ちてきた。 重ねる気持ちよさにうっとりする。 抱きつこうとすると、くるり返されと背をリボーンにくっ付けるような格好で膝の上に座らされた。 「なっ何?」 非常にいい顔をしてこちらを覗き込む。何するつもりだ。 最初は襟足に舌を這わせた。つつぅ…と這うそれに背筋がゾクゾクして、くっ付けていた背中を浮かせると背中から脇にかけて手を滑らせる。それにさえ反応して余計に背を反らせていると、逆の手が腰骨を触り出す。撫でる動きで徐々に皮膚の柔らかい部分に進む。 今度は背中を撫でていた指を口に入れられてびっくりしていると、舌に絡められた。うまく息ができなくて吸い付くと耳を甘噛みされる。 痛さよりぞくぞくする感じに声を上げたいのに、入れられた指が邪魔をする。 口端から溢れるものに眉を寄せる。 「丁度いいじゃねぇか。」 指を抜かれて溢れたそれを手の平になすり、舌は耳から背中へと辿る。その舌にゾクゾクする。 すると唾液で濡れた手で中心を扱かれた。 大きい手の平にぎゅっと包まれ、やわやわと上下させる。 背中から戻ってきていた顔が肩越しに覗き込む。 気持ちいいことが恥ずかしくて、声を出したくないのに勝手に漏れ、唇を噛もうとすると別の指が邪魔をした。 「やっ…いや…っ」 「いいの間違いだろ。」 わざと手を上下させ、唾液以外の先から零れる液を塗り付けて音を立てる。 恥ずかしさに首を振ると、顎を掴まれた。 「見てろ。」 言うと顎から手を離し、ツナの中心をまた扱きはじめる。 見ていたくないのに目が離せなくて、手の動きとリボーンの手の平の温かさに弾けた。 チカチカする視界を後ろに向けると、いつもより更に楽しそうな顔で笑っていた。 オレが出した白濁を手の平に受け止めていたようだ。 いや〜な予感に腰を浮かせようとすると、待っていましたとばかりに背中から伸し掛かられた。 うつ伏せでベッドに押え付けられる。 まだ吐精したばかりの身体は言うことを聞かず、オレも抵抗はしなかった。 抵抗しないオレに気をよくして、腰の下に枕を2つ入れられた。 お尻を突き出す格好になって、はじめてヤバイと思ったが既に遅かった。 首をがぶりと噛まれた。痛さに身体が竦んだところに、後ろからまた中心に手を伸ばす。今度はゆっくり撫でるような刺激でもどかしい。 すると後ろに冷たい感触がして、ありえない場所を指が撫でる。 怖くなって振り返りたいのに、押え付けられていて振り向けない。 その内に指が湿り気を帯びて中へとゆっくり入っていく。 痛くはないが、かなりの違和感がある。 そちらに意識がいきそうになると前をぐっと握り込まれた。 気持ちよさに無防備になったところに指を増やされる。 粘つく液体のお陰か滑らかに動く指。怖いくらいだ。 押さえ込まれる息苦しさと、中を掻き回される感覚にゆるい息が零れた。 足に引っかかるスラックスの生地が、相手は着たまだと教えられる。 自分だけ追い立てられる感覚に、頭を振って抗議すると何と勘違いしたのか指を強引に捻じ込まれた。 痛さに息もつけなでいると、今度はゆっくりと探られる。探られる熱さに、むずむずするような感覚が混ざりはじめ、次第に息も荒くなってきた。 「はっ…リボー…」 「よくなってきたか?もう1本飲み込んだぞ…。」 耳を犯され恥ずかしさに顔を覆う。それでも後ろの刺激が強くて、挿れられた指をぎゅっと締め付け自分で呻く羽目になった。 肩口で笑うリボーンは心底楽しそうだ。 がぶりと噛みつかれた肩は多分歯型がついただろう。痛ささえ後ろの快楽の妨げにならない。逆にもっと締め上げて身体が震えた。 すると今度は前を裏から親指で撫で上げる。少し緩んだ隙に後ろの指を抜くと、ガチャガチャと背中で音がする。恐る恐る覗く。 「…ムリ。」 下着まで脱いだ裸体はどこに出しても恥ずかしくないほど引き締まっていて、けれどかなり破廉恥な感じだ。存在自体が。 何も言わず、ニヤリと笑う。 その笑みにすら頬を赤くするオレって終わってると思う。 気分はまな板の上の鯉だ。 どうにでもなれ。 少し横向きになった身体に上から伸し掛かり、丁度いいと言わんばかりに横から抱き竦める。手が脇からするりと前に滑り、胸を撫であげられて声が漏れる。 髪を掻き分けて項との微妙な場所に口付ける。ちくっとした。 そこから唇を落としていって、肩、鎖骨と徐々に前へと向かう。ひっくり返されてもされるがままで、荒い息を吐いた。 目が合う。それだけで気持ちよさが増して、這い回る手と唇に身体が熱くなった。 「逃げんじゃねぇぞ。」 「逃げない…よっ。…ちゃんと話してくる。」 見詰めて、見詰め返されて、何故だかほうっと息が出る。 「お前の、だろ?」 恥ずかしくて抱きつくと、後ろを乱暴に弄られる。 早急に追い立てる指より、赤くなっている真剣な顔にドキドキする。 指を抜かれてすぐにあてがわれた熱さに身体が竦むが、逃げる気はないと笑いかけて続きを促す。 徐々に挿入される痛みと、熱さと、中でリボーンを感じられることに恥ずかしさも飛んだ。 真剣にオレだけを見詰める顔。今は痛みで歪んでいるが、それさえも色気を増す表情になる。 入り切ったのか一息つくと、動かずに唇を寄せてきた。 重ねるそれに暖かさが胸にともる。 愛してる、と伝えるためにオレは何をしなければならないだろう。 逃げてばかりではだめなのだ。 思いは伝えなければ、相手に伝わらない。 どんな思いも。 「けじめを付けてくるよ。そうしたら…」 「オレの、なんだろ。ずっと傍にいろ。」 「ン…。」 手を握り締めたまま、激しく揺さぶられて言っている言葉も意味をなさなくなる。 それでも… お前の元に帰ってくるからと言った言葉は伝わったのかどうか。 律動に揺さぶられる身体は、互いが溶け合うほど気持ちよかった。 抱き合いながら眠る気持ちよさに、けれどもけじめをつけに行くと決心したツナは眠ることはなかった。 「いってくるね…。」 小さな一言を残し、ベッドを去っていった。 . |