小説 | ナノ


5.



スルスルとそのまま車は螺旋状の道を上り、高速道路へと吸い込まれていく。
その間、リボーンさんはまったくこちらを見ようとしなかった。
まるでここを掴んだことにすら気づいてませんとでも言うように。
でも掴まれたオレにすればもう、たまったものではない。
掴まれたことですっかり硬さを増したそこが、よりいっそう下着を押し上げてズボンの染みを広げていく。
下着の中は車が振動で揺れるたびにヌチュリと濡れた音たてていて、もう洗わなければ使えない状態になっている事をオレに伝えていた。

「ん、く…」

それでも何とかこれ以上下着やズボンを汚すまいと懸命に下肢に力を込めてみるけど、そのことで余計に奥に入っていたローターを締め付けてしまい、ますます前が堅くなるだけにすぎなかった。
(どうしよ…も…ホント限界…)
僅かに腰を浮かしてみた所で、振動が弱まるはずもない。
よけいに体力を使って、シートにグッタリと横たわった。
(イっちゃおうかな…)
誘惑が一瞬頭を過ぎる。
けれどすぐにダメだと自分に必死に言い聞かせた。
これ以上、リボーンさんに呆れられるわけにはいかない。
我慢の出来ない子供だなんて、思われたくない。
そんな意地にかられるように、落ち着こうと息を吐いた時だった。

「ツナ」

それまで全く無関心を装っていたリボーンさんが、ようやくオレに声をかけてきた。

「なん…ですか?」

熱い息を堪えながら返事をすると、

「さっき触った時に気づいたんだが…」
「んっ」

触った…と言う単語に、先ほどの手の感触を思い出して、そこがヒクリと震えた。
せっかく落ち着かせはじめてたのに…

「ずいぶんとズボンまでぐしゃぐしゃになってるな。ホントにイってないのか?」

チラリと視線をよこされて、それに急いで首を縦に振った。

「いって…ない…」
「ホントか?」

疑わしい目で見られてしまった。
確かにもう、自分でもわかっているくらい下着もズボンもぐしょぐしょになってはいるけど、張り詰めたそこはまだ解放を求めていて、決定的な絶頂には達していない。

「がまん…して、る…もん」
「そうか、偉いな」
「ん…」

誉められた喜びで、一瞬力が抜けそうになった。
すぐに力を入れ直して、息を詰めていると、

「けどな、ツナ。そのままじゃ宿には入れねぇぞ」
「ふあっ!!」

真っ直ぐな道路でシフトチェンジの必要もなく、手持ち無沙汰になっていたらしいリボーンさんの手が、濡れているズボンにまたそっと伸びてきた。
少し冷たい手が、熱くなっている太ももをたどり、内ももを撫で上げてくる。
全身がゾクリと歓喜で震えた。

「なぁ?こんなんじゃ、宿の従業員になんて思われるだろうな?ツナ」
「あっ、あ…ダメ、触っちゃダメ…」

徐々に中心へと近づいてくる手に止めてくれと首を振る。
直ぐにでもリボーンさんの手を掴んで止めたいけど、体が強張ってうまく動かない。
それに、少しでも余計な動きをすればそれだけでイッてしまいそうな気がして、怖くて動くことが出来なかった。
そんな俺の状況を察したらしいリボーンさんは、けれど逆にニヤリと口元を歪めて、止めるどころかますます大胆に撫でる手に力を込めると、ついに指先が中心に触れ、濡れた具合を確かめるように周囲を満遍なく探るようにて撫で回してきた。

「やあっ!あっ!」

ビクリと体が跳ねる。
イきそうになるのを、ガチガチと震えながらなんとかこらえた。
それでもそこは敏感にリボーンさんの指に反応して、もっと欲しいと主張しますます濡れていく。

「ああ、ほら。こんなにぐしゃぐしゃにして。これじゃあ着替えなきゃ宿には入れねぇぞ」
「き…がえ…」

この状態でか…?
無理だ。
思ったけど、確かにこんなに濡れた状態で宿についたら、何て思われるか…

「きがえ…なきゃ…」

ポロリと出た言葉に、リボーンさんがそうだろう?と頷いた。

「次のサービスエリアで着替えるぞ」

リボーンさんの言葉に、オレは黙って頷く。
この時オレは、その着替えが何を意味するのか全く考えてはいなかった。
ただ、濡れた衣服を取り替えなくちゃ宿には入れないと、それだけしか考えてなくて…

バックの中に着替えは一組しか入っていない…その事を思い出すのは、宿についてからのことになる…

十分少々走り続けた車は漸くサービスエリアへとたどり着いた。
駐車場の周囲を軽く見渡せば、時間が時間だからか車はまばらだった。
それに心底ホッとしながら車が駐車されるのを待つ。
いまだ中で振動するローターは一定に動くのみなので、エンジンを止めてもらえればまだマシだと思うと早くと気持ちが急く。
だが、家を出る前から今まで中のローターを含め、色んな刺激を与えられた所為で自分の股間は少し腿を上げてみただけで水音が漏れるほどだった。
こんなにも射精を我慢したことなどなかったが、我慢をすると精でなくともこんなに漏れるものなのかと恥かしくなったほどだ。

「着いたぞツナ」

車を停車させ、シートベルトを外したリボーンさんは降りるよう促してきた。
けれどそれが難関で、いざ車を降りるためにドアを開けようと上体を捻るとそれだけで中のローターの位置が微妙に変わる。

「っ、ぁ…」

それでも降りなければ着替えすら出来ない。そうなればこんなに濡れたズボンで宿に行くことになる。
それだけは絶対にダメだと、なんとかドアを開けて足を地面へ下ろし、出来るだけ感じないようにと気を引き締めてそろりそろりと車から出た。
すると、一組の男女が此方へと向かってくるのに気付いてドキリとする。
もしかしたらリボーンさんが駐車した隣のスペースに停まっている車の人達なのだろうか。
何にしても此方へ来るということは、この下肢の状態を万が一にもバレないようにしなくてはいけない。
不自然にならないようにジャケットで前を隠しながら、下から小さく響くローター音に気付かれませんようにと強く願う。

「ツナ、着替えは下着とズボンだけでいいだろ?…行くぞ」

リボーンさんは、向かってくる若い男女に気付いていないのか気にしていないのか、立ちすくんでいるオレの腕をグッと引っぱって建物の方へと歩き始めた。

「ひっ…ぁん!」

急に腕を引かれたからには転ばない為にも反射で足が動く。
当然中のローターは大きく動くし、濡れた下着に擦れた起立は大きな快感を拾った。
慌ててリボーンさんのコートをギュッと握って引っぱると、振り向いてオレの表情を見たリボーンさんは下肢の状況を察してくれたようだ。

「まって、お願い…」

爆ぜそうになるのをはぁはぁと熱い息を吐き出しながら我慢し、すがるような思いで見上げれば歩くのを止めてくれた。

「そんなに我慢出来ねぇのか?…そのエロい顔…鏡見てみた方がいいぞ?」

楽しそうに笑いながら言われて恥かしくなる。
エロい顔ってどんな顔なんだろうと熱い顔がもっと熱くなるのを感じながら思っていると、濡れた部分へと手を伸ばすリボーンさん。
今触れられたら不味いと思うが、それよりも前方からもうすぐ傍まで歩いて来ている男女に気付いて更に焦った。
だが、避けるために動くことすら辛かったオレにはリボーンさんの手を止めることも出来ず、しっかりと下肢の状態を確認された。

「ふぁっ…あ…ンンッ!」

なんとかジャケットの袖で漏れそうだった声を抑えようとしたが、濡れたズボンの上からリボーンさんの指が形を確かめるように滑り、思った以上の刺激にビクビクと起立が震えた。
それでもなんとか寸でのところでイくことなく我慢出来たことにホッとしたのも束の間、リボーンさんの背後から人がスッと通り過ぎていった。
その内の一人、若い女の人とバッチリと視線が合ったことに羞恥で泣きたくなった。

声を聞かれたかもしれない…。
エロい顔だと言われた顔を見られたこともある。
それでなくても顔を真っ赤にしているのだから、何かしら思われていてもおかしくはない。
自分のこんな状態がバレてしまったんじゃないだろうかという思いにヒヤリとする。
けれど、すぐに楽しそうな声で相手の男の人と何か話をし始めた女の人に、杞憂だったのかと大きく胸を撫で下ろした。
そのまま二人はこちらを見ることもなく、自分たちの車に乗ってサービスエリアを去っていく。
なんとなく後ろめたい気持ちで車が見えなくなるのを見送った所で、リボーンさんに再び腕を掴まれた。

「気づかれなくて、良かったな」

耳元でそう囁いてくるリボーンさんに、やっぱりあの二人組みがこちらに向かっていたことを知っていたんだと知る。

「ひ、酷いよ、リボーンさん…」

思わず浮かんだ涙を、リボーンさんが拭う。

「悪かった。けど、お前の顔があんまりエロいから、ついもっと見てみたくなったんだぞ」

人の気配でますます感じたんだろう?
言われて、そうじゃないってどうして言えないんだろと口を噤んだ。
だって確かに、二人組みがこちらに近づいてくるたび、バレるんじゃないかと気が気でないのと同時に、どうにもならない興奮を覚えていたのも、確かだった。

「本当にお前はエロいな。育てがいがある」
「育て…、え?」

どういう事だろうと首を傾げるが、リボーンさんはもちろん答えてくれない。ジッとリボーンさんの顔を見るけど、いつもと変わらない表情でリボーンさんはオレを見ていた。
なんだか悔しい。
そんな所に、年の差をちょっと感じてしまう。
どうしたらその変わらぬ顔を崩すことができるんだろう。
翻弄されているのは、いつもオレばかりだ。

「ツナ?」

あんまりずっと見つめたせいで、リボーンさんがどうした?と尋ねてきた。
それに何でもないと小さく首を振ると、

「そうか、なら行くぞ」
「ええっ?!」

突然体がフワリと浮いた。
リボーンさんがオレの体を持ち上げたのだ。

「やっ、んんっ、!!」

いわゆるお姫様抱っこ状態で持ち上げられて、オレは慌ててバランスを取るようにリボーンさんの首にしがみついたけど、そのせいで大きく動いた中のローターがまた位置を変えていい場所に当たった。
そうなるともう、感じるばかりで何かを考える事が出来なくなる。

「ああっ!」

動いたローターにヒクンと腕の中で体を揺らし、イかないようにと膝と内股に力を入れて耐え忍ぶオレを、リボーンさんがまたそれは楽しそうに笑って見つめながら運んでいく。

「やっ!ゆっくり…、…ねがい、ゆっくり歩いて!」
「ゆっくりでいいのか?早く着替えたいだろう?」

抱っこされたせいで近くなった視線がジッと濡れたそこを見た。

「見ないで…。やだ、恥ずかしいよ…」

「俺が見ないで他に誰が見るんだ。ああ、本当にぐしょぐしょだな。早く洗わねぇと、染みになっちまうかもしれねぇぞ」
「う、んっ…」

歩く振動が車の振動よりも腰に響く。それでも自分で歩くよりは随分とましだと思った。
自分の足ではもう、着替える場所まで辿り着ける気がしなかったからだ。
徐々に近づいてくるインターチェンジのトイレを目の端で確認しながら、あそこまでいけばもう少し落ち着けると詰めていた息を吐いた。
と、その時。リボーンさんの喉が鳴るように上下した。
どうしたんだろうとリボーンさんを見れば、何だかリボーンさんの喉元がしっとりと濡れている事に気づいた。
どうして濡れているんだろうと、短い息を吐いた所で原因に思い当たる。
どうやら、ガッチリとリボーンさんの首にしがみついているせいで、オレの息がリボーンさんの首筋に当たっていたらしい。
熱い息のせいで、まるで汗をかいたようにしっとりと濡れているそこを見て、つい、アレをしている時のリボーンさんと重なってしまう。
触れたら体もあの時と同じように熱いのだろうかと思ったら、つい確かめるように舌が伸びていた。
ベロリと舌でそこを舐めると、リボーンさんの足がその場でピタリと止まった。

「…おい、あんま煽んじゃねぇぞ。この場でやりたくなるだろうが…」
「えっ!?ちょっ、それは…」

困る。それはとても困る。
ごめんなさいと謝りながらフルフルと首を横に振ると、もう一度歩きだしたリボーンさんの歩調が、さっきよりもスピードを上げた。

「やっ!ちょっ!!ん、く…んっ」

当然、さっきより強い振動が体を襲う。
耐えようと無意識にリボーンさんの肩に噛みついてしまったことにも気づかず、歪んだ顔をしたリボーンさんがチラッとこっちを見たようだったけれど、正直それどころではない。
ガタガタと揺すられて下着に擦れた前がさらに濡れていくのを感じながら、ようやくトイレに辿り着いた時には、なんだかもう息も絶えだえだった。
これはもう、イかなかった方が奇跡だったかもしれない。
そのままリボーンさんは乱暴に個室のドアを開けると、便座を下ろしたその上にオレの体を降ろした。

「着いたぞ」
「んっ」

振動から解放されて、ようやく息をついた俺はコクコクと頷くだけで精一杯だ。
そんな俺にリボーンさんは、仕返しとばかりに耳元に熱い息を吹きかけてきた。

「着替え、手伝ってやろうか…」
「っ!!」

熱い吐息と鼓膜に伝わる音に、ゾクゾクと背がしなる。
つい、手伝って欲しいと声に出しそうになって、けれどその口をリボーンさんに塞がれた。
でもそれは深いキスではなくて、口先だけを合わせたキスで、足りなくてもっとと乗り出した身を、でもやっぱりリボーンさんによって止められてしまう。

「まぁ、俺が手伝ってやったら、つい手が出ちまいそうだからな。ドアの外で待っててやるぞ」

そう言うとリボーンさんは、オレを置いて個室から出て行ってしまった。
ポツンとひとりで中に残されたオレは、熱を持て余したままの体で、ひとりで着替えをすることになった。


.




[*前] | [次#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -