リボツナ | ナノ



4.




昨日は結局10分のペナルティを守れず、送っていくというリボーンの車の中でおもいっきりディープな口づけをされてヘナヘナと足に力が入らないまま家まで送ってもらった。
送り狼もいいところだ。
最近は抵抗するのも諦め気味で、されるがままとなっているのが恐ろしい。

あれだけ気持ちよければ癖になるよな。ってオレが癖になってどうする。
お手本としてオレがしなければならないというのに。

そんな感じで過ぎた翌日。
いつもは友達2人と弁当を食べるのだが、今日は用事があるといって教室を後にした。
獄寺くんがお供します!とか言い出したが、なんとかうまくかわして約束の学食にまで辿り着いたのだが。

キョロキョロと辺りを見回すと、学食の一番奥から京子ちゃんが立ってこちらに手を振ってくれていた。
京子ちゃんは学校のアイドルで、学年を問わずファンが多い。
その京子ちゃんが待っていた相手というのがオレで、グサグサと視線が突き刺さった。

だが負けない。
毎日リボーンに鍛えられているオレは、そんな視線くらいどうということはない。
ダーツも飛んでこないし、押し倒されもしない。
全然平気だ。

オレも手を上げて近寄ると、黒川も手を上げた。
やっぱり黒川とだよな…とがっかりしていると、それじゃ私帰るわと言って立ち上がった。

「へ?なんで黒川どっかいくんだよ。リボーンの話もしてやるよ。」

「バッ…!京子、本当にこんなのがいいの?私には理解できないわ。バカだし、鈍いし…そりゃ優しいけどさ。」

「花!」

ぽっと顔を赤らめた京子ちゃんに頑張るのよと声を掛けると、オレに向かって半眼で腕組みしながら言った。

「京子泣かせたらただじゃおかないから!」

「は?」

それだけ言ってくるりと踵を返すと、スタスタと遠退いていった。
その背中を見詰めていると、京子ちゃんが赤い顔のまま気にしないでと声を掛けてくれた。

「よく分かんないけど、怖い話じゃないから泣くほどじゃないと思うよ。」

「う、うん!そうなんだ。」

ちょっと複雑そうな顔をした京子ちゃんと2人で、弁当を食べながら昼休みを過ごした。










ご機嫌でいつもの事務所に辿り着くと、珍しくリボーンが外へ行く格好をしていた。
いつもよりきちんとしたスーツ姿で、ネクタイを締める手にボーっと見蕩れる。
白く長い指は筋張っていて、その指が少し派手目のネクタイを淀みなく結んでいく様はまるでお手本のようでもあるし、逆に色気が滲み出ていて外すときはどんな風なんだろうかと想像してしまう。

「お、なんだ?そろそろ喰ってやろうか。」

きちんと撫で付けられた髪に帽子を被り、目元をわざと隠すと口許だけ緩める。
リボーンのおふざけにはついていけないので、シッシッと手で追い払うとそれを見たリボーンが少し目を瞠ってそれからニンマリと笑みの形を作った。

「いつも思うが、オレ相手にいい度胸してんじゃねぇか。てめぇぐらいのモンだぞ、オレにそんな口利くのは。」

「オレは生憎男なんでね!女の人みたいになる訳ないだろ。」

アホらしいと荷物を置くと、いつもの席に着く。
今日はスカルさんもコロネロさんもラルさんも居ない。
コロネロさんとラルさんは滅多に帰ってこないし、スカルさんも一つの仕事につきはじめると2日に一度顔を見せるかどうかになる。
リボーンまで居ないなら今日は早めに帰ろうと算段をつけて、昨日の続きのファイルを手に立ち上がった。
すると出て行こうとしたリボーンが、行く先を変えてこちらに近付くとオレの胸倉を掴んで引き寄せた。

「…鈍いって言われねぇか?」

「あー言われた、今日。」

意味としては京子ちゃんに怖い話をしたらただじゃおかないっていうことだと思うんだけど。
そう頷くと間近でもの凄く呆れた顔でため息を吐かれた。
失礼な。

「何でオレがツナにだけ口答えを許してると思う?」

そういえばなんでだろう。
スカルさんへは即鉄拳制裁で、コロネロさん相手だと口でやり込め、ラルさんにはおちょくったりからかったりとまともに相手をしていない。
たくさんいる恋人たちはリボーンの言うことはまず逆らわないから参考にならないし、他の人たちには一定の距離を保っている。

「…我慢は身体によくないんだとよ。」

「そうらしいね。でもリボーンには関係ない話だろ?」

あんだけ四方八方に恋人だか愛人だかがいて、腹が立ったら八つ当たりする相手もいる。
最近はオレというおもちゃも手に入れた。
我慢のしようもない。
そう返すと鼻の先を噛まれた。

「っ、いたっ!」

「無自覚鈍感野郎が。」

「自覚あっても無差別にタラシてく淫乱魔人よりマシだね!」

5センチも離れていない距離で言い合うと、帽子の奥に隠れた切れ長の目が楽しげに細められる。
例えて言うなら豹がガゼルを仕留めたときに見せるような、今から喰ってやるぞといわんばかりの表情だ。
Sスイッチが入ったらしいリボーンに、内心絶叫していても怖くて声も出ない。

「なるほど。ツナにとっちゃオレはそう思われてるんだな?それなら遠慮はいらねぇな…」

「え、遠慮なんかしたことないだろ?!」

正直すぎるオレはついそう突っ込んで、目の前のリボーンの他のスイッチまで押したらしい。
掴まれた胸元から手が離れると、そのままドンと突き飛ばされて尻餅をついた。
そこを上から伸し掛かられる。

鳩尾に入っている膝は本気の強さでぎりぎりと痛むし、床に押し付けられた肩は動かない。
冷たい床の感触が背中を伝わり、身動きとれない状況なんだと理解した。

「ぼ、暴力反対!」

「うるせぇ。てめぇが最後まで反抗し続けることができたら暴力だって認めてやる。」

言ってそのまま落ちてくる顔を逃げられずに受け止めた。
いつものように余裕綽々といった口付けではなく、息も吸わせてもらえない舌使いに意識が段々ぼんやりしてきた。

突っぱねていた手も、肩を押さえる手に縋るだけとなって身体の力が抜けていく。
鳩尾を押えていた膝がすすっ…と下り、少し反応しはじめていた中心にぐりぐりと押し付けた。
いいように煽られて羞恥が全身に行き渡る。
頭を振って逃げ出そうとすると、皮膚の薄い首筋に歯を立てられた。

逃げたいのは恥ずかしいからで、気持ち悪いからじゃない。
その先を知らないから怖さもあまり感じていない。
でもこれはヤバいということだけは知っている。

ぐるぐる回るオレの思考をよそに、手際よく衣服を剥がしにかかる手と、逃げられないように快感を落としていく唇は躊躇がない。
シャツのボタンを全て外され、首筋から鎖骨を彷徨っていた唇が胸を辿りだす。
びくんと跳ねる身体を楽しむようにわざとそこばかりを弄る舌に小さく悲鳴を上げると、胸の先をぱくりと咥えられた。

「ぃ、やだ!」

嫌々と首を振っても舌で転がされる度に硬くなるそこに歯を立てられると身体中が熱くなっていく。
覚えのある感覚が下肢に広がって、それを膝で嬲られると益々膨らんでいった。

リボーンの手がオレのベルトに手をかけたところで、どこかから携帯電話の着信音が響いてきた。
チッと舌打ちするとオレの身体の上から起き上がるリボーンの顔を見詰めた。

「申し訳ありません。出掛けに事故に遭いまして…ええ、大丈夫です。あと30分ほどでそちらに向かえると思います。」

仕事の相手らしい電話を耳に入れながら、もぞもぞとオレも起き上がる。
はだけたシャツから覗く肌には噛まれた跡以外にも赤い鬱血が散らばっていて今までしていたことがまざまざと突きつけられた。

急いでシャツを手繰り寄せると、電話を終えたリボーンがこちらを振り返ってふっと笑う。
その余裕の笑みにムカついた。

「続きは今度な。」

「続きなんかないよ!」

少し乱れた程度のスーツを整え、帽子を被り直すといつものリボーンへと戻ってしまった。
それでいい筈なのに苛々は募るばかりだ。
慌ててシャツのボタンを嵌めていると、身支度を整えたリボーンが髪にキスを落としていく。

「イイ子にしてるんだぞ。それから、言い忘れたが明日はオレも仕事だから事務所には誰も来ない。バイトは休みにしろ。」

それだけ言い残して出て行った。
取り残されたように感じるのはどうしてなんだろう。
明日は休みだと言われたのに、嬉しいと思う気持ちが湧かないことに気が付いた。



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