9.目の前には父さんの部下のバジル君。 彼に見付かったってことは、父さんにも見付かったってことだ。 ふう…と思わずため息が漏れた。 それを聞いてバジル君が申し訳なさそうな顔になる。 「で、こっちは誰だ?」 「拙者、沢田殿の父上の部下になります、バジルと申します。」 「小さい頃からよく遊んでたから、幼馴染みみたいなもんだよ。」 居間にはバジル君の対面にオレ、その横にコロネロとマーモンが座っている。 スカルはお茶を用意してくれている。 「ツナは成人男子だぜコラ。どこに居ようと誰かに責められることなんかない筈だ。」 「…おっしゃられてはいないのですか?」 「…。」 コロネロの言うことはもっともで、でも実はそれだけじゃない。リボーンには根堀葉堀聞かれたのから話しているが、この3人には話していなかった。 バツが悪くて視線を上げられない。 「沢田殿。聞いて下さい。お父上はどうしてもと言われた訳ではないのです。でも、沢田殿にはこの役を務めるに相応しいと、それが惜しいと仰っているのです。」 「オレの意思は?オレは高校教師で満足してるんだ。話し合いもなにもない。」 「沢田殿!」 身を乗り出してオレに向かってくると、丁度いいタイミングでお茶が置かれた。 タン。 熱くなっていたバジル君は水を注された格好で、元の席へと腰掛ける。 「ごめんね。オレ、戻る気はないよ。父さんに伝えてくれる?」 「…それでも諦めないと思います。」 それでは失礼致します。とすぐに立ち去っていった。 残されたオレは、事情を知らない3人に説明もせず2階の部屋へと篭った。 また繰り返しだ。 人の気も知らないヤツはいいご身分じゃないかと囃し立てる。 それはそういう役になってみたいヤツには魅力的に映るだろう。 でも、オレには牢獄にしか映らない。 そんな度量もないことは百も承知だし、オレはこの教師という職業が好きなのだ。 大企業の社長を継がないか…とずっと言われ続けてきた。 親戚には次期後継者候補が何人もいて、それなのにオレに言うなんておかしいな。とは思っていたのだ。 それでもただの口約束だろうと高をくくっていた。それなのに。 2週間前、住んでいたアパートから逃げ出したのはもう少しで父さんのところに連れて行かれそうになったから。人を使って、用意周到に荷物も運び出し、契約もいつの間にか切られていて逃げられないようになっていた。 そこにリボーンがいなかったら、まんまと連れていかれたことだろう。 あいつが偶々オレの家に遊びにやってきて、車に押し込まれそうになっていたオレを助け出してくれたんだ。 それから一晩かけて洗いざらい吐かされ、そんなオレでもいいから家に来いと言われた。 何にもいらない。身体ひとつあればいい、と。 「嫁に来い。」 「…あのな。」 頓珍漢な台詞だったけど、オレのことを必要としてくれたようで嬉しかった。 そんな感じで居候することになったのだが… . |