小説 | ナノ


6.



便座の上に置き去りにされたズボンと下着。それから押し込められたオレ。
こんな場所で深い息なんて吐きたくないのに中の振動を堪えるために吸い込んだ空気は冷たくて、少しだけ意識が余所へと向いたことでこのままじゃいけないとどうにか手をベルトへ伸ばす。
早朝の凍えるような空気とリボーンさんとオレ以外いないこの空間は物音ひとつない。あるといえば自分の中のローターの低い音だけだ。
上手く動かない指でカチャカチャとベルトを外してみるも、じっとりと濡れた下着とズボンにまで手が動かない。少し身体を動かすたびに奥を擦られて声が漏れそうになる。こんな静かなところで少しでも声を上げたら響いてしまうだろう。そう思うと唇を噛むしかなかった。
中のこれを少しだけ…そう、着替える間だけでも抜こうと快楽で霞む意識の中でどうにか思いついた。でなければ着替えなんて絶対出来ない。
足を上げることすらもうムリだった。
意識を保つために背中を個室の扉に預ければ、その向こうから突然声がかかる。胸元に貼り付けられているコントローラーに手を伸ばしていただけに疚しさにビクンと身体が揺れた。

「ツナ?どうした…着替えてる音が聞こえねぇぞ」
「っ、いま!…今ズボンを脱ぐところ」

リボーンさんの声に驚いたせいでまたも中で位置を変えたローターが奥へと入り込む。小さいそれは容易く飲み込めてしまうから始末に負えない。止めることも抜くことも出来ずに背中を扉に押し付けたまま固く瞼を閉じて堪えようとするも、ガクガクと震える足からは力が抜けてズボンの前がまた突っ張っていく。
こんなになるまで我慢している自分がひどくいやらしい人間のようで恥ずかしいなんてもんじゃない。
いくらリボーンさんしかいないとはいえ、ローターに興奮している息遣いを漏らさないようにと必死で口を手で押さえて奥に当たる振動をやり過ごそうとした。
なのに薄い板一枚隔てた向こうからまた声が掛かる。

「もう脱いでるんじゃないのか?ツナのソコは可愛いピンク色になってるだろ」
「知らなっ、」

「それともオレが見てないからって扱いてるんじゃねぇか?あぁ、ツナは強く握られるとイイんだよな?先っぽに爪を立てながらそのままカリを人差し指で引っ掻いて…根元から扱き上げると、」
「ッッ!」

まるでその通りに弄られているかのように下着の中で起立がぶるんと震えた。いつもの手順に慣らされた身体が切ない悲鳴を上げている。
必死で押さえる手の平の隙間から忙しない息遣いが漏れて、我慢しきれず眦からポタポタと涙が零れた。
限界まで勃起している自分自身からは先走りなのか精液なのか分からないものが溢れ出て腿まで伝い落ちていく。もっと欲しいと貪欲にローターを飲み込もうとする窄まりの奥からの振動も相まって、自然と下着に起立を擦り付けるように腰が動いて止まらない。
あと少しでイくというところで、扉の向こうからノック音が聞こえてきた。

「勝手にイったらお仕置きだぞ」
「!」

リボーンさんの言葉に自分がしようとしていたことに気付いて顎が上がる。冷水を浴びたように醒める意識と、下着に押し付けていた起立から滲む熱さが急に冷えてじっとりとした気持ち悪さに変わった。
身体の底から熱を追い出そうと何度も息を吐き出しても中のローターを食むうねりは止められない。扉に凭れ掛かるだけで精一杯なのだから着替えなんて出来る訳もなかった。

「着替えられない、っ!」

扉を隔てた向こうにいるリボーンさんに縋るように板へ爪を立てる。切羽詰った自分の声音が悲鳴のようにトイレに響いてしまっても、恥ずかしいと思えないほどイくことしか考えられなくなっていた。
そんなオレの状態など分かっているだろうリボーンさんは、低い声で問いかけてきた。

「そうだな…それならそのままで行くか?それともオレが着替えさせてやろうか?」

選択肢なんて最初から決まっている。

もとよりこんな状態で宿になど行けるはずも無いのだ。
それでもワザと聞いてくるリボーンさんに、オレは必死に選択した方を震える声で答えた。

「リボーンさん、に…着替えさせてほし…」

もう立っていることさえ辛い状態でなんとか個室の鍵を開けて扉を押しやれば、楽しそうにオレを見下ろしているリボーンさんと目が合う。
すぐにリボーンさんは個室の中に入ってきてオレを奥へ押入れると、ズボンのジッパーに手を掛けてきた。

「やっ!まって…っ」

一気に引き下ろすつもりだっただろうリボーンさんの手を止めたのは、その些細な刺激だけでイってしまわないかと恐くなったからだ。
イくなと言われているリボーンさんの目の前で粗相をするわけには絶対いかない。
だが、リボーンさんは着替えさせてほしいと言ったにも拘らずの静止の声に不思議に思ったのだろう。
手を止めたままオレを下から覗き込んで様子を窺ってきた。

「どうした?」
「おねが…っ、乱暴に…しないで。出ちゃう…」

奥に入り込んでいるローターと格闘し続け、涙目になりながらもそう言えばリボーンさんはニヤリと笑って頷いた。

「なら、ツナの此処がどうなってんのかじっくり見せてもらうか」

刺激しないようにかゆっくりと便座に座らされたかと思うとしゃがみ込んだリボーンさんはオレの股間の目の前に顔を寄せてきた。
その状態で今度こそジッパーを殊更ゆっくり引き下げ始める。

「や…っ!やだっ、んっ…く」

言われた言葉の恥かしさにジッパーを引き下げる手を止めるため引き剥がそうとしたが、それは逆に股間への刺激を強くするだけだった。
イってしまうことが一番恐いオレはもうリボーンさんの手を止めることも出来ず、目下でこれからズボンも下着も全て脱がされるのを見ているだけしか出来なくなってしまった。
その間も淀みなく動く手が今度は下着に掛る。
濡れて肌に貼り付いた下着をあまり刺激しないようにと丁寧にしてくれるのはいいが、最小限であっても起立を布が擦れるのはかわらない。

「んっ…ぁ!」

漏れそうになる声に慌てて手を口元に持っていくがリボーンさんは構うことなく下着をずらして、中で窮屈そうにしていた膨らんだ起立を外に出した。
目の前に晒された起立はリボーンさんが言っていた通りピンク色に染まっていて、先端から体液をじわじわと溢れされている。
そんな状態を穴が開きそうなほど見られている事実が心底恥かしいのにそれを止める術がない。
どうしようもない羞恥に内股を擦り合わせて身じろぎをすれば、起立が一緒になってぷるんと震えた。

「…んなことしても余計可愛いだけだぞ?」
「…っ、」

笑いを堪えるように言われて更に恥かしくなる。
それならばどうしていればいいと言うのだろうか。
早く着替えを終わらせてしまいたいのは山々だが、動くことすらまともに出来ない上にゆっくりと脱がされて食い入るように膨らんだ起立を見られるのだから恥かしいなんてものじゃない。
隠しようもないそこを見られ続けて、触られてもいないのにどんどんそこが熱くなっていくのだ。
疼いて疼いて、いっそのこと手を出して思いっきり扱いて果ててしまいたい衝動に駆られる。

「ツナ、少し腰を上げろ。ズボンと下着が脱がせらんねぇだろ?」

オレがこんな状態になって必死に理性と戦っているのを知っていてか否か、リボーンさんは着々と着替えをさせる為にズボンを脱がしにかかる。
それに慌てて便座から腰を上げれば、中のローターがまた動いてそれをギュウッと締め付けてしまった。

「あっ…!」

立っていることが出来なくなって堪らず腰を落とせば、その衝撃でまたローターが位置をかえる。
もうそれだけでも爆ぜてしまいそうな衝撃に背を丸めて堪えていれば、不意にしゃがんでいたリボーンさんが立ち上がった。

「これじゃあ埒があかねぇな…」

そう言ったかと思うと、片足を掴まれてぐいっと胸より高く持ち上げられた。

「ひっあぁんっ…!!」

大きく脚を開かされた所為で一緒にローターが大きく動き、我慢していた声が大きくトイレ内に響いた。
しかしリボーンさんはそれに何を言うでもなく、もう片方の脚も掴み上げてズボンと下着を膝下までずらす。

「ふぁっ、やっ!んぁあ…!」

今まで刺激しないようにと小さな動きしかしてこなかった身体に急なそれは大きな快感をオレに齎した。
なんとかイかなかったことが奇跡の様に感じたが、それでももうこれ以上我慢出来る気がしない。
目の前まで上げさせられた足首に引っかかったままのズボンを視界に入れながら、乱れる息を整えようと必死に呼吸を繰り返して泣きそうになるのを堪える。
するとリボーンさんが片足からやっとズボンを抜き取り、心底楽しそうに舌なめずりをしてオレの下半身に視線を下ろした。

「本当にエロいな…」

言葉にされてはじめて両脚を掴み上げられている状態の恥かしさに気付く。
どうしようもなく起ち上がった起立の更に下では、ローターを食い締めている窄みから白いコードが伸びて胸元まで繋がっているのだ。

「ほら、ツナの此処は美味そうにコードを食ってんぞ?」

窄みがヒクヒクと動く様はさながらコードを食べているようだった。
それどころかもっと大きなものを咥えたいと蠢く自分の其処を見るのがイヤでぎゅっと眼瞼を閉じた。

パサリと足元に落ちたズボンと、いまだ片足に残ったままの下着を纏わりつかせて堪えるように息を吐き出したオレは、わずかな振動を伝える奥の動きから目を逸らすように横を向いてリボーンさんの腕に手を伸ばす。
新しい下着を手にしているリボーンさんに早くと言えない代わりに無言で促せば、膝を掴んでいた手がスルッと腿へとすべり落ちていった。
指が肌の上を辿るたびにビクビクと身体は跳ねて吐息が漏れる。
これ以上は我慢できない。着替えても同じことの繰り返しになることは知れていた。だけどイくことも許されていないのだからこの状態を保つしかないとリボーンさんの腕に爪を立ててしがみ付く。きっかけさえあればとどこかで期待する自分を止められない。
リボーンさんの指は柔らかい内腿を撫でながらも、決して肝心な部分を触ろうとはせずに快楽だけを引き摺り出していく。もどかしい指先に唇がわなないて個室の中に喘ぎ声が篭る。
すると、トイレの入り口の方から足音と一緒に男の声が2つ響いてきた。

「でさ、彼女が」
「へぇ」

その声に慌てて口を噤むも、中の振動は緩む訳もなく静まりかえったトイレに低い振動が伝わる。黙っていなければと思うほど喉の奥から声が漏れそうになって焦った。
バレることだけは避けなければならない。目の前のリボーンさんの服に食い付いてでも堪えようと顔を上げたところを唇を唇で塞がれた。

「んっ」

声を漏らさないようにと息ごと口で塞がれて、すぐに舌の自由まで奪われる。個室の外では普通の会話が聞こえてくるのに、自分はローターを咥えたまま下肢を露わにして口付けをしているのだと思えば背徳感と羞恥の狭間から快楽が湧き上がった。
あくまでオレの足を掴んでいるだけの手と、いつもより乱暴に舌を絡めては声まで奪うリボーンさんに起立はまた体液をしたたらせ下生えを汚した。トロリと伝う先走りがローターを食む窄まりまで落ちていく。舌と舌の絡む音と2人分の忙しない息遣いが個室に篭った。
ドクドクと耳元から聞こえる自分の心拍音とリボーンさんの舌が纏わりつく音に目の前が真っ白になる。

「あ、んんっ…!」

頭の隅でダメだと堪えようとしたのに、見透かしたように舌をぬるりと重ねられて堪え切れずに迸らせた。我慢に我慢を重ねていた起立は遮るものもなかったせいで勢いよく自分とリボーンさんの前を濡らしていく。それでもまだ足りないといつまでも先から白い精液が溢れ便座の上にまで零れ落ちた。
やってしまった後悔と絶頂の歓喜に満たされて痙攣するつま先を視界に入れながらぼんやりとしていれば、やっと口付けを解いたリボーンさんの唾液に濡れた唇が動く。

「こんなに漏らしやがって…お仕置きだと言わなかったか?」
「だっ、て」

まともに顔を合わせられないオレは、掴まれたままの自分の腿を掴む手に視線を落とした。するとそこにまで白濁は飛び散っていて、触れられてもいないのにそんなに気持ちよかったのかと知られたことに顔を赤くした。
キス一つで吐精した自分はひどく淫乱だと思われたに違いない。約束を守らなかったことよりも、それが一番怖かった。

「しかも聞かれたんじゃねぇか?」
「あッ!」

個室の外には人がいたことすら忘れていた自分が情けない。耳を澄ませて声を探すも、今は聞こえてはこなくて少しホッとした。唇を塞がれていたのだから聞かれていなかったと信じたいが、それも本当のところは分からない。
こんな場所で、言い付けを守れずにイったオレをリボーンさんはどう思っているのだろう。いまだローターの振動に奥を擦られているせいで、性懲りもなく身体は疼き出す。
白濁にまみれたままの下肢が冷たくて、足を引こうと身体を捻ればリボーンさんは顔をそこに落とした。

「ゃ、」

身動きの取れないオレの汚れた起立を舌で掬い取られて驚いた。まさか口で舐められるなんて思ってもみなくて声も殺せずに仰け反る。くちゅりくちゅりとわざと音を立てるリボーンさんから逃げ出したくても、足は掴まれたままのせいでそれも適わない。
止めてと言えない正直な口から甲高い声が漏れて、また起立が勃ち上がりはじめた。


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