小説 | ナノ


2.



手にしたそれは細くて、だけど少し不思議な形をしていた。
ボールペンより太いが、折り畳み傘ほどでもない。
感触はといえば柔らかくて手触りはよかった。
にぎにぎと握りながら何だろうかと確かめていると、後ろで笑っていたリボーンさんがいつの間にか横に来てオレの顔を覗き込んでいる。

「それの使い方を知ってんのか?」
「使い方…?」

やはり使うものだったらしい。
もう一度それを顔に近付けて考えるも分かる筈もなかった。
手元のスイッチらしきものを押せば低い振動音が響いて、その音と動きに驚いたオレは慌ててそれを手放す。
床に落ちる前にリボーンさんがキャッチしてくれたが、スイッチを入れたままの状態でそれを握ると突然腰を抱かれて引き寄せられた。

「リボーン、さん?」

ニヤリと笑った口許の行方を気にしていたオレは、腰に置かれた手がパジャマのウエストを掴んだことを気にもとめなかった。ただ覆うように顔に近付いてくる唇が鼻先を撫でてから頬を軽くなぞり、自分のそこへと落ちてくることを期待して目を閉じた。
振動を伝える音を腰のあたりで聞きながら、受け止めるために薄く開いた唇の乾きを気にして舌でチロリと軽く舐め取り少し唇を突き出すように顔を上げる。
唇の上を温かい息が触れ、いつもの口付けを待ってリボーンさんのシャツの裾にしがみ付いた。
けれどそれは意外な形で裏切られる。

「ひっ…!」

突然パジャマのズボンを下げられて下着ごと毟り取られて情けない声が出た。ひんやりとした外気に晒された下肢が寒さのせいだけではなく震え、驚きで身体が強張り身動ぎすることも出来ない。
唇から遠ざかった吐息が項にかかり、それに意識が向いたところでリボーンさんの手がするりと後ろを撫でた。
柔やわと揉む手つきと項を啄む唇に羞恥を堪えながらも逃げずに身体を預ければ、いたずらな指が丸みの奥へと忍び込んできた。
キスさえまだだというのに、幾度もの行為で覚えた身体が先を期待してじわりと熱を持つ。
そんな自分が恥ずかしくてだけど逃げ出すことも出来ずに固く目を瞑ると、そこを行き来していた指がいきなり左右に広げるように奥を割った。

「や、」

痛いというより怖いという意識が強い。何をされるのも初めてだったオレはリボーンさんのする行為に一々身構えてしまう。
だけどそれが普通かそうじゃないのかなんて知らないから、流されるように身を任せてしまえば待っていたのは目も眩むような快楽の世界だった。
怖いけど気持ちイイことをしてくれる手に逆らえず、額をリボーンさんの肩に押し付けていれば振動音があらぬ場所で響いて驚きに言葉もない。
ヴーッ、ヴーッと広げられたそこで鳴る音と振動に後ろを振り返ると、先ほどのそれが今まさに吸い込まれていこうとしていた。

「何でそんなもの…ッ、ぁ、んン!」

濡らされてもいないそこにいきなり押し込められて噛み締めるように声を殺すと、そんなオレを気にした様子もなくリボーンさんの手の中のそれがもっと奥へと差し込まれた。

「ひゃ、あっ!」

リボーンさんのものとは全然違うのに、中で勝手に振動するそれの所為で思わず声が漏れてしまいそうになり唇をきつく噛み締めた。
ただでさえまだ入れられることにそんなに慣れたとは言えない場所に、振動するわけのわからない物を急に押し入れられて怖くなる。
なのにその機械の振動が中を刺激するものだから、反射で内壁が勝手にそれを締め付けてしまう。

「ふっ…ぅ…」

漏れそうな声を堪える為リボーンさんの服をギュッと掴んでやり過ごそうとすると、急にリボーンさんの指が振動する機械を入れた入り口をなぞるように撫でてきた。

「ん、ぁっ…!」

その指の動きに中の機械をまた締め付けてしまえば、耳元で楽しそうに笑う声が聞こえた。

「すごい締め付けだな…そんなにコレは美味しいか?」

言いながら指を中へ差し込まれ、振動する物と一緒に内壁を擦られて噛み締めていた口が徐々に締められなくなり、声が漏れ出してくる。
イヤだと意思表示のために首を横に振ると、リボーンさんが中に入れた物をズルリと引き抜き始めた。
それに助かったとホッとしたのも束の間、ギリギリまで引き抜かれたそれを緊張が緩んで力を抜いていたところにまた奥までぐんっと押し込まれた。

「ひあぁっ!」

まさかまた挿入されるとは微塵も思わなかった所為で大きな声が口を付いて出てしまう。
その声にまた楽しそうに笑ったリボーンさんはオレの項にキスをしながら何度もそれで抜き差しを繰り返し始めた。
それはもうオレからしたら堪ったものではなくて、振動するそれを入れられるだけでさえ怖くて身体が強張っていたのに、奥まで入れられてまた抜かれるその動きに身体と頭はついていくことが中々出来なかった。

「ぁ…う、…それ、やっ!」

初めてされるそれに堪らず涙が零れ落ちたところで、それに気付いたリボーンさんが雫ごとオレの目尻をペロリと舐め、そこへキスをしてきた。
けれど、すぐに唇を離されてしまったそれが無性に寂しくて、自分から強請るように唇を突き出せば今度こそ形のいい綺麗な唇が落ちてきた。
やっとキスをしてもらえたと思うと先ほどまで不安ばかりで怖くてどうしようもなかったのが嘘みたいに心が暖かくなる。
それだけで幸せな気分になって「もっと」と自分から唇を押し付けると、舌で唇を割り開かれた。
次いで侵入してくるリボーンさんの舌がオレの舌を絡め取って強く吸い付かれ、息遣いが徐々に激しくなっていく。
リボーンさんのキスに答えることに必死になっていたら、こんな短時間でも慣れたのか何なのか、キスしながらも続いていた下で抜き差しを繰り返される感覚が段々と嫌なものではなくなってきていた。
ただの振動するわけのわからない機械なのに、リボーンさんの手で抜き差しをされるそれが奥を突く度に小さく快感が広がり、腰が揺れそうになる。
リボーンさんじゃないのにこんな風になる自分はおかしい。
そう思うのに勝手に反応を示す自身の中心は、気が付けば起立の先から透明な液を零し始めていた。

唾液が混ざる音と奥を擦る振動音が部屋にこもる。
幾度も幾度も抜き差しを繰り返されて、しがみつく手に力が入らなくなってきた。
ガクガクと笑う膝に力を込めようとすると、重ねた舌がぬるりと蠢いて一瞬意識が飛んだ。崩れ落ちそうになった身体をリボーンさんは軽々抱えるとベッドまで運ばれる。
いまだ中でうねるそれを咥えさせられたままベッドの端に手をつくと、腰を掴まれて四つん這いの姿勢を取らされた。
恥ずかしい場所が全部見られてしまうことに気付いて、慌てて後ろを隠そうと手を伸ばすがそれを許してはくれなかった。
手を取られ振動を繰り返すそこに触れることなく視線だけが注がれている。
嫌なのに、顔も上げられないほど恥ずかしいのに、中心からは透明な体液がしたたって下生えを濡らしていった。
ありえない動きをするそれが、だけどリボーンさんのそれと比べるまでもなく物足りない。
イイ場所をわずかに掠めるだけの刺激がもどかしくて、気が付けばベッドの端に中心を擦り付けている自分がいた。
クツクツという低い笑い声にやっと自分がしていたことを思い知らされる。
顔をベッドに埋めて羞恥に堪えていると、リボーンさんの手が奥で蠢くそれを掴んであっさり引き抜いた。
突然の喪失感に崩れ落ちた腰は、ブルブルと震えている。荒い息を吐き出しながら後ろを振り向くとリボーンさんの手には小さな長細い円柱状をした水色のなにかが乗っていた。
先ほどのものと比べると随分小さい。コードのついたそれは一見すると可愛らしい形状をしている。
しかし嫌な予感しかしない。
中途半端に放っておかれた身体はまだ熱が燻っていて、それはリボーンさんじゃなきゃどうにもならない。
楽しげにそれを弄っているリボーンさんに手を伸ばすと黒い瞳が笑みを浮かべた。

「どうした、ここを触って欲しかったのか?」

言うと先走りで濡れていた自身にリボーンさんの手が絡む。
長い指が自分のソコに触れるだけでも羞恥が湧くのに、いつもリボーンさんはオレの形が分かるように擦り上げていく。
ペタンとしゃがんだ床の上で見せ付けるように手を動かされ、気持ちよさにどんどん膨らんでいった。
掴んでいたリボーンさんのシャツの袖から手が落ちそうになって、慌てて掴み直すとすいっと顔が近付いてきた。
快楽に震えながら唇を重ねればリボーンさんの手がもっと激しく中心を擦りはじめて卑猥な音が耳朶に響いた。
弾けたい。だけど吐き出せない。
ソコじゃない場所が熱さを欲しておかしくなってしまいそうだ。
訳の分からないもので抜き差しを繰り返された奥が、起立を扱かれる度にリボーンさん自身を思い出すようにヒクヒクと蠢く。
こんなの自分じゃないと否定する端から湧き上がるそれに突き動かされ、しがみ付いていたシャツの裾を強く引っ張ると口付けを外した。

「っ…しい」

大声で言える筈もない台詞をリボーンさんの耳元で囁く。
なのにリボーンさんは首を振ると手の中の起立に水色のそれを押し付けた。

「上手に言えるまで手伝ってやる」

コードの先にあるリモコンに指を滑らせると、水色のそれは突然激しく動き出した。

「ふあっ、ああっ!!」

まさかと思う間もなく、動き出したそれに咄嗟に腰が逃げようとする。けれどもあっさりと引き戻され、さらにしっかりとリボーンさんの腕が腰に回った。
そのまま手の平の物を振動させながら、リボーンさんの手がオレの中心を擦り始める。

「やだ!それ、やだ!!そっちじゃない…!」

ビクビクと腰が振動に驚いて震え上がる。
否定しながらも、その刺激のせいでオレの中心は漏らすようにドロリと白濁を零していた。
痺れるような、なんとも言えないその感覚に、オレはひたすら首を横に振って嫌だとリボーンさんにお願いするけど、リボーンさんはさらにグイグイとそれを押し付けられる。

「やだぁ…!」

終いにはリボーンさんの手ではなく、それの振動に促されるようにして果ててしまった。
ジワリと涙が浮かぶ。
欲しかった場所はそこじゃないし、なんだかこれでは、いつもと違ってただ遊ばれているように感じられてならない。
何で明日から楽しい旅行のはずなのに、こんなことをされなくちゃならないのか。
イくならきちんと、リボーンさんの手でイきたかったのに…

「…んで?」

そう思ったら、素直に疑問を投げかけていた。

「なんで?なんでこんなイジワルするんですか?」

どうして?
ダルい体を動かしてリボーンさんの方を向いた。すると、

「別にイジワルなんかじゃねぇぞ。ツナの事が好きだからだぞ」

そう言ってリボーンさんがニヤリと笑う。その笑顔が、何だか見てはいけない物を見てしまったように感じるのは気のせいか…

「お前と二人きりの温泉が楽しみで色々と用意したんだぞ。これを使って、お前がきちんと俺におねだりできるようにしてやろうと思ってな」

何だそれ…
いったいどう言う意味だ…。
尋ねようとして、けれどもそれより先にリボーンさんの手がまた動きを再開させた。
スルスルと持っていたそれを振動させたまま、今度はお尻の方に移動していく。
反射的に、先ほどまで弄られていたソコがヒクリと反応した。


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