リボツナ | ナノ



9.




見たこともない綺麗な紫の髪に青というより紫のような色の瞳がとても印象的な少年でした。
綱吉と同じくらいの体格の紫色の少年は、突然人間に戻ったことに驚いて言葉もありません。
呆然と自分の手を広げたり握ったりして確かめています。

「それが君の本当の姿なの?」

「…多分。鏡があればいいんだが。」

綱吉がそう声を掛けると自分の顔や身体を触って確かめながらもそう返事をします。慌てて部屋の中を見渡すと、丁度お母さんの手鏡がコタツの上に置かれていました。

「これでいい?」

「どうも。」

この少年は先の2人と違い、少し礼儀は弁えているようです。
礼を言って綱吉から鏡を受け取る少年ににっこり笑い掛けると何故か目元が赤く染まりすぐに視線が逸らされてしまいました。
どうかしたのでしょうか。

「やたらと誑しこむんじゃねぇぞ。」

「タラス…?零してないよ、オレ。」

後ろから綱吉を抱え込んだリボーンが不機嫌な声で言いました。意味が分かりません。
リボーンと綱吉が噛み合わない会話をしていると、その間に少年は鏡で確かめ雄叫びを上げました。

「何でだ!?元に戻っている?どういうことなんだ!」

「あー…あのね、」

これぞまさしく正しいリアクションだと感心しつつ事情を説明してあげようと口を開きかけると、リボーンが綱吉の口を塞ぎ、言い放ちました。

「残念だったな、てめーは一生呪いが解けねぇぞ。」

「なっ!」

「ツナの唇は最愛の人にしか反応しないの病にかかったんだぞ。これからはオレ一筋だ!」

「嘘を吐け!だったらなんでパシリまで元に戻ったんだ。」

「オレとツナの愛の奇跡ってヤツだろ。」

綱吉を抱えたままのリボーンと、その言葉に慌てたコロネロがまたも喧嘩を始めてしまいました。
それを見ていた少年は綱吉とリボーンをマジマジと見詰めて複雑そうな顔をしています。
リボーンとコロネロは勝手にやらせとこうと無視して少年に声を掛けました。

「大体察しがついたと思うんだけど、リボーンもコロネロも君も、何をしたら元に戻ったか覚えてる?」

「何をって…アンタと……ええぇぇえ!!男とキスすると戻るのか?!」

戻る法則に気が付いた少年は、顎が外れんばかりに驚くと顔を引き攣らせながら叫びました。

「あ、そうか。そうとも考えられるね。ねえ、リボーン、コロネロ。もう少しで時間だけど試しに2人でしてみない?」

「「ぜっったいしねぇ!!!」」

喧嘩をしながらもしっかり聞いていたらしいリボーンとコロネロは綺麗にハモるときっぱり拒絶しました。この2人じゃムリもないかと諦めかけましたが、それでも気にはなります。
それならばと目の前の少年を指差して言いました。

「それじゃ、この子としてみるのは?」

「「「お断りだ!!!!」」」

今度は3人で言い切ります。
残念だなあとため息を吐いていると、後ろから手が伸び綱吉の顎を掴んで逃げられないようにしてからリボーンの顔が迫ってきました。
慌てて目を閉じると同時にむにゅっと唇に生暖かい感触がします。

色々と諦めているとはいえやっぱり恥ずかしい綱吉は顔を赤くしてされるがままです。
それを幸いとリボーンは好き放題に綱吉の柔らかい唇を幾度も啄ばみます。
あまりの熱心さに呆れより苛立ちが勝ったコロネロが止めに入る頃には、うまく息継ぎができない綱吉がぐったりしている有様です。

「大丈夫か?」

「ん…へーき。」

肩を掴んで覗き込むと、トロンとした表情の綱吉にコロネロは顔を赤く染めました。
その顔を見た紫の少年もドキドキが止まりません。

ひょっとしてリボーンの言った通り愛がなければ戻らないのだろうかと少年は考えます。
だとするとそれは綱吉ではなく自分たちの想いとそれを受け止めてくれる人間がいてはじめてなし得る奇跡なのかもしれません。
そして少年はかなり厳しい茨道に足を突っ込んだことに気が付きました。

目の前でコロネロが顔を赤くしながら綱吉へ口付けているのを見た少年は、コロネロがリボーンに腹を立てたのと同じくらいムカついてしょうがありません。
チュと軽く触れ合う程度のそれにも文句を言うリボーンが、コロネロから綱吉を奪い返しているところを横から攫うと少年ももう一度口付けました。

驚いた綱吉を尻目に、リボーンとコロネロは仁王像よろしく少年を威嚇すると怒気を膨らめていきます。
止めに入ろうとした綱吉より早く逃げ出した少年と、それを追う2人の早いこと。
まったく付いていけなかった綱吉はため息を吐くと湯たんぽを用意してくれているだろうお母さんにおやつを4人分お願いしようと立ち上がりました。

「そういえばあの子の名前聞いてないや。」

沢田家の新しいペットはリボーンとコロネロのせいで、しばらく「パシリ」だと勘違いされていたそうです。
綱吉が彼の本当の名前を知ったのはそれから2日後のことでした。


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