10.「ツナ…。」 いつの間にか寝ていたらしく、暗い部屋で顔は見えないがリボーンがオレの上に覆いかぶさっていた。 「あ…おかえり。」 「ただいま。」 ちゅっ、と落ちてきたのは唇で、落とされた先も同じ。 …あのねぇ、新婚じゃあるまいしそういうおふざけはヤメロっつーの。 顔を思い切り掴んで引き剥がす。それでも少し遠くなった程度だ。 「親父さんの使いが来たそうじゃねぇか。」 「うん。…とうとう、かな?」 今までよく見付からなかったというべきか。 暗闇に慣れてきたとはいえ見えない不安に手元のライトを付ける。 パッと広がる明かり。 意外と奥まで広がった。 片肘を付いて起き上がろうとすると、額を押されて伸し掛かられた。 重い。 「てめぇはオレの嫁さんだろ。」 「いや、だからオレ男だよ?!」 「関係ねぇ。嫁に来いって言ったよな?それを分かって来たんだよな?」 「ちょっ!…重い!重いって!!…ぎゃっ(んぐんぐっ)」 悲鳴を上げそうになったら口と鼻を塞がれた。 大きい手の平で塞がれて、息が出来ない。 「んー!んー!!」 ばしばしと脇を叩いて主張する。苦しいよっ! 塞がれていた手を離した途端に今度は柔らかいもので塞がれた。 顔の近さに目を白黒させていると、口の中に入ってきて舌を舐め取られた。 …ひょっとしてこれって。 やっと理解できたオレはリボーンの額と肩を押し返そうと力を入れた。 けれどもそれはもう遅くて、深くなっていく口付けと身体を弄られる感覚に知らず息も上がってきて、押し返す力も抜けていく。 すでにその手は押し返すよりも縋りつくといった具合に肩を握り締め、額に置いた手は力なく枕に沈んだ。 シャツを裾から捲り上げられて、手が中に入ってきた。暖かさと気持ちよさにほっと息を付くと、外されていた唇に気付いた。 言葉を掛けようとして、服に潜り込んでいった顔を見ていると胸を舐め上げられた。 唾液で濡れたそこを今度は指で捏ねられ、もう片方に吸い付かれた。 ゾクゾクッと下肢から這い上がる感覚に狼狽えていると、そこから顔を上げ押さえ込まれたまま言われた。 「てめぇをソノ気にさせるなんざ朝飯前だ。それなのに手を出さなかったのは何でだと思う?」 「…返事をしなかったから?」 「そうだ。無理矢理じゃ逃げるだろ。」 「でも今のは…」 「もう逃げねぇ。」 「うっ…。」 嫌ならこの腕から逃げればいいと力を緩められる。 それでも逃げられない。 縫い付けられたように沈んだ身体が動くことを拒否していた。 「ちゃんと親父さんに挨拶に行ってやるぞ。」 見透かしたようにイイ顔でもう一度キスされた。 一日三回はされているのでもう慣れたというか麻痺したようだ。 嫌がらないオレを見てニヤリと鼻先で笑う。 「息子さんを僕にくださいってな。」 「アホか!んなこと言われたら逆に軟禁されるわ!」 父さんは一人息子を一人娘と勘違いしている感のある人だから。 そう言えば…。 「お嫁さんを用意したとか…。」 「させねぇ。」 「しないし。大体こんなオレのことがいいなんて言う変わり者はお前くらいだよ。」 目を見て笑うと、リボーンも嬉しそうにこちらに笑い掛ける。珍しく微笑むというに相応しい邪気のない笑顔だ。 こうして見ると年下なのも頷けるのにな。などとぼんやりしていてはいけなかったらしい。 またも乗っかる身体が重くなってきて、今度はボタンを外し始めた。 慌てて手を止めると不思議そうな顔をされたよ。 「何で止めるんだ?」 「イヤイヤ、普通いきなりしないだろ?」 「普通するだろ?愛を確かめあうために。」 「あああぁ愛って…。」 見なくても分かるくらい顔に熱が集まってきた。困った。そんなこと言われたら嫌って言えないじゃないか。 ゆっくり落ちてくる唇を避けられもしないで、されるがままになっていると… 「ツナヨシー!大丈夫?!」 「リボーン兄さん、抜け駆けはずるいですよ。」 「あと1分で開けねぇと蹴破るぜコラ!」 重なる寸前でぴたりと止まった唇。 「「…。」」 ちっ…と舌打ちするとリボーンはオレに布団を被せて廊下に出ていってしまった。 …イヤイヤイヤ!しまったじゃないよ。イイタイミングだったんだって! 「うわぁ…オレしたかったのか?」 認めたくなくて1時間ほど悶絶していた。 . |