リボツナ | ナノ



6.




約束をすっぽかした上にこの場所でこの場面とくればどう言い繕おうとも言い逃れはできない。
誓って言えるが疚しいところなど何一つないが、それでもこれはまずいということだけは分かった。

山本の背中に回していた手をそろりと降ろして身体を横にずらすも、山本の腕は離れない。むしろ先ほどより強い力で囲われて血の気が引いていく。
そうこうしている内に先生が山本の背中の真後ろに立って、ジロリとこちらを見下ろした。

「いい訳はあるか?」

何をどう言えば分かって貰えるのかさえ分からない。
開いた口からは声も出せずにただパクパクと空気が漏れるだけだ。
それを見た先生はオレから山本を引き剥がすと、有無も言わせず肩の上に担ぎ上げ車へと歩き出した。

「ちょっと待ってくれないっすか?」

山本を無視して歩き出した先生の背中に山本が声を掛ける。するとぴたりと足を止めた。
振り返りはしない。

「先生だか彼氏だか知らないけど、あんたよりオレの方がツナのこと大事にしてやれると思う。」

先生の背中を睨む山本はひどく真剣な顔をしている。
友だち思いの山本にジーンと胸が温かくなる。だけど先生は違うことを言い出した。

「騙してこんなところにまで連れてくるようなヤツが、よくそんなことを言えるな。」

フンと鼻で笑って先生が言えば、山本の顔色がサッと赤く染まる。
意味が分からないオレは、オレのせいで山本が先生に貶されたようで思わず仲裁に入った。

「違うよ!オレが教えてって頼んだんだ。騙すも騙さないもない。」

オレを担いでもビクともしない背中に向かって叫ぶと止まっていた足が動き出した。
逃がさないようにかオレの足を掴む手に力が入る。

そのまま先生の車の助手席から放り込まれ、サイドブレーキに頭を打ち付けて蹲っている隙に車は走り出した。
山本もオレの弁明も置き去りにしたままで。







はじめて入った先生のマンションは男の一人暮らしというにはきちんと整えすぎていた。
誰かの手が入っている気配のあるそこに居心地の悪さを感じて尻込みしていると、靴も脱がないままでまた担がれて奥へと運ばれた。

明かりも点けずに進む足取りに淀みはなく、背中越しにガチャリと音がしてどこかの部屋に入るとベッドとおぼしき柔らかいそこへと投げ捨てられる。
肘をついて起き上がる間もなく上から伸し掛かられた。

「こっちが必死に我慢してりゃあ浮気だと?」

「ちがっ!山本はそんなんじゃないよ!」

窓から漏れる月明かりだけが部屋を照らすも、まだ暗闇に慣れぬ視界は先生の顔すら分からない。
それでも誤解だけは避けたかった。
必死に頭を横に振っていれば、それを見ていた先生が顎を掴んで覗き込んでくる。

「あんなところでヤる以外に何が出来るんだ?」

「DVD見ようと…」

「ああ、見ながら実地込みでだろう。」

意地悪くそう返されて唇を噛む。
友だちとはそんなことはしないんだと睨みつけると、その顔を見た先生が薄ら笑いを浮かべた。
本気でお怒らせたと分かっても怖くて逃げ出せない。

顎を押さえられたままだったオレは、迫ってくる顔を避けることができずに唇に噛み付かれた。
ガジッと下唇を齧られ痺れるような痛みに眉を顰める。
舐め取られ唾液が沁みて唇が切れていることが分かっても、舌で幾度も舐められて逃れることもできない。

痛みとわずかに感じる気持ちよさとに金縛りにあったように動けずにいれば、先生の手はズボンからシャツを捲くりそこから脇腹を伝って平らな胸へと伸びていった。
大きな手が肌の肌理を確かめるようにゆっくり這い上がり、胸のまわりをそっと撫でられると甘い声があがる。

今まで何度かそういう行為もあったけど、今までと違ってオレの気持ちを無視してどんどん快楽だけが進んでいく。
下唇を散々嬲られて震える口許を塞ぐと、血の味のする舌が歯列を割って奥に縮こまっていたオレの舌を絡め取る。

体重を掛けられて重みに耐え切れずベッドに倒れれば、ギシッと軋むスプリングの音と口腔を貪る舌が立てる唾液の混じる音が静かな部屋に響いた。

怖いと思った。
これからどうなるのか知らないオレは身を硬くして先生のジャケットにしがみ付く。
それでも先生は気にすることなくオレのシャツからボタンを外していくと、ベルトまで片手で取り払った。

「そんなに知りたきゃ教えてやるぞ。」

下着の中へと手を突っ込まれ中心を握られたのと、胸の先をつままれたのはほぼ同時だった。
ひっ!と息を止めて漏らした声が徐々に濡れていく。
ぐりぐりと乳首を弄られて起ち上がったそこに舌を這わせ、握った起立のくびれを親指でなぞった。

他人の手も舌も初めてなのに快楽として感じる身体は逃げ出すことも忘れて貪欲にそれを拾っていく。
しこった先を舌で掬い取られて、胸元がはだけて肩を覆うだけとなったシャツと先走りが滲む下着しか身に着けていない身体がビクンと大きく跳ねた。

「は…っつ!」

溶かされてしまいそうな熱に犯されて、思うように動かない手足がシーツに皺を作る。
ぐったりとしながらも先生を見上げると胸にいた筈の先生がもっと下へと顔を下げて掴んでいた起立に舌を這わせた。

「嫌だ!いや、あぁ…!」

そんなところを舐められるとは思わず逃げ出そうとしても、気持ちよさには敵わない。
見せ付けるように舌が先をなぞって、あまりの快楽に悲鳴が上がる。
切れ切れのそれは以前見たアダルトビデオの女優より甲高かった。

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