1.買い物袋を提げて駆け足で家に辿り着いた。 時刻は夕方から夜へと移り変わるほんの少し前。 夕日は沈み、白かった月がまん丸黄色に輝いている。 綱吉は高校生だ。 あまりのバカさ加減に進学を諦めたこともあったけれど、中学3年の夏に母親が知り合いから紹介されたという家庭教師によりなんとか無事に潜り込むことができた。 口は悪いし、体罰もあったけど、互いに波長が合ったオレと家庭教師の先生はその後お付き合いすることになり、先日めでたく籍を入れた。 オレが学生だということ、男同士だということで簡素に行われた式では父親が号泣して、先方の親に呆れられていたっけ。 そして、2日前から先生の家へと嫁いできたのだが。 ドキドキと煩い心臓を深呼吸をすることで落ち着けて、ポケットから鍵を取り出した。 先ほど携帯電話で確認した時刻は19時ジャスト。 どうかまだ帰ってきていませんように!と祈りながらドアに手を掛けた瞬間、ドアノブがこちらに迫ってきた。 「ひっ…!」 「おかえり、ツナ。」 「せ、先生…」 扉の向こうから現れた人物に心の中で絶叫をあげる。 「先生じゃねぇだろ?リボーンだ。ダーリンでもいいぞ。」 「言わないよ!じゃなかった。た、ただいま…」 「遅かったじゃねぇか。」 とこちらを見る先生の目は笑っていなかった。 でも。 「まだ7時5分過ぎだって!そんなに遅くないよ!」 どだい門限が夜の7時だなんて高校生にはありえない。 中学生だってもう少し緩いと思う。 なのに先生は笑ってないのに口端だけニッと上げて言った。 「5分で何ができると思う?」 「…何したの?」 「学校に電話して、ツナの実家に電話して…それから警察に電話を掛けようと手にしたところだな。」 「ギャーー!!おま、それ過保護過ぎ!なんてことしてくれんの?!」 先生のジャケットを掴むと泡を飛ばして絶叫した。 学校って!実家って! ゆさゆさと先生の身体をゆさぶると、オレのポケットから着信音が鳴り響く。 それを先生が取り上げて携帯電話に出た。 「はい、義母さん?すみません、ええ、今帰ってきました。とんでもない、よく言い聞かせておきます。ええ。お騒がせしてすみません。また近々お伺いします。それでは失礼します。」 マジで電話してた。泣けてくる。 この調子だとその内学校からも電話がきそうだ。 オレの携帯電話を玄関のたたきに放ると、手にしていた買い物袋も取り上げられてぎゅうと抱き締められた。 絞め殺す気か。 あまりのバカ力にうまく息が吸えずにアプアプと悶えていれば、肩の上の先生の口からため息が漏れた。 「誘拐や監禁されたらどうするんだ?」 「されないよ。先生の欲目だって。」 「バカ言え。獄寺や山本、コロネロにスカルですら諦めてねぇんだぞ。」 「……先生じゃないから。」 親には言えないが、先生に迫られて男同士だし先生モテるしと二の足を踏んでいたら誘拐、監禁と本当にされた。 ほんの2日ばかりのそれは夏休みの思い出だ。 ふっと遠い目で1ヶ月前のことを思い出せば、先生は真剣な顔で迫ってきた。 「第二のオレが出たらどうする。」 「居ないし。先生ほど強引な人も…先生より好きになれる人も居ないよ。」 照れ隠しに視線を下に向けながら言うと、顎を上に向けられてそのまま口付けられた。 ここ1ヶ月でやっと慣れたキスに爪先立ちで応えていると、制服のシャツの裾をたくし上げてスルっと手が入り込んできた。 「んん!」 文句を言いたくても口を塞がれている。 そのままベルトまで外されて、大きめに作った制服のズボンがあっけなく落とされた。 ここでするのはさすがにヤバい。 床の上はあちこち擦り剥くし、妙なところが後で痣になる。 ドンドンと先生の背中を叩いていると、煩そうに口を離した。 「なんだ?」 「なんだ、じゃないよ。ここはダメ!」 「却下だ。」 あっさり返されてたたきの上に転がされた。 慌てて逃げ出そうとうつ伏せになって膝をつく。這い蹲って廊下に手を付いたところで下着ごとズボンともども脱がされてしまった。 「うわぁ!やめ、やっ!」 シャツで尻を隠すも隠し切れる訳もなく、手で押えて廊下まで逃げるも居間のドアを開ける前で掴まった。 「ゆゆゆ…夕飯!」 「あぁ、勿論食べるぞ。おいしいツナを…」 「ひぃぃい!」 満腹になるまで付き合わされたツナが翌日動けたかのか、誰も知らない。 . |